人が関わる活動には、常にヒューマンエラーのリスクが付きまといます。しかし、アイデアや工夫を活用することで、ヒューマンエラーを人間の意識の問題ではなく、行動面から捉え直し、リスクを回避するようなアイデアを盛り込んで対策することは可能です。今回は、事例から学ぶヒューマンエラーのリスク回避方法について解説します。
1. 誤認防止
ある工場では、機械の操作ミスによるヒューマンエラーが頻発していました。その多くはボタンの押し間違い、という単純なミスだったのですが、機械の停止とスピードアップのボタンを間違えて押してしまうというヒューマンエラーだったため、放置していては重大な事故が発生する恐れがあるとして、根本的な対策が取られました。
その結果として採用されたのが、2つのボタンの大きさと色を変更して一目でわかるように改良し、さらに停止以外のボタン操作をするときは、もう1つのロック解除ボタンを合わせて押さないと機械を操作できないようにする改良が加えられたのです。
ボタンを間違えて押さないようにする工夫だけでなく、間違えて押しても停止以外の操作を機会が受け付けないように改良することで、ヒューマンエラーを物理的改善で防止することに成功しました。
単にヒューマンエラーが起こらないようにするだけではなく、ヒューマンエラーが発生した時に機械が操作を受け付けないようにすれば、リスクを回避できるようになり、単純ミスが重大な事故に繋がることを防止できます。
この事例で重要なのは、ヒューマンエラーは必ず起こり得るという想定のもとに防止策がとられた点にあります。人間のミスを前提にして、システムに対策を盛り込んでおくことが、ヒューマンエラーの予防につながるのです。
2. バックアップを取る
パソコンでの作業は、ビジネスのあらゆる場面で行われていますが、パソコンはヒューマンエラーが発生するリスクの高い作業でもあります。ついうっかりファイルを削除してしまったせいで、業務に重大な支障をきたす恐れもあるのです。重要なデータほどヒューマンエラーによる損害は大きくなるため、リスク回避のために何らかの対策を取って置かなければなりません。
ある企業では、ファイルを保存する時は常に2か所に保存することを義務付けています。重要なファイルだけでなく、すべてのファイルを2か所に保存させることでバックアップファイルの作成を習慣化し、常にデータのバックアップがある状態を作り出しているのです。これはうっかり重要なファイルを削除してしまう、というヒューマンエラーを防止すると同時に、バックアップ作業を怠ってしまうというヒューマンエラーの予防にもなっています。
単にバックアップファイルの作成を呼びかけただけでは、バックアップファイルの重要性やバックアップを取る意識を根付かせることは難しいですが、すべてのファイルをバックアップの対象にしてしまえば、社員が自分でファイルの重要性を判断する必要が無くなり、バックアップが習慣化するでしょう。
この事例では、重要なファイルもそうでないファイルもすべてを対象にすることで、重要なファイルのバックアップ漏れ、というヒューマンエラーを防止する効果を挙げています。
ヒューマンエラーはどのような場合でも、必ず考えておかなければならないリスクです。人間に期待するのではなく、物理的手段を用いてヒューマンエラーを防止すれば、ヒューマンエラーのリスク回避が実現します。
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