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「出向」とはポジティブな意味?派遣・左遷との違いや、給与、メリットについて徹底解説

U-NOTE編集部

2018/11/05(最終更新日:2020/05/12)


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「現在は子会社に出向中」「次の人事異動で出向が決まった」など、ビジネスシーンでよく使われる「出向」という言葉。なんとなくネガティブなイメージを抱いている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、出向の意味や使い方を徹底解説。似ているようで意味が異なる「左遷」「派遣」との違いや、出向のメリットをご紹介します。

本記事の内容をざっくり説明
  • 「出向」の意味、「左遷」「派遣」との違い
  • 出向により企業側、労働者側のメリット
  • 出向時の処遇や給与の基準
  • 出向における法律上、社会上のルール

 

ビジネスにおいて「出向」はいい意味なの?

ビジネスシーンで登場する「出向」という言葉。「詳しい意味は分からないけど、よくない印象がある……」と、ネガティブなイメージを抱いている人も少なくないはずです。

まずは、ビジネスシーンにおける「出向」の意味、あわせて、左遷や派遣との違いもチェックしていきましょう。

一見同じような意味に感じる左遷・派遣・出向ですが、実は大きく意味が異なる言葉なのです。

 

そもそも「出向」の意味とは

出向は「会社からの業務命令によって、子会社やグループ企業などの別会社の業務に従事すること」を意味する言葉です。本人の所属はもともと働いていた企業のまま、業務内容や働く場所のみが変化します。

出向は、終了する期限があらかじめ設定されて実行されることが一般的です。期限付き移籍をイメージするとわかりやすいでしょう。

 

ネガティブなイメージではなく、ポジティブなことも多い

子会社やグループ会社への異動と考えると、どうしてもネガティブなイメージを抱いてしまうもの……。「降格や左遷のような悪い人事異動なの?」と不安になってしまうことも多いのではないでしょうか。

たしかに、一昔前までは「出向=出世コースから外れる」と認識されることもありました。しかし、社員の可能性や将来性を高めるためにも、最近では20~30代の若手社員にあえて出向させる企業も増加しています。ひとつの業務に限定させず、さまざまな経験をさせて社員のポテンシャルを引き出す効果が期待できるのです。

出向は、終了する期限が決まった期限付き移籍と同じもの。出向期間中は基本的に出向先企業の業務を担当していますが、もともと所属していた企業から在籍が外れるわけではありません。

もちろん企業の伝統や慣習にもよりますが、出向がポジティブなイメージで捉えられている企業も多いのです。

出向の意味
  • 出向は、所属企業はそのままで、グループ会社や子会社に異動すること
  • 出向は、期限が決まっていることが多い
  • 最近ではポジティブな意味で用いられることも多い

 

「出向」と「派遣」との違い

「出向」と「派遣」は、契約関係が異なります。

出向は、もともとの雇用主と労働者に変わらず雇用関係があり、出向元と出向先の間では出向契約が行われています。労働者側から考えると、出向元と出向先の両方に対して労働契約関係がある状態になるのです。

一方で、労働者の派遣では使用者としての責務や権利は派遣元にあるものの、労働者に対する権限は派遣先に与えられています。労働者派遣の雇用関係は派遣元と労働者の間のみに存在し、派遣先と労働者間には使用関係のみ存在しているのです。

また、出向と派遣とでは時間外労働に対する扱いも異なります。出向の場合は、時間外労働に関する協定は出向先のものが適用され、出向した労働者は出向先の労働者と同様に残業しなければなりません。一方、労働者派遣の場合は、派遣元企業が残業を認めていなければ、派遣先で残業をさせることはできないのです。

<在籍出向と労働者派遣を判断する為の基準>

  • 出向先が指揮命令権をもっていること
  • 出向先が賃金の一部でも支払っていること
  • 出向先の就業規則や36(さぶろく)協定が適用されること
  • 出向先と出向労働者の間で労働条件の変更が可能なこと
  • 出向先で保険(社会、労働)に加入していること

 

「出向」と「左遷」との違い

「左遷(させん)」は、現在の役職よりも低い職位になることを指します。出向とは異なりネガティブな意味で使われる言葉で、左降ともいいます。

左遷の由来は、前漢武帝の時代の中国の「右を尊び、左を卑しむ」習慣からです。「左への移動=閑職に左遷され、低い地位や官職におとすこと」と捉えられていたことから、現在でも同じ意味で使われています。

 

「出向」と「長期出張」「転勤」との違い

次は、「出向」と「長期出張」「転勤」の違いを確認していきましょう。

長期出張は所属している企業の一員として別の場所で業務に携わることで、当然転籍は行われません。別の会社に転籍する出向とは異なり、長期出張ではもともとの企業に所属したまま社外業務を行うのです。通常の出張と同様に、目的が達成されれば本来のの勤務地に帰って仕事を続けていきます。

長期出張の期間に明確な決まりはありませんが、長期出張扱いにすると日当は変化することもしばしば。給与形態が異なるため、各会社によって「出向」と「長期出張」の取り扱いも異なるのです。

「出向」と「転勤」の違いは、長期出張と同じく所属先にあります。転勤は「同じ企業内の異なる勤務場所に、勤務地が変更になること」。転職や派遣のように、子会社やグループ企業などに転籍することはありません。

ただし、長期出張と異なり、転勤の場合は持続性のある社外業務と位置付けられています。転勤後は、ある程度の期間もしくは退職まで新しい勤務場所で働くことになるのです。

「出向」「長期出張」「転勤」の違い
  • 出向は所属先の転籍あり
  • 長期出張と転勤は所属は変わらず、勤務する場所が異なる
  • 長期出張は期間が決まっており、転勤は持続性のあるもの

 

出向に関する言葉

出向が命じられたとき、関係するワードとして「出向先」「出向主」「出向社員」の3つが挙げられます。

所属は変わらないまま、勤務地や業務内容が変わる「出向」はややこしい制度です。関連するワードをしっかり理解して、出向の仕組みをマスターしましょう。

<想定シーン>
ある男性が株式会社A会社に就職した後、グループ会社Bに出向を命じられたと仮定します。辞令を受けた男性がグループ会社Bで働くことになった場合には、どちらの会社が出向元になるのでしょうか。

 

「出向先」「出向元」

上の仮定の場合、「株式会社A会社=出向元」「グループ会社B=出向先」となります。

男性に給与や賞与を支払っているのは株式会社A会社のままで、健康保険証発行をしているのもA会社のままになっています。

 

「出向社員」

出向社員は、株式会社A会社に所属し、現在はグループ会社Bで勤務している男性です。

雇用主との関係性は変わりませんが、A会社の社員から出向社員に変わります。

 

企業が出向をする3つの目的

社員を別会社に出向させる場合、社宅の確保や住宅扶助・研修費用・引き継ぎ業務など、大なり小なり時間とコストがかかってしまいます。では、なぜ企業は出向を行うのでしょうか。

次は、企業が出向制度を実施する3つの目的を解説します。

 

1.人事戦略・人材育成

第一に、「出向」には人事戦略や人材育成の効果が期待できます。

採用シーンでの売り手市場が続くなか、近年は大手企業であっても人材の確保が難しくなっている現状です。社内や課題を解決すべく、すでに採用している社員のポテンシャルを高め、優秀な人材を育成していくことで企業全体の成長を図る企業も増加しています。

幅広い業務を経験させられる「出向」は、人材育成の観点で非常に効果的。さまざまな業務や分野に精通させることで、今後の企業を担う人材を育成しているのです。

また、個人の業績や能力向上だけでなく、人事戦略としても「出向」は効果が期待できます。優秀な人材や専門知識、技術を持った社員を必要な会社や部署に異動させることで、グループ全体の経営戦略を考えていけるのです。

「企業の成長のための出向」「目的達成のための出向」の増加が、ポジティブな出向を浸透させたきっかけなのです。

 

2.企業間交流

社員同士のコミュニケーションや人脈作りは、企業が成長するうえで不可欠です。より高いパフォーマンスを発揮するためにも、グループ会社内での連携を密にしていく必要があります。

「出向」によって社員を異動させると、部署や会社の垣根を超えて、幅広い交流が可能になります。グループ企業や取引の多い企業同士の交流が図れるため、職場環境の活性化にも繋がるのです。

 

3.雇用調節

「子会社にエンジニアが足りない」「グループ会社と本社で年齢や職種に偏りがある」など、雇用状態に問題がある場合の解決策として「出向」が行われることもしばしば。自社での雇用が難しい場合や管理ポストが不足している場合に、雇用調整の目的で出向を行うのです。

四字熟語の「適材適所」で説かれているように、企業は能力や特性を見極めながら、ふさわしいポジションや仕事につけるように調整する必要があります。

すべての社員が自身の個性や能力を最大限発揮できるよう、ときには「出向」で雇用調整を行うのです。

企業が出向を行う目的
  • 採用が難しいなか、社内で優秀な人材の育成を進められる
  • グループ会社や取引のある企業間でコミュニケーションを図れる
  • 雇用調整で社員を適した部署に配置できる

 

出向するメリット

ご紹介したように、「出向」には企業側にさまざまなメリットがあります。では、社員側が出向すると、どのようなメリットが享受できるのでしょうか。

次は、社員が出向する3つのメリットや魅力を解説します。

 

キャリア・実績が作れてスキルアップできる

幅広い業務や業種を経験することは、キャリアアップや実績作りにも効果があります。

なかでも、自身の将来性や可能性を広げるべき20代から30代の若手社員の場合は、できるだけ多くの知識や技術を吸収するのが理想的。出向先で働くことで、適応力・技術・コミュニケーション能力を磨いていきましょう。

また、働き方が多様化するなか、企業を退職して新しいステージに進む人も少なくありません。出向先での経験や実績は、転職やフリーランスへの転身を考えたときにも、必ず自分の糧になってくれるはずです。

ビジネスパーソンとして数倍、数十倍と成長していくためにも、「出向」を機にスキル向上に努めていきましょう。

 

人脈が作れる・子会社や取引先との信頼関係が形成できる

ビジネスシーンでは、人脈作りや信頼関係の構築が大きな意味を持ちます。ときには、たった1人との付き合いが自身の成長に影響することもしばしば。築き上げた人脈が、仕事の幅や将来性を飛躍的に広げることも多いのです。

「出向」によって異なる場所で働き始めることで、子会社や取引先とも新たなコミュニティを作れます。信頼関係を構築して、ビジネスパーソンとしての基盤を築いていきましょう。

また、出向する際にはこれまでに築いた関係を今後も継続するための工夫が必要です。既存のクライアントへの挨拶やお礼も忘れず行いましょう。

 

<出向が決まったときに、社外のクライアントに送る挨拶メール(例)>

件名:人事異動のご挨拶(株式会社〇〇の〇〇)

本文:〇〇株式会社〇〇部 〇〇様

いつもお世話になっております。
本日発表の人事異動により、◯月◯日をもってグループ会社△△への出向が決定いたしました。
後任は、同じ部署の〇〇という者が務めさせていただきます。

これまで◯◯様には何かとお力添えをいただき、心より感謝しております。
今後も、グループ会社の業務でなにかとお世話になることが多いかと思います。

引き続き、よろしくお願い申し上げます。

 

出向に選ばれる人の特徴は「今後の活躍が期待されている人」

以前のようなネガティブなイメージが払拭され、最近では「出向=今後の成長のための過程」と捉えている企業も増加しています。

出向をポジティブな意味で考えている企業にとって、出向社員は今後の活躍を期待している社員のひとり。若いうちから小さな組織のマネジメントを任せたり、グループ会社や子会社に送り込み組織を統括的に見させたりと、重要な戦力として呼び戻すための準備期間として出向を行っています。

例えば、出向が多い銀行業界では、若手や中堅社員の業務幅を広げさせるために、関連会社の証券会社やカード会社に出向させることもしばしば。出向から戻ったときには、重要なポジションを用意していることも多いのです。

 

出向は拒否できるの?

「単身赴任は嫌だから、他県のグループ会社への出向は避けたい」「給与水準落ちるから出向はしたくない」など、急な出向辞令に戸惑いを感じてしまうこともしばしば。

では、社員は会社からの出向命令を拒否できるのでしょうか。

 

社内規定がある場合は原則同意は必要ない

出向に関しては、これまでの事例や判例から「使用者である会社が、労働者に対して出向を命じる権利について、労働契約や就業規則の内容として含まれていない限り、使用者が出向命令や転籍命令を労働者に対して命ずる場合に労働者の同意が必要である」と考えられています。

つまり、就業規則や労働契約に出向に関する記載がなければ労働者からの同意が必要で、あらかじめ規定されている場合には同意なしで命令できるのです。

もしも出向辞令を拒否したい場合には、使用者が労働契約書や就業規則に「会社は、業務の都合上必要と認められる場合に、出向を命ずることができる」と明確に記載しているかを確認しましょう。

 

出向した後の指揮命令権は「出向先」にある

出向では所属する在籍は変化しませんが、基本的な指導命令権は出向元から出向先に移ります

労働者の地位・賃金や給与・退職金・各種出向手当・昇格週休等の査定を含む、あらゆる処遇が出向先の基準となるのです。

 

「出向」した場合の給料(給与)や手当はどうなるの?

出向時に気になるのが、給与面ではないでしょうか。本記事の冒頭でもご紹介したように、出向時には原則もともとの雇用主が給与を継続して支払います。

次は、出向の状況別に給与の取り扱いや給与水準について解説します。

 

出向における給与元の扱いを確認する

出向では、「どこに労働を提供した結果、得た給料か」によって課税関係が決定されます。出向時には、給与の支払いや取り扱いを再確認しましょう。

例えば、出向先企業でフルタイム勤務する場合には、原則「出向先負担」と規定されます。出向先負担の給与は「給与負担金」となり、税法上では「損金」として会計処理されるのです。例外的に、出向先でフルタイム勤務をしている社員の給与を出向元企業が全額負担する場合には、出向元から出向先への「寄付金」扱いになります。

【「損金」と「寄付金」とは?】
「損金」は、企業から出ていく費用や損失のこと。損金に算入されるものとして、「原価」「費用(販売費・一般管理費・その他)」「損失」が挙げられます。

一方、法人税で「寄附金」扱いされるものとして、「金銭や他の資産の贈与」「無償による経済的利益の供与」「資産の低廉譲渡」「低廉の経済的利益の供与」が挙げられます。ただし、出向元から出向先への寄附金になる場合には、多額の追徴税金を伴います。

 

「損金」と「寄付金」とは?

「損金」は、企業から出ていく費用や損失のこと。損金に算入されるものとして、「原価」「費用(販売費・一般管理費・その他)」「損失」が挙げられます。

一方、法人税で「寄附金」扱いされるものとして、「金銭や他の資産の贈与」「無償による経済的利益の供与」「資産の低廉譲渡」「低廉の経済的利益の供与」が挙げられます。ただし、出向元から出向先への寄附金になる場合には、多額の追徴税金を伴います。

 

出向者が「出向先企業の役員」になっている場合の給与

「〇〇企業の専務が、グループ会社の代表になった」といったように、出向社員が出向先企業で役員となるケースは多いもの。

役員に支払われる給与は「役員報酬」と呼ばれ、役員の仕事に対して利益の有無に関係なく会社が支払うもの。会社運営のために必要な経費と認識されているため、税法でも損金扱いになるのが一般的です。一方で、会社の業績向上に貢献した人に支払われるボーナスや賞与は規定が異なり、損金不算入となります。

なお、出向先企業が役員給与を損金に算入するための要件は下記のとおりです。

出向時の役員報酬を損金算入するための要件
  • 要件1.出向先企業の株主総会や社員総会、またはそれに準ずるもので役員の給与額などの決議がされていること
  • 要件2.出向者の「出向期間」「給与負担金(給与額)」があらかじめ出向契約などで定められていること

 

出向における給与水準は「出向先」「出向元」どちらに合わせる?

以下の場合、給料水準は、出向先・出向元のどちらに支払うことになるか考えてみましょう。

【問題】
Aさんは、給与水準が毎月35万円の〇〇会社で働いています。今回、給与水準が毎月30万円のグループ会社への出向が決定しました。出向後、Aさんの給与はどうなるのでしょうか。

出向後の給与は、原則「出向先の給与水準」に合わせて給与額が決定されます。よって上の例題では、Aさんの給与は毎月35万円から30万円に下がってしまうのです。

また、出向社員にとって変化するのは給与水準だけではありません。出向中は業務に関する規定を出向先企業基準に従うことになるため、所属している籍以外はすべて出向先企業の社員と同じように扱われるのです。

 

出向理由によって異なる給与の扱い

前述したように、出向時には出向先企業の給与水準に合わせるケースが一般的。しかし、給与の取り扱いは出向先企業と出向元企業の話し合いによって決定されるため、例外のケースもあると理解しておきましょう。

しかし、経営不振の子会社を立て直すために親会社から社員が出向するような出向辞令の場合、出向者は出向元企業で働いていた頃と同水準の給与を受け取るのが一般的です。経営不振によってボーナスが出ないような場合でも、出向元企業でボーナスが支払われている場合にはボーナスの受け取りも可能です。

また、仮に出向先企業が給与を支払っている場合でも、出向元企業の給与水準に満たない部分のみ出向元企業が負担するケースも多いのです。

出向時の「給与」
  • 出向元企業が給与を負担している場合には「損金」扱いになる
  • 出向元企業が給与を全額負担する場合には「寄付金」扱いになる
  • 出向先で役員となった場合は、役員報酬となるので「損金」扱い
  • 原則出向時には、出向先の給与水準が適用される
  • 出向時の状況によっては、出向元の給与水準が適用になるケースもある

 

出向期間の目安は?

出向期間について、法律上では「出向から何ヵ月まで」との明確な規定はありません。

これまでの事例から考えた場合、一般的には出向先企業の着任から3年程度が妥当なラインだと考えられています。もちろん任務・環境変化・雇用調整の観点から、多少の延長や短縮は考えられます。労働者が出向期間に疑問が生じた場合には、企業側に相談するのも一案です。

出向期間について企業側と労働者側で齟齬が生じないよう、事前に出向期間に関する規定を設けておくと良いでしょう。

 

在籍出向?転籍出向?出向契約をよく確認しよう

出向は、大きく「在籍出向」「転籍出向」の2種類に分類され、契約内容によって就業規則や保険適用の取り扱いが異なります。

出向時には、自身の出向契約内容を十分に確認しておきましょう。

 

在籍出向とは

「在籍出向」は、出向元の企業に所属した状態で出向先企業で勤務するもの。在籍出向の場合は「包括的同意」があれば有効です。もちろん、労働契約や就業規則に記載がない場合には、「個別的同意」が必要となります。

「個別同意」と「包括的同意」の違い
  • 個別的同意:労働者が個別の出向内容に同意すること
  • 包括的同意:労働契約や就業規則に出向について記載されていた場合、入社時に該当規則について承諾。 労働者が就業規則で規定された出向に包括的に同意していること

 

転籍出向とは

転籍出向は、出向元企業と雇用契約を終了して、出向先企業と雇用契約を結ぶもの。在籍している所属自体が変化します。

転籍出向の場合には、出向元企業を退職しなければなりません。別会社に新たに入社するかたちになるため、個別的同意が必要となります。

 

就業規則や給与、保険の適用など契約内容を確認しておこう

在籍出向の場合、雇用契約の当事者が出向元、出向先、労働者の3者間の契約となります。

従って、出向元、出向先の権限に応じて、出向元と出向先それぞれに労働基準法が適用されます。

例えば、出向元が給与を支払っていて、出向先で勤務している場合は、賃金や労働者の身分に関する懲戒処分や解雇については出向元が、それ以外の労働時間や休憩時間に関する事項などは出向先が責任を負うこととなります。

一方、転籍出向は、出向元の会社と雇用契約が終了しており、出向先の会社のみ雇用契約が存在している形となりますので、労働者の身分に関する事項は全て出向先が責任を負うことになります。

 

出向先に転職するのはあり? 知っておくべき出向のルール

出向先での業務にやりがいを感じた場合や出向先の勤務形態の方がが好ましいとき、転職を考える人も多いのではないでしょうか。

しかし、出向している状態で出向先に転職するのはどこか気が引けるもの……。出向先への転職は法律上認められているのでしょうか。

 

出向における「法律上」のルール

「出向」に関して、法律上のルールでは出向先への転職は直接的に禁止されてはいません。

しかし、出向先企業が出向元企業と競合関係にある場合には例外です。出向先企業で培ったシステム・社員の持つノウハウ・企業で所有している機密情報などが流出してしまい、出向元企業に損害が生じる危険があるためです。

出向元会社との労働契約や就業規則で「出向先企業への転職」に関する取り決めがある場合は、民事法上の損害賠償責任を問われる可能性もあります。規定がある場合には、出向先企業への転職は慎重に考えましょう。

 

出向における「社会的」なルール

前述したように、法律上では出向先企業への転職を違法としていません。しかし、法律上では禁じられていないとしても、社会的ルールの観点から好ましいとはいえないのです。

あくまで転職は社員の裁量で決定されますが、転職先が出向先企業となるとトラブルが生じるケースもしばしば。出向元企業にとっては「出向先企業に人材を引き抜かれた」という印象を受け、損失発生も懸念してしまうはずです。

仮に、出向先企業への転職を考えたときには、事前に出向元企業との話し合いを相談を重ねていきましょう。

 

出向に関するルールを把握して、会社の期待に答えよう

本記事のまとめ
  • 出向は企業側と労働者側のどちらにもメリットがある
  • 出向時の処遇や給与の基準は原則「出向先企業」に準ずる
  • 就業規則に記載がある場合、労働者は出向に包括的に同意していることになる
  • 出向先への転職は、社会上ルールとしては好ましくない

一昔前はネガティブなイメージのあった「出向」ですが、最近では優秀な人材の育成や企業間交流などの観点から、ポジティブな目的で実施されているケースも多いのです。出向を命じられた際には自分が成長できるチャンスだと捉えて、人脈作りや業務の幅を広げるために尽力しましょう。

また、いくら法律上で禁止されていないとしても、相談なしで出向先企業への直接転職するのはビジネスマナー違反です。トラブルや民事上の損害賠償請求を避けるためにも、出向先への転職を考えた場合には出向元企業にあらかじめ確認しておきましょう。


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