「あの人はマルチタスクで仕事をしている」というと、山積みの華麗に仕事をこなす、難しい仕事を器用に行う、など「仕事ができる」というイメージがあるでしょう。そして、マルチタスク思考でものを考えるとよいことが多いのも事実です。ではマルチタスクにはメリットばかりでデメリットはないのでしょうか。ここではマルチタスクとシングルタスクを比較して、そのメリット・デメリットについて考えてみます。
1. マルチタスクのメリット
まずメリットから考えてみましょう。マルチタスクは現在進めるべき複数の仕事に対して、その特性と進捗状況を見極めるところからスタートします。そしてタスクを分解することによって、自分という一つしかないリソースに対し、そのリソース(自分)が効率的に動くように、適切なタイミングで適切なタスクを当てはめるのがマルチタスクという手法です。
一方、シングルタスクはタスクを分割せずに垂直に重ね、そのまま垂直にタスクを進めるという手法です。よって、シングルタスクでは、例えばアクシデントに遭遇したり待ち時間が発生したりした場合も、寄り道することなくアクシデントの解決に向かい、待ち状態を続けなければなりません。これらを考慮すると、マルチタスクには以下のメリットがあると考えられます。
・自分という限られたリソースを有効に利用できる
・あるタスクについて何らかの理由で立ち止まる必要のある場合、別のタスクを自分に割り当てることで頭を切り替え、次のタイミングでリフレッシュして立ち止まっていたタスクに戻ることができる
・どのタスクも水平に作業できるため、作業の進捗状況にムラが発生しにくい
2. マルチタスクのデメリット
次にデメリットについて考えます。マルチタスクは同時並行的に業務を行うため、タスクの分解とリソース(自分)の切り替えがうまくいかない場合、すべてのタスクが「中途半端」な状態になる可能性があるのです。
そして一度中途半端な状態に陥ると、同時にこなさなければならないという焦りが生まれ、一度生まれた焦りは自分というリソース上に瞬く間に広がり、タスクの入る余地を与えないという状態になるでしょう。そして焦りがタスクの邪魔をし、ますますタスクが中途半端になるという悪循環を生み出します。
これに対し、シングルタスクでは垂直にタスクを掘っていくようなイメージなので、常にやるべきことは一定です。アクシデントや待ち時間でも、リソース(自分)は常にタスクに向かっているからです。
よって、集中力が散漫になることはあまりなく、かつ深くそのタスクを掘っていくことで、初めて得られる「気づき」に出会える可能性も高くなります。これらを考慮すると、マルチタスクには以下のデメリットがあると考えられるでしょう。
・タスクの分解とリソース(自分)の切り替えスキルを必要とする
・スキルが身についていない場合は精神状態と業務効率の両方に悪影響を与える
・集中してタスクをこなすことで得られる経験値を身につけにくい
マルチタスクは、いわば「諸刃の剣」なのかもしれません。「タスクの分割」と「リソース(自分)の効率化」がマルチタスクをメリットにできるか、デメリットにするかのポイントであると言えるでしょう。
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