「演繹法」と「帰納法」はどちらも基本的で、馴染みのあるロジカルシンキングのテクニックです。ただ、そのネーミングが古くから変っていないので、現在では少し難しい印象を持たれるかもしれません。ここでは、この「演繹法」と「帰納法」の違いについて見ていきたいと思います。
演繹法
論理学の祖とも呼ぶべきアリストテレスの「三段論法」が、代表的な演繹法です。アリストテレスは以下の例で、そのロジカルシンキングの方法を説明しました。
大前提として「すべての人間は死すべきものである」。これは誰もが同意できる前提でしょう。次に小前提として「ソクラテスは人間である」。これにも「否」を唱える人はいません。そして、結論。「ゆえに、ソクラテスは死すべきものである」。
このように、まず普遍と思われる大前提を、とりあえず仮説として立て、次に同じように小前提を立てます。そしてそのいずれもが「真」であるならば、そこから導かれた結論もまた「真」ということになるわけです。
ビジネスシーンで例えるなら、「この地域の住民は商品Aよりも商品Bを好む」→「Cさんはこの地域の住民である」→「ゆえに、Cさんには商品Bよりも商品Aを勧めたほうがセールスはうまく行く」。これはごく単純な例ですが、マーケティングや商品開発、営業などの現場で、誰もが自然に行っているロジカルシンキングです。
帰納法
演繹法とならぶ基本的な思考法が「帰納法」です。演繹法と違い、最初に普遍的な前提を立てることはしません。ある仮説を立てる場合もありますが、それは必須と言うわけではありません。
例えば、まず「人は眠るものなのではないか?」という仮説を立てます。「人間aは眠る。人間bも眠る。人間c、d、e、f、g、h…も眠る。だから人間は眠るものである」という考え方、これが帰納法のロジカルシンキングです。ただし、多くの場合「例外」が生じます。この例外を想定するというところも、帰納法の特徴と言っていいでしょう。
これはマーケティング調査などを例にすると理解しやすいでしょう。先ほどの例でいうと、ある地域で聞き取り調査をしたとします。サンプリング調査をしたところ、大多数の住民が商品Aよりも商品Bを好むことがわかりました。そこから、「この地域では商品Bが好まれる」という結論が導かれるわけです。さらに、商品Bの持つ特徴を分析することによって、その地域で好まれる別の商品を開発することも可能になります。
つまり複数の事例、情報から1つもしくは複数の結論を導き出すのが、帰納法です。情報量が多いほど、結論の「確かさ」が増していきます。
「演繹法」と「帰納法」は誰もが日常的に使っている思考法。無意識で使っているロジカルシンキングを、今一度、意識的に捉えること。そしてそれをどうやってビジネスシーンに活かしていくかを考えることが大切になってきます。
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