マーケティングを考える際に、よく言われるのが「市場シェア」という言葉です。そして、各企業はこの「市場シェア」を伸ばすために熾烈な競争を繰り広げています。ではマーケティング戦略において、市場シェアを高める重要性はどこにあるのでしょうか。
1. 強者の優位性
市場シェアを高める最も大きなメリットは、「強者であることの優位性」です。例えば家電量販店などの小売業界でそのシェアを高めて集客力を高めれば、大量仕入れが可能となり、メーカーや流通業者との価格交渉を有利に展開できます。「他よりたくさん仕入れるから安くしてね」と言えるわけです。
メーカーなどであれば逆に、人気製品で市場シェアを高めれば、「どの店舗でも売れるから値引きは難しいです」と言えるでしょう。このように、常に市場シェアを高めることで、「価格面」で取引相手との交渉を優位に進めることができる、というのがマーケティング戦略で市場シェアを高めようとする大きな理由です。
2. 経験効果と規模の経済性
市場シェアを高めることの重要性として、次に挙げられるのが、経験効果と規模の経済性です。経験効果とは、メーカーなどであれば「製品を数多く作る」、サービス業であれば「より多くの顧客と接する」ことによって、経験値が高まり、品質が向上していくというものです。
製品を数多く作ったり、たくさんの顧客と接することは、そのことによる学習効果が高まることとなります。そして、さらにそれは、消費者の声をより多く聞く機会を得ることにもつながるのです。その声を次の製品やサービスにつなげることで、より他社に対する優位性を高めることができるでしょう。また、規模の経済性というのは、市場シェアを高めて生産、サービス量を増やすことにより、よりコストダウンが可能になるというものです。
極端に言うと、同じ設備を使ってテレビを1台生産するのと、100台生産するのでは、1台当たりの設備費用は100倍違うことになります。100台生産するほうが、1/100のコストでテレビを生産できるのです。もちろん現実に1/100になるわけではありませんが、多く作れば作るだけ1台当たりの生産コストが下がるのです。市場シェアを高めることは、経験効果と規模の経済性を生み出すことにつながります。
3. シェアが高すぎる企業の危険性
しかし、シェアが高くなりすぎると、それはそれで危険をはらむことになると言われています。シェアが高まれば高まるほど様々な面で他社と比較して優位となり、今度はそこに胡坐をかいてしまうことになりがちだからです。
「強者でいることが当たり前」という感覚は、製品やサービスの硬直化や創造性の欠如を生み出すと言われています。そして、他社が研究する格好のターゲットとなり、やがて登場してくるイノベーションによって、それまでの優位性がすべて破壊される可能性があるとも言われているのです。イノベーションによりコモディティ化されてしまうと、これまで広げてきた設備や学習効果がすべて無になってしまう可能性もあるでしょう。
「品質向上やマーケティング戦略によって市場シェアを高める」+「外部に破壊されないために内部でのイノベーションを起こし続ける」=「企業の理想の姿」、と言えるのかもしれません。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう