4月からの消費税の増税が始まりましたが、増税を受けて、宣伝や広告などで変更点はあるのでしょうか?ここでは、消費税にまつわる宣伝や広告等の表示についてQ&A形式で整理してみたいと思います。
Q. 「消費税還元セール」を実施しても大丈夫?
A. 「消費税還元セール」という名称のセールを実施することはできません
増税分を実質値下げして販売するセールを実施することは可能ですが、その際に、消費税分を値引きする等の宣伝や広告は禁止されます。では、具体的にどのような表示が禁止されるのでしょうか?
相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
×「消費税は転嫁しません」
×「消費税は当店が負担しています」
×「消費税はおまけします」
×「当店は消費税増税分を据え置いています」
×「消費税還元セール」
これらは、取引の相手方に消費税を転嫁していない表示であることが明らかと言えますよね。質問にあった「消費税還元セール」もこのような表示に当たるため、禁止されます。
本当は相手方が負担すべき消費税分を値引きするような表示
×「消費税率上昇分値引きします」
×「消費税8%分還元セール」
×「増税分は勉強させていただきます」
×「消費税率の引上げ分をレジにて値引きします」
いずれの表示も消費税分を負担しなくて済むような印象を受けますよね。
支払った消費税分だけお金や商品などの経済上の利益を与える表示
×「消費税相当分の商品券を提供します」
×「消費税相当分のお好きな商品1つを提供します」
×「消費税増税分を後でキャッシュバックします」
消費者の立場からすると、思わず「お得!」と思ってしまいそうな表示ですが、これらの表示も禁止されています。
Q. それなら「消費税」って言葉を含まなければ大丈夫ってこと?
A. 「消費税」という言葉を含むか否かが基準となるわけではありません
例えば、「消費税」という言葉を含まない表示であっても、以下の表示は禁止されます。
×「増税分3%値下げ」
×「税率引上げ対策、8%還元セール」
×「増税分は勉強させていただきます」
これらの表示は、「増税」や「税」といった言葉を用いて実質的に消費税分を値引きする等の趣旨の宣伝や広告であるため、通常、禁止されます。あくまでも、消費者が消費税を負担していないと誤認してしまうような又はその負担が軽減されていると誤認してしまうような表示かどうかが分かれ目と考えられそうです。
また、禁止される表示に当たるか否かは、宣伝や広告の表示全体から判断されます。例えば、以下は、禁止されます。
×チラシに大きく「3%値引き」と記載するとともに、同一のチラシに「消費税率が引き上げられますが、当店は引上げ分の値引きで皆様を応援します」と記載
これは、チラシ全体の表示から見て、消費税分を値引きする等の表示に当たるというわけです。
Q.うちはインターネット販売専門だけど、「消費税還元セール」は実施できない?
A. 「消費税還元セール」という名称のセールを実施することはできません
特措法8条が規定する「表示」には、事業者が商品を販売したり、役務を提供する際にお客さんを誘引するために利用するあらゆる表示が含まれます。この中には、商品の容器や包装における広告、ポスターや看板における広告、テレビCMやインターネット上の広告も含まれます。このため、インターネット専業の事業者も、消費税に関する表示には気をつける必要があります。
Q. うちは顧客が事業者ばかりだから関係ないよね?
A. 関係あります
特措法8条が予定する典型的な場面は、スーパーマーケットやネット通販など小売業者による消費者向けの表示ですが、必ずしもそれに限られるものではありません。事業者向けのカタログやパンフレットの記載など、事業者間の取引における表示についても同条の対象となります。事業者が相手だからといって、消費税を負担していないと誤認させて良いわけではないのです。
Q. うちは売上が小さくて消費税の納税義務がないから関係ないよね?
A. 関係あります
特措法8条の適用対象となる「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者であり、消費税の課税事業者に限られません。このため、売上規模が小さいために課税事業者とならない事業者(免税事業者)においても、消費税に関する表示には気をつける必要があります。
Q. お客様には増税分をポイントで還元しようと考えているんだけど?
A. 宣伝や広告の表示に気をつけてください
購入額に一定率を乗じるなどして算出されたポイントを次回購入時の支払いに充てることができるサービスである、いわゆる「ポイントサービス」における「ポイント」も、特措法8条における「経済上の利益」に当たります。このため、支払った消費税分だけ経済上の利益を与える表示として禁止されます。
×「消費税相当分、次回の購入に利用できるポイントを付与します」
Q. それならどんな表示なら許されるの!?
A. 次のような表示は許容されます
宣伝や広告の表示全体から見て消費税を意味することが客観的に明らかな場合でなければ、許容されます。
1. 消費税との関連がはっきりしない場合
○「春の生活応援セール」
○「新生活応援セール」
2. たまたま消費税率の引上げ幅と一致するだけの場合
○「3%値下げ」
○「3%還元」
○「3%ポイント還元」
3. たまたま消費税率と一致するだけの場合
○「8%値下げ」
○「8%還元セール」
○「8%ポイント進呈」
確かに、「1」はもちろんのこと、「2」や「3」だけの表示であれば、必ずしも消費税増税と関係あるとは言えなさそうですよね。また、特措法8条に該当しない安売り、特売、セール等の宣伝や広告も、禁止されません。
なお、同条は、あくまで消費税分を値引きする等の宣伝や広告を禁止するものであり、同条により、事業者の企業努力による価格設定自体が制限されるわけではありません。つまり、モノの値段は自由に決められるけど、宣伝や広告をするときの表示に気をつけましょうということなのですね。
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