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飲食店が新店舗をオープンする時に実践している「立地マーケティング」の方法

Shingo Hirono

2014/04/04(最終更新日:2014/04/04)


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by Bert Kaufmann
 マーケティングが上手いと言われている企業には、的確な判断ができる認識能力と経営判断を素早く実行に移せる行動力が備わっています。マーケティング単体では単なる情報分析にすぎません。正しい判断と実行力を備えた企業だけが、マーケティングをうまく利用することができるのです。マーケティングを経営に導入するのであれば、まずは企業の運営体制を見直すところから始めてください。

 飲食チェーン店では、新店舗をオープンするときに「立地マーケティング」という手法を用います。立地マーケティングとは、店舗の立地に特化したマーケティング手法で、飲食店経営のように立地が経営に大きくかかわる際に有効なマーケティングです。では、立地マーケティングとは具体的にはどのように行うのでしょうか。今回は、飲食店における立地マーケティングの方法を紹介します。

ターゲット及びコンセプトの設定

 最初のステップでは、新店舗のターゲットとコンセプトの設定を行います。ターゲットとは、その飲食店が顧客として想定する客層のことです。男性向けの店なのか女性向けの店なのか、単身者向けかファミリー向けか等、飲食店が客として想定する人物像を決め、それに合わせた店づくりが行われることになります。

 コンセプトとは、その飲食店をどんな店にしたいのか、ということです。店づくりの基本となる重要なものなのでコンセプト作りが経営の成否を左右するといっても過言ではありません。コンセプトはターゲットと密接に関係しており、ファミリーをターゲットにしたちょっと高級な店をイメージするならば「ファミリーが年に一度の祝い事の時に来たくなる店」がコンセプトになるでしょう。

 コンセプトの違いは店の差別化に大きくかかわります。同じ居酒屋でも「仕事帰りにちょっと一杯やる店」と「誰にも邪魔されず落ち着いて飲める隠れ家的な店」では店舗の方向性が大きく異なります。

周辺環境調査

 新店舗をオープンする土地の周辺環境は、経営を左右する重大な要素です。周辺にはどのような施設があるか、人通りはどれくらいなのか、競合店やライバルはいないか等の調査を行い、新店舗にふさわしい場所かどうかのマーケティングを行います。

 周辺環境により、その後の店舗運営は大きく変わります。他に飲食店が無いようなところに新店舗をオープンすれば、周辺の人々を顧客として獲得できることが予想されますし、周辺に飲食店がひしめき合うような場所にオープンすれば激しい競争が待ち受けていることは容易に想像がつきます。

 周辺にどんな店や施設があるのかを分析することでその後の経営状況を想定し、的確なマーケティング戦略を取っていくことが求められるのです。

集客予測

 飲食店オープン後にどのような顧客がどれだけ来店するのかを、データ分析に基づいて予測するのが集客予測です。基本となるデータは周辺の企業や施設の種類と数、駅などの公共交通施設の利用客数、買い物や行楽で訪れる人の人数等を用います。データをもとにすれば来店後の客数が想定可能になり、店舗の座席数や回転率などを適正な値に設定することができます。忘れてはいけないのが、時間帯や日時による人口の変化です。同じ場所でも時間帯や日時が変われば集客予測は大きく異なります。

 例えば、周りにオフィスが多いビジネス街であればランチ需要の集客が期待できますが、夜は皆帰宅してしまっているので集客は望めません。行楽地であれば土日祝日に集客は集中し、平日は十分の一の客数ということも十分考えられます。

 集客予測は出店判断そのものにかかわる大きな問題です。集客が望めない場所では新店舗を開く意味がありませんから、出店計画そのものが白紙になってしまいます。立地選定に大きくかかわる重要なポイントなので、多くのデータを収取して適正な判断をしなければなりません。


 立地マーケティングは、飲食店経営に特化した大企業が独自のノウハウを積み重ねて作り上げたマーケティング手法です。単なる経営分析ではなく、未来の集客を予測する重要なマーケティングなので、やり方は門外不出としている企業も少なくありません。中には他社のマーケティングを利用する企業もあるでしょう。

 あのグループは綿密な立地マーケティングを行って出店場所を選んでいるのだから、その近くに出店すれば間違いなく経営はうまくいく、という考え方に基づいて、出店場所をあえて競合他社の近くに出店しています。悪く言えばただ乗りですが、これも立派なマーケティング技法の一つです。

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