インターネットや情報技術が格段な進歩を遂げる昨今、昔ながらの経営方針を続け時代の波に乗り遅れてしまう日本企業は数多く、それは中小零細企業だけでなく安泰と言われてきた大企業であっても同様の状況です。
ここでは、世界有数の大企業でありながら、世界の技術進歩により経営の岐路に立たされながらも長年蓄積した技術を武器に大きな経営革新を断行し会社の再興に貢献した富士フイルムの例をご紹介したいと思います。
精密化学メーカーから化粧品事業へ参入
富士フイルムは言わずと知れた日本を代表する大企業の一つであり、精密化学メーカーとしてカメラや写真・映画用フィルム、写真プリントといった写真システムに関する商品の製造・販売を行っている会社です。中でも個人向け商品としては、写真フィルムや一世を風靡した使い捨てカメラ「写ルンです」が大変有名で、旅先では欠かせない大ヒット商品となりました。
しかしながら光学技術の進歩によってデジタルカメラが台頭し、更にはカメラ付き携帯電話が現れ、それらの飛躍的な技術進歩と大衆への普及の速さから写真用フィルムの必要性が徐々に薄れ店頭から消えてゆきました。また、パソコンやインターネットの普及により全ての写真をプリントアウトする必要がなくなり、以前に比べて写真プリント用紙の必要性が減少しました。
このように、社の主力商品が時代の波に飲まれて市場から排除されるようになった事から富士フィルムは経営の岐路に立たされる事になりました。しかし、社長である古森氏の強いリーダーシップのもと、2005年及び2006年に主力事業である写真フィルム事業の縮小を断行、長年培ってきた写真フィルム技術を生かして全く別の分野への進出を行い会社再建を図りました。具体的には、医療分野の画像・検査用機器の開発や、更には化粧品事業・健康食品事業にも進出してそれぞれ事業の柱として現在も成長を続けています。
この成功事例から学ぶべきこと
一時期は写真フィルム分野で世界的にライバル関係であったコダック社が2012年に倒産申請をしたということがありました。しかし富士フイルムは、かつての功績にとらわれ今や倒産してしまう企業や海外勢に後れをとっている日本企業が多い中、世界有数の大企業であっても時代の流れを冷静に分析し大きな舵取りを行ったという点で、経営革新の大きな成功事例だと言えるでしょう。
また、富士フイルムが成功したもう一つの要因は、長年蓄積した社内技術を生かして新しい商品を開発しているところであると言えます。主力商品である写真フィルムの製造規模は縮小しても、そのフィルム技術を生かして全く違う商品の開発に着手しており、過去の経験を全く捨てずむしろその強みを生かしている素晴らしい成長過程であると思います。
かつての人々が、富士フイルムが化粧品事業に参入すると誰が想像したでしょうか。かつての技術を生かし全く新しい商品を開発するといった、かつてない経営モデルのパイオニアと言えるでしょう。
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