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クラウドファンディングの法規制(基礎編)

AZX Professionals Group

2014/02/15(最終更新日:2014/02/15)


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 ベンチャー企業による資金調達は、ベンチャーキャピタル等による種類株式や新株予約権付社債(CB)による投資が中心的ですが、最近、クラウドファンディングという資金調達方法が注目を集めています。金融庁でも、新規・成長企業へのリスクマネー供給という観点から、クラウドファンディングを活用するための法改正が検討されています。そこで、今回は、このクラウドファンディングとその現状における主な法規制について考えてみたいと思います。

クラウドファンディングとは?

 そもそも、クラウドファンディングとは何か?ということですが、金融庁の資料では、「新規・成長企業と投資家をインターネットサイト上で結びつけ、多数の投資家から少額ずつ資金を集める仕組み」と説明され、資金を提供した人に対するリターンの形態により、主に①投資型、②寄付型、③購入型の3つのタイプがあるとされています。

各タイプの概要

①投資型…資金提供者が組合契約を締結する等して資金を出資し、これに対して、収益の一部が資金提供者に分配されるタイプ。分配される金銭等が資金提供者へのリターンとなります。

 例: セキュリテ

②寄付型…資金提供者が資金を寄付として提供し、何のリターンも発生しないタイプ。

 例: JustGiving

③購入型…資金提供者は、一定の製品等を購入し、その対価として資金を提供するタイプ。購入した製品等が資金提供者へのリターンとなります。

 例: KICKSTARTER
    CAMPFIRE
    READYFOR?

 以上の概要だけを見ると、投資型が最も資金提供者へのリターンが大きく、それ故にビジネスチャンスも大きそうであることから、クラウドファンディングの中では投資型が中心的に行われそうです。ところが、日本で行われているクラウドファンディングでは、寄付型あるいは購入型が多いのが実情です。これは、次の投資型の法規制で説明する金融商品取引法による規制の影響と考えられます。

投資型の法規制

 では、投資型のクラウドファンディングは、金融商品取引法によりどのような規制を受けることになるのでしょうか?結論から言うと、投資型による資金調達を行う場合や投資型の資金調達を仲介するためには金融商品取引法に基づき第2種金融商品取引業の登録が必要となります(これに対して、寄付型と購入型の場合は、基本的には金融商品取引法の規制を受けません。)。

 具体的には、投資型における資金の提供は、各タイプの概要でも述べたとおり組合契約の締結により行われることが多く、この組合契約に基づく資金の提供(=出資)は、いわゆる「集団投資スキーム持分」という金融商品取引法の規制対象である有価証券の一種に該当します。そして、この集団投資スキーム持分の資金提供者を集めたり、それを仲介するためには、第2種金融商品取引業の登録が必要となっています。この第2種金融商品取引業の登録があることが、日本のクラウドファンディングで投資型が少ない理由と考えられます。

 登録であれば必要書類を役所に提出すればよいだけだから、簡単なのでは?と思う方がいるかもしれません。法律上はその通りなのですが、実態としては、役所の担当官と何度も面談をしてスキームを説明するため時間がかかり、また、提出書類は専門的な内容で専門家のアドバイスなしでの作成はかなり難しく、コストがかかるため、このような登録作業のない寄付型や購入型よりもハードルが高い印象があります(他人のお金を預かるという側面があるため、役所が慎重な手続をすることにも理由はあり、ハードルの高さもやむを得ない面はあるのですが……)。

 また、登録後の運用段階でも、金融庁の監督下で金融商品取引法に基づく規制を受けることになります。これに対して、寄付型と購入型の場合は、具体的なスキームの内容にもよりますが、基本的には金融商品取引法の規制を受けない形で行うことが可能です。寄付という形でお金をあげる・もらうということや、何かモノを売ったり買ったりすることは一般的にも行われていますしね。クラウドファンディングで資金を調達しようとしている人や、クラウドファンディングのサービスを提供するビジネスを考えている人にとっては、最初に必要な準備の負担が投資型の場合よりもはるかに少ない点が魅力です。但し、寄付型や購入型のクラウドファンディングであれば、何の法規制もなく行えるというものではありません。

寄付型の法規制

 例えば、寄付型の場合は、以下の点に注意が必要です。

・資金提供者側の問題として、提供した資金は寄付金として一定額までしか損金に算入されないという問題があること(なお、資金提供者が事業者である個人の場合、通常、事業と関連して寄付を行う可能性は低いため、必要経費に算入されないと考えられます。)。

・資金調達者側の問題として、資金調達者が法人の場合は提供を受けた資金について法人税の対象となり、資金調達者が個人の場合は提供を受けた資金について所得税又は贈与税(資金提供者が個人であるか又は法人であるかによります。)の対象となるという問題があること(但し、日本では、寄付型クラウドファンディングで提供を受ける資金のような一時所得に関する所得税については年間50万円までは非課税であり、贈与税については年間110万円までは非課税です。)。

購入型の法規制

 また、購入型の場合は、以下の点に注意が必要です。

・誰が売主となるのかにより(通常は資金調達者自身と考えられますが、スキームの法的構造によっては、プラットフォームの提供者が売主となる可能性もあります。)、購入対象に関する責任の所在が異なることになるため、スキームの法的構造を吟味する必要があること。例えば、以下に述べる責任の所在や規制を受ける者が異なることになると考えられます。

・売買であることから、売主には瑕疵担保責任等の購入対象に関する責任が生じること。

・瑕疵担保責任については、完全な免責を定めることは、資金提供者が一般消費者であることから消費者契約法上難しいと考えられ、責任の内容については慎重な検討が必要となること。

・特定商取引に関する法律に基づく表記等の、いわゆる特定商取引法による規制を受けること。

・購入対象と対価のバランスが取れていない場合は、単なる贈与として、(3)寄付型の法規制で述べた点と同様の税務上の問題が生じる可能性があること(購入型ではモノを販売するだけでなく、資金調達者の人と握手する等のサービス提供という形態もあり、特にサービス提供の場合は対価とのバランスに注意が必要です。)
 
 さらに、寄付型と購入型のいずれも(投資型もですが)、お金の流れの仕組みによっては、資金決済に関する法律に基づく資金移動業の登録の要否を検討する必要が出てきます。ひとくちにクラウドファンディングと言っても、複数のタイプや各タイプに応じた様々な法規制がありますので、実際にクラウドファンディングを行う場合には十分な準備が必要です。


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