今や世界的ブランドとなったユニクロ。そしてそのために尽力したのが株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏だ。
彼はどのような思いでここまでやり続けてきたのだろうか。ベンチャー通信に対するインタビューで、彼は経営者としての思いを語った。
大学時代は将来の夢もなかった
もともと商売に対していいイメージを持っていなかったという柳井氏。彼の父親は商店街で紳士服の商売をやっており、小さい頃から商売というのは彼にとってとても身近なものだった。しかし、身近すぎる故か、彼は価値観の尺度がお金になってしまうことに反発心を持っていた。
大学に進学するも、彼は卒業まで特に夢を持たない普通の学生だったという。就職活動もせず、縁故入社で入った企業も半年で退職。会社があわなかったのではなく、仕事に対する意欲が全くわかなかったのだ。
その後実家に戻って実家の商売を手伝うようになった柳井氏だが、その効率の悪さに愕然とした。そのことを当時いた従業員に言い続けていたところ、ほとんどが辞めていってしまい、彼が店を回さなければいけない状況になってしまったのだ。
この経験は今の柳井氏につながっている。すべて自分でやらなければならず、商売人としての力をつけることができたのだ。そしてその時に、自分で商売をやっていこうと決意するのである。
多くの失敗から自分を成長させてきた
柳井氏にとって経営者とは「客観的に自分の会社を判断して、主体的な行動ができる人」を指す。会社の収益や社員の自己実現をどうやって達成させるかを常に考える必要がある立場である。彼にとって経営は決して派手なものでもなく、単調でつまらないものだった。
彼が経営の原理原則として最も重要だとしたのが「信頼」だ。「信頼」は経営にとってすべてなのだという。
また、甘い考えでは経営はやっていけないというのが柳井氏の考えだ。商品を買いにくるお客さんはシビアな目で商品を見てくる。それならば、従業員もシビアでいなければならないのだ。
そしてその中で経営者は全員が納得できる形で経営していくことが求められる。柳井氏も最初は多くの失敗を繰り返した。その中で自分を成長させてきたのだ。
商売に関しては「一勝九敗」だったという柳井氏。新しいことを始めて成功する確率というのはほとんどゼロに近いのだ。
その中で、彼は失敗しても会社は潰さないようにと努力してきた。会社を潰すと言うことは従業員やその家族に大きな迷惑をかけることになる上に信頼も失ってしまう。「それだけは避けなければ」というのが柳井氏の心には常にあった。
彼が信頼されるために心がけていたのは「一貫させる」ということだ。コロコロと意見を変える人は信頼されない。自分が言ったことは必ずやり遂げる。さらに約束は絶対に破らない。そういったことが信頼につながるのだ。
使命感を持ってできるものを探すことが大切だ
「経営者に素質は必要ない。」柳井氏は断言する。誰にでも起業することはできるのだ。その中で大切なのはまず自分で全部やってみること。そこで失敗して、また挑戦する。その中で成長していくことができるのだ。
起業家を目指す上で意識するべきなのは、ベンチャーをやろうと思わないことなのだという。
「起業家を目指すんだったら、まず会社を興すことを考えるんじゃなくて、一生自分がやり続けられることを見つけるのが大切です。」
そしてやると決めたらとことんやること。その意識がベンチャーをやっていく中で重要なのだ。
「まずするべきなのは使命感を持ってできることを探すこと」と柳井氏。企業には重大な責任がついてまわるため、安易に考えていいものではない。自分が主体的になって使命感を持って取り組めば、そこには必ず信頼が生まれるのだ。
彼が若い人に求めるのは、もっと世界に出て活躍してほしい、ということだ。もっと若い人に頑張ってほしい。そして日本を再興するような新しい産業を創りだしてほしい。ビジネスチャンスはどこにでもあるのだ。自分の可能性は自分で開発するしかない。
まずは自分ですべてをやる環境に自分を置くのが大切なのだ。それが新たな可能性を産み出すきっかけになるだろう。
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