HOME特集 「渋谷がビニール傘だらけの写真は恥ずかしい」日本の傘使い捨て意識を変える発想とは

「渋谷がビニール傘だらけの写真は恥ずかしい」日本の傘使い捨て意識を変える発想とは

漆舘たくみ

2019/09/04(最終更新日:2019/09/05)


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株式会社シューズセレクションのCOO坂口淳一さん=2019年8月28日

世界で最も傘を消費する国・日本。1年間で約1.3億本を使い、捨てている。一方で、折りたたみ傘の使用率は世界平均55%に対して21%にとどまる。こんな傘を使い捨てる意識を変えようと、Waterfront(ウォーターフロント)ブランドを展開する大手傘メーカー・株式会社シューズセレクション(東京都目黒区)が今年6月から、折りたたみ傘を携帯する習慣を啓発する「たたむ、をひろげるプロジェクト」を行っている。同社COOの坂口淳一氏に経緯を聞いた。

日本は年間1人1本以上の傘を消費する

同社によると、日本では、特にビニール傘の使い捨てが習慣化している。日本洋傘振興協議会のデータでは、傘全体では年間1.3億本を消費。そのうちビニール傘は年間8000万本を占める。これは雨が降り始めたときに、急場しのぎでコンビニやドラッグストアで購入する人が多いためだという。どこでも手軽に買えてしまう利便性の高さが、消費量を高止まりさせる一因になっている。
無料配布された絵本冊子=2019年8月28日

配布された絵本冊子=2019年8月28日

同社は持続可能な開発目標(SDGs)や環境保護の観点を踏まえて、今年6月から折りたたみ傘携帯の啓発活動を始めた。軽くて丈夫な製品開発のほか、ビニール傘をはじめとするプラスチック製ゴミを巡る環境問題を描いた絵本「ビニール傘と海の生きもの」を制作。8月7日から東京・自由が丘店と大阪・心斎橋店で、「はじめて傘を購入する子どもたち」を対象に無料配布した。持ち主に捨てられてしまったビニール傘が、新たに折りたたみ傘へと生まれ変わるまでのストーリー。子どもたちに環境保護の重要性を訴えかけながら身近な物を大切に長く使ってほしい、という思いを込めている。

スクランブル交差点で大量のビニール傘は恥ずかしい

WaterfrontのCOO坂口淳一さん=2019年8月28日

株式会社シューズセレクションのCOO坂口淳一さん=2019年8月28日

──ビニール傘の削減活動を始めた経緯を教えてください。
日本では毎年大量に傘が消費されています。街を見ていると、ビニール傘が捨てられていたり、あるいは雨のたびに買って家に溜めてごみになったり、そういう使い方をされています。ごみを減らそうという世の中で、これは恥ずかしいことじゃないかなと。今、渋谷のスクランブル交差点の写真がよくネットで出回りますよね。雨の日はビニール傘が多いんです。これが世界に発信されてしまう。ビニール傘は便利です。コンビニとかどこでも売っていて、雨が降ったときにそこにあって、つい買ってしまいます。そこは「もっと丁寧に傘を使うべきではないか」という点からスタートすべきと考えました。ビニール傘を完全に否定するわけではなく、たとえば柄を付けてデザイン性を高めるなど、大切に使ってもらえるようにしたいですよね。その中で、当社は折りたたみ傘が強い分野なので、折りたたみ傘を広める方がビニール傘の使い捨てをなるべく減らせるんじゃないかという観点でした。普及率が低いのは、逆にチャンスではないかと捉えています。世界標準まで高まれば、傘の使い捨ては減ると考えています。
▼大切に使ってもらうことを意識した折りたたみ傘の例
Waterfrontの子供向け折りたたみ傘=2019年8月28日

子供向け折りたたみ傘=2019年8月28日

──「傘を忘れるのが怖いから、高い物を買わない」という意見もあります。
置き忘れ防止には、IoTを活用して色々なプロダクトが生まれていますよね。スマホと連動したり、位置が分かるようにしたり。ただ、どうしても現状では傘の価格が高くなってしまいます。今は「人からプレゼントされたもの」「自分でじっくり選んだもの」など、思いがこもって忘れにくくなる製品を生むほうが効果的なのかなと。弊社の傘の修理サービスでは「子供からプレゼントされたものだから」といった理由で依頼される方も多いです。

株式会社シューズセレクションのCOO坂口淳一さん=2019年8月28日

SNSで好反応、改善の機運を見出す

──「傘」は基本的な形がずっと変わらない道具で、イノベーションが起きにくい分野かと思います。苦労やこだわりがありましたら教えてください。
やはりバランスですね。よく「軽い傘が欲しい」と要望されますが、軽くなるとどうしても強度が落ちてしまう。そこは交換条件になる点で、どこでバランスを取るか。構造や素材の工夫が求められます。折りたたみ傘だと「大きいものが欲しい」と言われますが、大きくすると風を受けて折れやすくなる。あちらが立てば、こちらが立たないといったことがよく起こります。当社は安全性を重要視しています。先端が尖っていたり金具が変な形になっていたり、軽くしようとし過ぎて壊れやすくなってしまうとか、そういうところのバランスが難しいですし、こだわりがあって工夫している部分ですね。
左の傘は強度はそのままで軽くなっている=2019年8月28日

左の傘は右に比べて強度はそのままで軽くなっている=2019年8月28日

──プロジェクトを通じて、手応えを感じた場面はありましたか。
「たたむ、をひろげるプロジェクト」の公式発表を配信した時に、すごくSNS上で反応がありました。ビニール傘に対して問題だよねという機運が盛り上がっていたところに、うまくはまったみたいで。自分のツイッターでも投稿したら、いつもの投稿以上にリツイートされました。大阪・心斎橋店のオープン時には、ECサイトで気に入ったから実際に店舗に来てみました、という方もいらっしゃってくれたのはうれしかったです。もととも心斎橋は訪日外国人観光客が多い地域ですが、インバウンド向けのプロモーションをしていなかったのに、訪日外国人の方が多く来店されたのも意外でした。価格が安い、色とりどりの傘があるというのが響いているようです。やはり日本製ということで品質が良いイメージも持ってもらえています。インドの家族の方が、閉店間際に30本以上買うのを見たときにはさすがに驚きました(笑)海外のSNSでも話題になっているみたいで、インバウンド客が少ない東京・自由が丘店でも、わざわざ買いに来る外国人のお客様がいらっしゃいます。
WaterfrontのCOO坂口淳一さん=2019年8月28日

株式会社シューズセレクションのCOO坂口淳一さん=2019年8月28日

──今後はどのような展開を考えていますか?
折りたたみ傘なりビジネスパーソンが使い捨てないような商品なりを、さらに開発していきたいですね。(折りたたみ傘の使用率について)あえて数値目標は設けていません。環境問題の発信は説教くさくなりがちなので、特別なことを考えずとも日常生活で手に取った折りたたみ傘が、環境問題の解決に寄与していたというのが理想です。たとえば「環境問題が…」と前のめりな意識じゃなくて「ビニール傘と同じ500円なら、折りたたみ傘を買おう」という意識を根付かせる。環境問題が改善するなら、それでいいと思っています。もちろん啓発はするけれども、ちゃんとプロダクトやマーケティングでの解決を並行してやっていくことで、本当の解決を目指したいなと思います。

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