【ホテル×町工場】東京・蒲田に職人魂を体感できるホテルが開業

出入口にある工作機械／ホテルオリエンタルエクスプレス東京蒲田

下町の町工場とビジネスホテルがタッグを組んだ。

蒲田の町工場を感じるホテル

羽田空港にほど近い、東京都大田区の蒲田（かまた）地域。中小企業の工場が集積し、ものづくりの街として歴史を重ねてきた。4月19日、空港に乗り入れる京急線の京急蒲田駅から徒歩3分の位置に、新たに「ホテルオリエンタルエクスプレス東京蒲田」がオープンする。全国でヒルトン、マリオットなど計14のホテルを経営するホテルマネージメントジャパン（東京都渋谷区）が運営。地上6階に全158室を備える。ホテルのコンセプトは「蒲田ならではの町工場を感じるホテル」「体験価値を持つホテル」だ。地元企業が協力し、館内の案内プレートなど随所に町工場を感じさせる仕掛けがある。エントランスでは、日常ではまず見かけない工作機械が宿泊客を出迎える。長い歴史に幕を閉じた町工場から移ってきた古い旋盤機である。朝食のビュッフェにも工夫を凝らす。お弁当箱を用意し、利用者はまさにひとつの製品を「つくる」ように食事の準備ができる。食材にも、かつて海苔（のり）の一大産地だった大田区の海苔を使ったおにぎりを並べている。インバウンド需要も重視しており、自動チェックイン機や、音声案内アプリ「ON THE TRIP」と連携した多言語によるホテル館内・地域の案内といったサービスを提供する。工業とホテルを組み合わせた珍しいコンセプトについて、同社の箕輪将臣プロジェクトリーダーが狙いを語る。

「羽田空港の乗降客数がどんどん伸びていく中で、（品川や新宿に比べて）蒲田は意外と宿泊されておらず、拠点性を高めていきたいと考えています。ただ宿泊施設として良いベッドを用意するだけではなく、選んでもらえて、リピーターが何度も来るホテルにしたいと考えた時に、蒲田という土地の工業・技術をデザインに取り込んで発信しようと思いました」（箕輪プロジェクトリーダー）

町工場でこんなことができるんだぞ

「一般の人にも『こんなことができるんだぞ』とアピールしたい」オープンに先立って行われた17日の内覧会で、大田工業連合会青年部連絡協議会の委員長・関英一さんは、このように力を込めた。大田区の町工場には「仲間まわし」と呼ばれる独特の文化がある。ひとつの製品について工場同士が協力し、切削や研磨などに得意な技術を生かして完成させる地域内の分業体制だ。それぞれの会社が特定の技術の専門性を高め、迅速な製品納入を実現してきた。関さんによると、工場が密集する土地柄と長年の信頼関係がなせる、世界的にも類を見ない慣習という。ホテルの各階のフロアサイン（階数表示）は、計10社以上の町工場の技術が関わっており、仲間まわしの成果を体現している。▼膨張率の異なる素材を組み合わせた1階の「合せる」 ▼樹脂の板に掘った穴で数字を浮かび上がらせた2階の「掘る」 ▼樹脂を高度に接着・研磨した3階の「削る」

「工場の部品は一般の人には見られないことがないので、こんな形でアピールできるとは思いませんでした。工場数は年々減っていますが、私たちがやっていることを世界に発信し、若い世代にも見てほしいですね」（関さん）

近年、古くからの飲食店街が残るなど“ディープな街”としても人気を集めつつある蒲田。町工場の集まる下町が、国際空港から近い観光地としてにぎわう日は遠くないかもしれない。【ホテル オリエンタルエクスプレス 東京蒲田】所在地：〒144-0035 東京都大田区南蒲田1-3-15電話番号：03-3733-5511客室数：158室（シングル36室、ダブル32室、ツイン78室、トリプル11室、ユニバーサル1室）アクセス：京浜急行線・京急蒲田駅東口より徒歩3 分URL：https://tokyokamata.hotelorientalexpress.com/