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スマホ依存の小中高生が無人島で4泊5日…兵庫県のプロジェクトの真意とは

漆舘たくみ

2016/06/18(最終更新日:2020/01/23)


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合宿地となる兵庫県の西島 提供:兵庫県

小中高生、無人島合宿に賛否両論

「もし電波がなくなったら、みんなはどうやって人とつながりますか?」参加者を募集するこのチラシの一言に、ドキッとする人も少なくないだろう。兵庫県が今年8月に実施予定の「人とつながるオフラインキャンプ」が議論を呼んでいる。
オフラインキャンプの募集チラシ 提供:兵庫県

オフラインキャンプの募集チラシ 提供:兵庫県

スマートフォン(スマホ)やインターネットに依存気味の県内の青少年(小学5年~18歳)約20人を対象に、スマホを預かったうえで、無人島で4泊5日を過ごしてもらうプロジェクト。5月下旬の計画発表以降、ネット上では「大人版もほしい」「極端すぎる」「ひと夏の思い出に終わるだろう」と賛否両論が渦巻く。兵庫県青少年課の担当者に、キャンプの真の狙いを聞いた。

5人に1人が1日4時間以上…実態調査の衝撃

キャンプは、兵庫県姫路市の家島諸島の最大の島・西島で行う。島に住民票を置く人はいないが、県立いえしま自然体験センターがあり、宿泊や自然体験の設備が整っている。

兵庫県の西島の位置

同県は2015年夏、県内の小中高生約3,000人を対象に、医療用を参考にしたアンケートを用いてネットの利用状況を調査。結果、22%の子供が1日4時間以上も利用。さらに、6.4%に依存傾向がみられたため、文部科学省の事業の一環としてキャンプを企画した。

「夏休みの思い出で終わらせない」

「ただの夏休みの思い出で終わらせません」と担当者は強調する。4泊5日のキャンプは毎日の食事作りはもちろん、海水浴やカヌー、キャンプファイヤーなど人とコミュニケーションを取って動くことが常に求められる。さらに、毎晩のキャンプファイヤーの場で、どうしてネットを使うのかについて皆で必ず話し合う日程だ。ネット依存について研究する国立久里浜医療センターの協力を得て、認知行動療法を取り入れているという。11月には「フォローアップキャンプ」と題し、もう一度西島に集まり、キャンプ後を振り返る1泊2日の合宿も予定している。
カヌーカヤック (2)

いえしま自然体験センターのカヌー 提供:兵庫県

子供たちの活動をサポートするのは、兵庫県立大学の学生だ。学生たちは「ソーシャルメディア研究会」のメンバーで、日頃から小中学校などでSNSの使い方などを指導する。より子供たちに近い目線で一緒に合宿を過ごし、ネットについて考える。
プレ合宿を行う兵庫県立大の学生たち 提供:兵庫県

オフラインキャンプに向け、プレ合宿を行う兵庫県立大の学生たち 提供:兵庫県

重視するのは「我慢」ではなく「振り返り」

合宿では、どうしても我慢できない時だけ毎晩1時間以内に限り、スマホを使える時間を設けている。使用について、運営側から非難はしないそうだ。いきなり完全な使用中止は厳しすぎるという観点もあるが、なにより重視するのは「なぜスマホを使いたくなったか」を問う子供自身の振り返り。目の前で話せる友達がいるにもかかわらず、スマホを使った気持ちを分析してほしいという。
合宿地となる兵庫県の西島 提供:兵庫県

合宿地となる西島 提供:兵庫県

子供だけでなく大人側も考える機会に

計画発表後、青少年課にはマスコミからの問い合わせが相次いだ。しかし、6月17日時点で20人の定員に応募は数人ほど。ほとんどが子供を心配する保護者からの応募である。担当者は「保護者から子供に勧めるハードルが高いのかもしれない。学校側からも勧めにくい部分があるだろう」としたうえで、「今回の合宿は子供だけでなく、(ネット依存について)大人側も真剣に考えることに意義がある」と話す。「現代の日常生活で完全にやめなさいと言うつもりはまったくない。どうすれば適切な距離を保って使えるかを考えるきっかけになってほしいんです」と力を込めた。申し込みは6月30日まで。

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