HOME特集 水道水も受賞するモンドセレクション、どこでも見かけるワケ

水道水も受賞するモンドセレクション、どこでも見かけるワケ

漆舘たくみ

2016/05/29(最終更新日:2020/01/23)


このエントリーをはてなブックマークに追加

shutterstock

国内10例目の水道水受賞

このほど、千葉県習志野市の水道水が、国際品評機関「モンドセレクション」で金賞に輝いた。もちろんこれは喜ばしいニュースであり、同市による水質維持の努力が証明された格好だ。
提供:習志野市

提供:習志野市

しかし、「この前もどっかの水が受賞しなかったか?」と思う人も多いはずだ。これまでに県庁所在地だけでも大阪や松江、富山、福島の4市の水道水が受賞し、習志野市で国内の水道水認定は10例目となる。水道水に限らず、「モンドセレクション受賞」を掲げる商品はビールから菓子類まで至る所で存在する。なぜ、こんなに数が多いのか。まさか本当に、巷がうわさするようなお金を積んでもらう賞なのだろうか?

コンクールではなく、あくまで品質証明

モンドセレクションの日本語版公式サイトによると、同賞は1961年に当時のベルギー経済庁により創設され、ブリュッセルに本部を置く。世界中の市販品を審査対象とし、1社から複数の応募も可能。現在は6部門があり、それぞれ一定の基準をクリアした商品すべてに、得点に応じて賞を認定している。すなわち、コンクールのように1部門で1品を選ぶ方式ではないのだ。同一ジャンルでいくつもの最高金(90点以上)、金(80~89点)、銀(70~79点)、銅賞(60~69点)が出るのは、このためである。
出典元:123RF

イメージ画像 出典元:123RF

同サイトなどによると、「化学そして法規重視のアプローチ」をテーマに、成分表示の正しさや規格への適合などを審査。審査員グループ約70人には日本人もいる。採点基準の詳細は非公開だが、決して味の良し悪しだけで判断しないという。他に比べて格段に優れる証ではなく、あくまで対象品の高品質を証明する賞なのだ。ちなみに、連続で受賞し続けると3年や10年などの節目に、継続的な品質維持への表彰として特別なトロフィーが贈呈される。

お金を積めばの悪評、なぜ?

日本には、モンドセレクションの応募書類の作成や授賞式の旅行手配などを代行する「公認エージェント」が数社ある。取材に協力して頂いた、ある代行社の幹部は「お金で受賞できるというのは、まったくの誤解」とうわさを否定する。そのうえで、うわさの原因をみられる2点を指摘した。
イメージ画像 出典元:123RF

イメージ画像 出典元:123RF

1つ目は、一部の代行社による価格設定だ。「獲得した賞に応じて、代行手数料を設定する社があるようです。もし受賞しなければ安く済むと売り込むらしいです」。つまり、位が高い賞を獲ると結果的に手数料が高くつくため、お金を出せば高い賞をもらえるという早計につながるという。2つ目は、申請料が必要な点だ。日本円では、1品当たり約15万円となる。「似たような賞のミシュランと違い、審査にお金が掛かる点が誤解の元ではないでしょうか」と推測する。「弊社にも、『いくら払えば最高金賞が獲れるんだ』といった話が来ますが、すべて断っています」と切実に語った。

受賞品約8割がアジア、もしや日本?

モンドセレクションでは毎年、87か国以上から3200品以上の応募があるという。現在、公開中の2015年度の統計によると、受賞数が圧倒的に多いのはアジアだ。結果公表を許可している1008社2595品のうち、アジア出品は821社2072品と8割以上に上る。次点の欧州の受賞数は127社290品であり、アジアの突出ぶりが分かる。
イメージ画像 出典元:shutterstock

イメージ画像 出典元:shutterstock

公式の受賞統計では、国別の正確な受賞数を公表していない。代行社の幹部はあくまで推測と前置きし、「2008年度以降、急にブームになって日本からの出品が増えた感はある」と語る。確かに、「受賞者の声」の掲載企業には日本名を多く発見でき、審査風景の映像にも日本語の段ボールがいくつも写っている。同社の推定では創設から40年以上、日本の出品数は緩やかな増減の繰り返しで、特段に多い傾向はなかったそうだ。08年度は国内飲料メーカーが積極的な受賞PRを始めた時期と一致するといい、「日本人特有の評判ならば出してみようという風潮になったのでは」と分析した。

蛇口から直接飲める水道水

公式サイトの「受賞の利点」では、品質向上への貢献やマーケティング効果を挙げている。正体不明の怪しい制度ではなく、「詐欺まがい」「金を払うだけでいい」といった悪評は的外れだ。習志野市企業局は、取材に「お墨付きを得ることで水道水離れを止めたかった。蛇口から直接飲めることを証明できた」と胸を張る。日本の水道水が10か所も受賞した実績は、誇ってよいだろう。本年度の受賞式は5月30日、ハンガリーの首都・ブタペストで開かれる。

hatenaはてブ