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「心の病を理解してもらえるか実験したかった」実体験を描くフリーペーパー作者の思い

ONLY FREE PAPER

2017/08/31(最終更新日:2017/09/02)


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『ゾンビ道場』作者のTokinさん

フリーペーパー専門店「ONLY FREE PAPER」スタッフが、数ある作品の中から特に気になるものを選出し、作者にお話を伺う連載「フリーペーパー学」。第4回目は、フリーペーパー『ゾンビ道場』を制作する、イラストレーターのTokinさん。双極性障害(躁うつ病)と解離性同一性障害(多重人格障害)を抱えながらもイラストレーターとして活動され、時には「生きづらさ」をテーマとしたイベントやテレビなどへの出演も積極的にこなす彼女。そのバイタリティはどこから生まれるのか。病気のこと、フリーペーパーのこと、突っ込んだ事も色々伺いました!

ゾンビ道場とは?

IMGP0188「重い内容、軽いノリ」をモットーに制作される手書きのフリーペーパー。思わず手に取ってしまう可愛らしいイラストと対をなす波乱に富んだ日常が記されています。2011年に創刊し、現在は21号まで発行されています。ちなみに名前の由来は、躁うつや入退院を繰り返すご自身を【ゾンビ】に例え、皆で精神を鍛錬する場としてイメージしたのが【道場】とのことです。なかなか奥深い!!

心の病を理解してもらえるのか、フリーペーパーで実験してみたかった

−−現在、精神科に通院されていますね。病気の発覚から今に至るまでの経緯を教えてください。
病気に気づいたのは、高校生の時です。小さな不調が続いて、いろいろな病院で診てもらったのですが原因がわからなくて……。ある時に、ひどい貧血のようなパニックがきたんですね。その時に「あっこれは内科じゃなくて、精神科の領域だ」って思ったんです。それから精神科に通い、双極性障害と解離性同一性障害だとわかるのに10年くらいかかりました。
−−フリーペーパー『ゾンビ道場』を作るキッカケはなんでしょうか。
入退院を繰り返すようになり、以前から頂いていたイラストの仕事をお休みすることになってしまいました。そうしたら時間を持て余してしまって(笑)その時に、ふと高校生の時に見たり作ったりしていたフリーペーパーのことを思い出して作ってみようと思ったのがキッカケです。あと、もう1つの動機として「実験をしてみたかった」というのがあります。入院中に知り合った同じ病気や境遇の人たちから「(病気について)わかってもらえない」という言葉を頻繁に聞きました。わかってもらえないなら、わかってもらえるために自分がメディアになって発信してみようと思ったんです。
−−自身の経験や思いを発信することに抵抗はありましたか。
壊したらまずいような仕事上の人間関係もなくなってしまったので。そして、見栄を張るより弱みを見せてしまった方が仲良くなれると思っているので、発信することに抵抗はありませんでしたね。直接伝えていくのは無理だったと思いますが、紙を通じて伝えていくのはできると思いました。
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笑っていいのか戸惑うが、クスッと笑えるのもゾンビ道場

「色んな人に見て欲しかった」というゾンビ道場は病院やカウンセリング施設だけではなく、町の本屋や雑貨屋にて配布中です。

あえてマイナスな部分を書くことで前向きになれた

−−『ゾンビ道場』を描くことは、Tokinさんにどのような精神的影響をもたらしましたか。
自分のマイナスな部分を書いてみると自然と解決策を考えるようになり、問題点を改善しようという主体的な意思が出てきたような気がします。以前は自分の欠点に気付くと、それだけで気が重くなっていたので。あと、何より、絵や言葉や漫画を描くことにめちゃくちゃ自信が付きました。
−−過去の作品を読み返しますか?読み返した感想はいかがですか。
自分は不真面目だといつも思っているんですが、紙面をみるといつも必死なので「私って真面目じゃん」と安心します。と同時に「心配しすぎるから心配になるんじゃないか?」いう気もしますが、たぶん性格なので仕方ないです。vol.1〜6あたりは、状態が不安定でかなり家族に迷惑をかけていたので、ひたすら「皆さんごめんなさい」という感じです。それから、イラストのスキルが上がっているのが目に見えるのが嬉しいです!

過去の作品を読み返すTokinさん

−−実験結果(読者の反応)はいかがでしたか。
色々な反応がありましたが、概ね好意的なものでしたね。もっと見世物的に扱われることを想像していたので意外でした。読者の方からご自身の悩みや心配事を話してくれることがよくありますし、お子さんのメンタルについて親御さんからご連絡いただいたりすることもあります。そもそも(病気のことを)分かってもらえるかどうかの実験はリアクションありきだったので、とても嬉しかったですし、作っていくうえでのモチベーションにもなります。
−−好意的なリアクションを得られたとわかった後も、発行を続けるのはなぜでしょうか。
単純に作るのが楽しくなってしまったのと、日常で大変なことがあっても書き出してしまうとスカッとするということが分かったので(笑)それと一貫して言いたいのは、病気のことを知ってもらうこともそうですが、当事者の実態を知ってもらいたいというのはあります。私なり彼らが常に絶望の中にいて四六時中塞ぎ込んでいるわけではないということ。「克服してハッピー!!」ということではなく「ハッピーとまでは言い切れないけどまあ悪くはないよね」という日常が発信されていることは意味があるんじゃないかとは思っています。

言えるような社会にするために言い続ける

−−今後の目標は?
病気について言えないことでとても辛い思いをしてきたので、私の絵やゾンビ道場を見て「言ってみようかな」って思う人が増えれば嬉しいし、言えるような社会になればいいし、そのために私は発信し続けようと思っています。あと、本出したいです(笑)。
非常にタフな状況の中、ご自身をさらけ出し、道を切り開いていくという姿勢は何かにつまづいたり立ち止まっている人にとってのヒントとなるものがあるような気がします。今後もゾンビ道場及びTokinさんの活動は注目していきたいと思います。また、9月には個展も開催されます。こちらもぜひ注目です!!こちらのインタビューのフルバージョンはONLY FREE PAPER HPにて公開中です。過去の連載はこちら↓ofp_banner01※掲載当初、双極性障害(躁うつ病)とうつ病を混同した文章がありました。正しくは2つとも異なるものです。お詫びして該当部分を訂正いたします。

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