HOME特集 24歳以下の会費を“100円”に!立川の映画館シネマシティで「次世代映画ファン育成計画」が始動

24歳以下の会費を“100円”に!立川の映画館シネマシティで「次世代映画ファン育成計画」が始動

長澤まき

2018/12/22(最終更新日:2020/01/27)


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提供:シネマシティ

東京都立川市の映画館シネマシティが、若者向けの割安な料金プランを設定し注目を集めている。

シニア割を70歳以上24歳以下の有料会員費を割引

シネマシティは先日、新プロジェクト「次世代映画ファン育成計画」を始めると発表した。2019年4月1日から、シニア割を現在の60歳以上から70歳以上に引き上げ、既存の夫婦50割を終了。同館の会員制度「有料会員シネマシティズン」の6カ月分の会費(600円)を、24歳以下の観客を対象に100円にする。会員になると、入場料金の割引(平日1000円、土日祝日1300円)や1日早くWeb予約・窓口購入できるといった特典がある
出典:「シネマシティ」ホームページ

出典:「シネマシティ」ホームページ

ベテランファンに「新たなエンタメ」を提案

シネマシティ株式会社企画室長の遠山武志さんによると、プロジェクトは次世代の映画ファンを育てるという新しいエンタテイメントの提案だという。ベテラン映画ファンに払ってもらった一般料金分や有料会員の会費分を、学生や社会に出たての若い映画ファンに還元。「同じ映画館で、同じスクリーンを観ている、同じように映画を愛している若者のために何かをしてあげたい」という気持ち、そして愛する映画のために映画ファンができることを体現したという。「自分を楽しませるだけでは得られない充足感のある、新しいエンタテイメントだと思う」として、「ベテラン映画ファンの方にとって、これは『値上げ』です。ただし、意味のある『値上げ』です。」と説明している。

もっと何年か先の未来のために

斬新なプロジェクトは、どのように生まれたのか。「若者の映画館離れ」が取り沙汰されることがあるが、同館もそれを実感しているのだろうか?遠山さんは、そうではないと話す。
昨今は洋画・邦画ともに、アニメーションやマンガの映画化作品が大ヒットを連発しておりますので、全体的に映画の観客は若返っていると思います。特にそれらのジャンルのファン層に支持していただいているシネマシティでは、シニア層より20代以下のお客様のほうが圧倒的に多いですね。確かに「映画館に行く人/行かない人」のギャップは広がってはいますが、すでに極端な「若者の映画離れ」が起こっているとは言い切れないと思います。ですので、今回は近年の不安要素から行うのではなく、ずっと前から行いたかったことを諸々積み重ねてきてようやく形にしようとしているところです。そして、もっと何年か先の未来のために行うことです。
提供:シネマシティ

提供:シネマシティ

とにかくお客様に楽しんでほしい

「映画というエンタテイメントを売っている商売ですので、隙あらばエンタテイメントするべきだと常々考えています」と遠山さん。独自の企画上映はもちろん、WEBで予約することが楽しくなるような仕掛けや、上映日時の情報を笑える文章を添えて宣伝するなど、とにかく作品の上映以外でもお客様に楽しんでほしいと考えていると力を込める。
では、エンタテイメントには何があるか、エンタテイメントとは何かと考えていく中で、「貢献」というのはすごい大きな幸福感と満足感を与えてくれるものだと。僕自身、試写室で名刺を出せばほとんどの映画を観せてもらえますし、シネマシティで上映している作品は全部無料で観ることもできますが、必ずお金を払って観ます。仕事上必要な時以外は、試写はなるべく行かずにいろいろな劇場で観ます。それはわずかでも映画に貢献したいからです。ことさら美しい話をしたいのではなく、なにか特別に好きなものをお持ちの方なら、多くの方が自然に感じる気持ちではないでしょうか。特に大人になればなるほどです。たとえば『この世界の片隅に』のクラウドファンディングに想定よりもずっと多くのお金が集まったのは、なにも本当にエンドクレジットに名前を載せてほしいわけではなく、原作のこうの史代さんや片渕須直監督を応援したいとか、この作品を広く知ってもらいたいという気持ちであって、(寄付者の)名前なんか載らなくてもほぼ同じだけの金額が集まったのではないでしょうか。企画の発案などという大層なものではなく、自分の普段の生活からこぼれでた考えというだけです。
提供:シネマシティ

提供:シネマシティ

コンセプト「映画ファンをこそ大切に」

料金の変更という映画館としては大変な挑戦に、なぜ踏み切るのか?
シネマシティはこれまでに、ポイントカードもやめましたし、レディースデイもやめています。今件よりもむしろこちらのほうが反応や影響は大きかったと思います。ですから、ことさら今回が特別なものであるわけではありません。これからも段階的に、さまざまなサービスの見直しは行っていくことになると思います。シネマシティズンという有料会員制度のコンセプトは「映画ファンをこそ大切にする」というものなので、コンセプトの要求にしたがってより純粋な形への実現を進めております。
同プロジェクトの発表後、ベテランファンからは厳しい声がたくさん届いているそうだ。
まだ実施はずいぶん先ですのでそれからが本番かと思いますが、すでにたくさんのお叱りをいただいております。ただ、シネマシティズンという代替の割引制度がありますので、今まで通りの価格でご覧になりたいというお客様はそちらをご検討いただければと存じます。しかしながら、その方の鑑賞状況によっては必ずしも安くなると限らないのが申し訳ないところです。

「1800円でもむしろ安い」と感じてもらう

同館は、正規料金でも充分に満足してもらえるような映画館を目指しているという。1回の上映に時間もコストもかかるという音響を重視した「極上音響上映」や「極上爆音上映」でも追加料金を取っておらず、通常の上映でも全作品を映写技師が細やかに調整。例えば、今年の「名探偵コナン ゼロの執行人」の上映では、特別な音響であることを映画館側からは一切謳わなかったが、耳の良いファンのクチコミだけで、全国トップクラスの成績を上げられるほどの支持があったそうだ。
音響の専門家ではありませんが、これまでに何百回と一流の音響家や映画の音響監督の調整に立ち会ちあうという潤沢な経験で育った、若く優秀な映写技師がシネマシティにはいます。なかには、謳っていないだけで「極上」の冠をつけても恥ずかしくないクオリティに仕上げられている上映もあります。つまり割引方法をあれこれ模索するよりも、1800円でもむしろ安い、と感じていただけることを目指すのが、シネマシティが向かうべき方向だと考えています。
▼同館の音響設備(左:ラインアレイスピーカー、右:studio subwoofer)
提供:シネマシティ

提供:シネマシティ

同プロジェクトに込める思いを、こう話す。
3000円を握りしめた映画ファンの若者が、これまでは2本だったのが、これからは3本観られる。映画館の売上げは変わらないけれど、その若者の映画人生は豊穣になったはずです。それが良い方向へなのか、良くない方向へなのかは観た作品にも寄りますが(笑)これが本件の成功のビジョンです。失敗とは、観る回数が減った場合です。売上面では、観る回数が減っても、観る人数がそれ以上増えれば成功ですが、これは2次的です。シネマシティズンという有料会員制度は、たくさん観れば観るほどお得になり、映画人生がより輝くように設計しています。安売りではなく、繰り返し観たい、もっといろいろ観たいという気持ちをさまたげるハードルを下げることを意図しております。この設計思想が、今回のことでより鮮明になったら良いと考えています。

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