HOMEインタビュー 「起業とは、一生終わらない障害物競走」起業家を育む『ボーダーレスアカデミー』卒業生が挑戦を続ける理由

「起業とは、一生終わらない障害物競走」起業家を育む『ボーダーレスアカデミー』卒業生が挑戦を続ける理由

白井恵里子

2021/03/07(最終更新日:2021/03/07)


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西原総司さん/提供:ご本人

何か解決したい社会問題があったとして、その解決のために策を練り、そして実際に行動に移すということは容易ではありません。しかも、その途中にはあらゆる障害が立ちはだかり、ゴールが見えない状況に陥ってしまう可能性もあるのです。

そんな中でも、目的意識をしっかり持ち続け、目標に向かって突き進んでいくためには、どのような考え方・姿勢で臨めばよいのでしょうか。

「好きという気持ちがあるからやっていけるんです」そう明るく語ってくれたのは、社会起業家養成所「ボーダーレスアカデミー」第1期生の西原総司(21)さん。

ボーダーレスアカデミー卒業後はケニアの孤児院運営支援を目的に養鶏委託事業に挑戦、帰国後はクラフトビール販売を手掛ける株式会社Story Agentを立ち上げるなど、志高いパワフルな起業家です。

過去には失敗も経験したという彼が、挫けずに次へ次へと行動を起こし続けることができるのはなぜなのでしょうか。西原さんを取材しました。

本格的な起業カリキュラムを提供する養成所

株式会社ボーダレス・ジャパンが運営するボーダレスアカデミーは、「解決したい社会課題がある」「ソーシャルビジネスや社会起業に関心がある」といった人に向けた社会起業家養成所。

第一線で活躍する現役経営者が講師を務め、実践的な社会起業プログラムを提供しています。

2018年10月の開校以来、計348人が受講したという実績を有しており、3月は第5期が開講。起業のイロハを学ぶだけでなく受講者のビジネスプラン完成まで伴走するという本格的な起業カリキュラムとなっています。

「海外・貧困・起業」検索でボーダレスアカデミーにヒット

西原さんは、中学を卒業後、土木関係の仕事や美容師などを経て、17歳の時にアフリカ11カ国を旅してまわりました。

18歳で帰国し、19歳でボーダレスアカデミーに第1期生として入校。卒業後、20歳でケニアへ渡航し、孤児院の運営支援のため養鶏委託事業を手がけましたが、鳥インフルエンザの蔓延により鶏がほぼ全滅に。

止む無く一旦事業を引き上げ帰国後、2020年7月に株式会社Story Agentを創業しました。

-----そもそも、なぜボーダレスアカデミーに入校しようと思われたのですか?

西原さん:アフリカから帰国後、ある企業のインターンシップに参加していたのですが、それが終了する頃に「ケニアで出会った現地の友人と一緒に何かしたい」「自分が解決したい課題は何だろう」と考え始めるようになりました。

アフリカ旅行中に1年半ほど滞在していたケニアの有人島では、約7割が漁師として生計を立てていたにもかかわらず、彼らは1日1ドル以下で暮らす"絶対的貧困層"でした。そこで、彼らがもっと豊かに暮らすためにはどうしたらいいのか、ということを考えるようになったんです。

「海外・貧困・起業」といったキーワードで検索をかけたところ、ボーダレスアカデミーの情報にヒットして、「これだ!」と思って入校を決めました。

提供:ご本人

受講を通じて明確化された問題意識

ボーダレスアカデミー(第1期)では、およそ5カ月にわたり起業プログラムを受講。約20人の同期と一緒に、経営者や株式会社ボーダレス・ジャパンの田口社長からビジネスについて学んだといいます。

-----受講期間中、特に印象に残っていることは何ですか?

西原さん:それこそ毎日が新鮮で刺激的だったのですが、なかでも(代表の)田口さんのまっすぐな姿勢が印象的でした。

例えば夜9時頃に授業が終わり、その後日付が変わるぐらいまで、みんな自分のビジネスプランを練っていたんですよね。

田口さんはご自分の仕事を終えた後、僕たちのビジネスプランにアドバイスをくださったりと、とても熱心に伴走してくださいました。

その、見返りを求めない"giveの精神"から大きな影響を受け、今でも僕の心の中に残っています。

-----そのようにして完成したビジネスプランが、養鶏委託事業だったのですか?

西原さん:はい、10個ぐらいプランができては潰してを繰り返し、最終的にこの事業に辿り着きました。

当初は、ケニアの漁師の人々の暮らしをよくするため、「湖に魚がいないからでは?」「卸会社が適正価格で買い取っていないからでは?」と考えて魚の加工事業を行うプランなどを検討していたのですが、養成所で「本当にそれが課題なのか?」「実際はそこではなく、もっと根本的な問題があるのではないか?」と突き詰めた結果、一番の課題として「初等教育の必要性」が浮き彫りになったんです。

子どもや教育といったキーワードで調べていくと、(滞在していた)島には約1500人の孤児がいることが判明。しかも十分な教育を受けられている状況ではありませんでした。僕のゲストファーザーが孤児院の運営代表者を務めていたこともあり、孤児院の運営を支援することで島の問題を解決したいと思うようになりました。

-----養鶏委託事業で孤児院を支援するということですか?

西原さん:はい、孤児院の子どもたちが鶏を育て、産まれた卵の販売を通じて得られる資金を運営費に充てるという事業です。

でも、昨年1月頃、鳥インフルエンザが蔓延してしまい、250羽いた鶏がほぼ全滅に。

ビジネスとして収益を出すためには最低でも200羽は必要だったので、事業は撤退せざるを得なくなってしまいました。

提供:ご本人

ケニアの事業に再挑戦するための創業

帰国後はクラフトビールの販売を手掛ける株式会社Story Agentを創業した西原さん。一見、ケニアの貧困支援とは関係のない事業に思えますが、実はそうではありません。

-----なぜ株式会社Story Agentを創設したのですか?

西原さん:養鶏委託事業は、クラウドファンディングで資金を集めて実施したものだったので、失敗したときに(資金がなく)立ち上がることができなかったんです。

この経験を活かして、「他にもキャッシュポイントをつくっておかなければ」との想いから、他の事業を立ち上げることにしました。

クラフトビールの販売事業を選んだのは、単純に自分がビール好きだからです。この事業で培う人脈なども、今後ケニアでの事業に活かすことができると思っています。

提供:ご本人

「後悔しないように」好きなことをやる

これまでの経験、出会い、学び、すべてを吸収して次へ次へと行動を起こし続ける彼の背景には、どんな考え方があるのでしょうか。

「親にはのびのび育ててもらったので感謝しています」と笑いながら話す彼は、意外な過去についても語ってくれました。

西原さん:15歳からバイクに乗っているんですが、過去に2回も事故に遭った経験があります。

また、友人を2人、バイク事故で亡くしています。このことから、僕にとって「死」は身近なこと。だからこそ、「後悔しないように」という意識を持って毎日を過ごしています。

あとは、ケニアの貧困支援は「ケニアの友達が大好きだから」やっていることだし、クラフトビールの事業も「ビールが好きだから」やっています。"好きなこと"が原動力なんです。

一歩踏み出せないうちは、踏み出さないほうがいい

今後は、魚の皮を有効活用した「フィッシュレザー」の事業展開や、養鶏委託事業のリベンジもしたいと展望を語る西原さん。

-----起業などやりたいことがあるけれど一歩を踏み出せないという同世代にメッセージがありましたらお願いします。

西原さん:少し尖った言い方かもしれませんが、一歩踏み出せないうちは、踏み出さないほうがいいのではないかと思います。

僕の場合「好きな気持ち」でやっているので、「意識して踏み出す」というより、気が付いたら踏み出しているという感じなんです。

なので、「自分は何が好きなのか」を知ることが大切なのではないでしょうか。

起業って、次から次へと問題が起こっては解決して…の繰り返しなので、一生終わらない障害物競走をしているのと同じ。好きじゃないと、やっていけないですよね。

取材の様子(オンライン)

「大好きなケニアの友達がもっと豊かに暮らせるように…」この純粋な想いこそが、彼が挑戦を続けるたったひとつの理由。

全てはケニアの貧困層を支援するために、挫折や失敗もすべて糧として前に進み続ける彼の心には、養成所で感じたという"giveの精神"がまさに宿っているのではないでしょうか。

出典元:ボーダーレスアカデミー
出典元:株式会社Story Agent

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