「起業したい」「自分ならではのビジネスに挑戦したい」と考えているが、具体的に何をどうすればいいのか、どんなビジネスを始めればいいのか分からず、悩んでいる若手ビジネスパーソンは多いのでないだろうか?
立命館アジア太平洋大学(以下、APU)4回生の内山浩輝さんは、起業を志したものの何に取り組むべきか悩む日々を過ごしていたが、縁があって“林業”と出会い、林業スタートアップ「konoki」を創業。日本の林業を活性化すべく、共同代表として、三重県の林業家を含めた3人でタッグを組み事業を展開している。
“日本の林業を活性化させる”という目標にどのように出会い、事業に取り組むようになったのか?内山さんに取材した。
木に新しい価値を創る「konoki」
konokiは、林業家と大学生の異色コラボで2020年3月に結成した林業スタートアップ。内山さんと長崎大学大学院に通う陣脇さん、そして三重県に住む林業家の三浦妃己郎さんが共同代表を務めている。
国産材を活かして木に新しい価値をつくり、まったく新しい高収益型の木の消費方法を確立へ。そうして林業が潤うことで、雇用が生まれ、山も管理されて土砂災害も減り、木の恩恵を受けて暮らしが豊かになる、win-winな循環を作ることを目指している。
現在は、コロナ禍のストレス解消グッズとして、天然木材100%のバスアイテム「おうちでヒノキ風呂」をクラウドファンディングサイトMakuakeにて販売中。
自宅で簡単にヒノキ風呂の雰囲気と香りを楽しめつつ、日本の林業も応援できる商品だ。
自問自答する日々の中、新たな志に出会う
内山さんは1998年生まれの22歳。APUの4回生で、同大学の学生起業を支援する「APU起業部」に所属している。
父親も祖父も自営業という経営が身近な環境で育ったが、大学入学時は学生起業家になろうとは全く考えておらず、国際貧困や人道支援を志していたという。同大学に進学したのも、世界92カ国と地域から学生が集まるグローバルな環境に惹かれたからだ。
しかし、国際的な環境で揉まれる中で次第に、「日本でぬくぬくと生活している自分が国際貧困や支援に取り組むのは、自分のエゴなのではないか」「今自分がやる価値は何なのか」と考えるようになり、国際貧困・支援の志を断念。
これまでずっと抱いていた志がなくなり、焦りや劣等感を感じ、何を目的に突き進めばいいか自問自答する日々を過ごす中で、自分自身と向き合い、セミナーやインターンに足を運んで学校外の人々と積極的に会い、起業家を志すようになったという。
-----学生起業に踏み切った理由を教えてください。
内山さん:学校外の人と交流することで、「自分が社会的にどのような評価をされるのか」「実際に社会人として企業に属している人は、どういう思いをもって毎日働いているのか」を学ぶことが出来ました。
そうして、他にもいろいろな生き方をしている人々に出会う中で、起業家という生き方は純粋にカッコいいと感じ、「自分もこういう生き方をしたい」「自分が社会にとって良いと思えることを、たくさん作り続ける生き方をしたい」という新たな志が芽生え、起業したいと考えるようになりました。
-----起業・行動するにあたって、どのようにして自分を奮い立たせましたか?
内山さん:「行動に移さないと腐ってしまう……」という思いがありました。
そうして行動に移すことで、新しい発見や、自分がレベルアップや進歩したという感覚を楽しむことができました。
一番困難だったのは、目標と出会うこと
ただ、起業すると決めて最初に直面したのは、「起業したいが、やりたいことが見つからない」「何をすれば成功するのか」という悩みだったという。
-----なぜ、縁もゆかりもなかった林業で起業したのですか?
内山さん:学内のプロジェクトに参加するなどの活動を続けている中で、起業部のメンターでもあるAPU職員とのつながりで林業家の三浦さんと出会い、木の面白い活用方法や林業の抱える問題をリアルに教えてもらいました。
自分の「社会にとって良いと思えることを作り続ける」という志を実現するにあたって、林業というフィールドでの挑戦は社会的にも意義があるし、自分にとっても面白い挑戦になると思い、そこからどんどん林業への関心が膨らみました。
共同代表を務める林業家の三浦さんは三重県在住のため、通常はオンラインのやり取りでビジネスを進めているという。
-----年齢も住む場所も違う、立場の違う相手と一緒にビジネスを展開するにあたって、コミュニケーションで気を付けていることは?
内山さん:林業家の方たちの思いを尊重するように気を付け、商品にもその思いを乗せて消費者に届けることを忘れずに活動しています。
そのために、昨年の秋には三重県に短期滞在して、実際に現地の林業家の人と過ごし、チェーンソーを持って働かせてもらったり、夜には三浦さんからさまざまなレクチャーを聞いたりと、自分がその現場にいって体験することを大切にしました。
今も分からないことだらけの毎日
----起業を志してからこれまでにどのような困難があり、それをどう乗り越えましたか?
内山さん:商品の作り方やものづくりに関連する法律など、分からないことだらけなので、今も毎日が困難です。
ただ、今ある困難は、自分が足を運んで先輩起業家や専門家に話を聞けば、ある程度良い選択肢を提供してもらえます。
これまで、分からないなりにも行動し続けていると、勝手に縁がやってきて、運が見方してくれました。また、意味がないと思ったことでもやってみたら、それが後で意味のある出来事に繋がったこともありました。
やりたいことがない、やり方がわからないという時でも、何でもトライしてみることが大事だと思います。
2026年までの上場がひとつの目標
konokiは昨年、クラウドファンディングにて、木の幹からお茶をつくるプロジェクトの資金調達を実施。153人からおよそ172万円を超える支援が集まった。
また、内山さんは同年12月には、立命館・社会起業家支援プラットフォームRIMIX主催「総長PITCH THE FINAL 2020」に出場。「Sony Startup Acceleration Program賞」を受賞した。
-----これから、どのようなことに挑戦したいと考えていますか?
内山さん:konokiでは、2026年までに上場することを一つの目標としています。最終的には、「木に関するグローバル企業と言えばkonoki」という立ち位置を築いて、林業に貢献したいです。
自分の人生としては、“社会にとって価値があるモノを残し続ける生き方”をしたいという思いのもと、林業にとどまらず、社会的に歪みがあるさまざまな領域において、何か貢献できるような生き方をしたいと思っています。
コツコツ取り組むことが結局は近道に
-----最後に、これからのキャリアづくりに悩んでいる若手ビジネスパーソンに向けてアドバイスをいただけますか?
内山さん:やりたいことをするためには、やりたくないことや無意味なことをすることも必要だと思います。
自分は、“やりたくないことのはずなのに、それでも楽しいという循環”をつくれた時に結果がでるのではないかと思って、日々行動しています。
また、「志望した就職先に行けなかった」とか「本当は起業したかったけど、とりあえず就職した」など、たとえ現在の自分が置かれている環境が不本意だったとしても、「それはそれで一つの縁」と考えて、その職務を全うすることも大切だと思います。
それがきっかけで、もしかしたらいいビジネスに巡り合うかもしれないし、人生に良いきっかけを与えてくれる人につながっていくかもしれませんから。
目の前のことにコツコツと取り組むことこそが、結局は近道なのではないかと思います。
自分の道が分からなくなったときも歩みを止めなかったことで、新たな志とビジネスに出会った内山さん。
たとえ今は明確な目標やビジネスがなくても、自分が置かれている環境の中で行動の範囲を広げて行動し続けることで、将来のキャリアに繋がる縁やビジネスに繋げていくという生き方は、キャリアに悩む若手ビジネスパーソンの参考になりそうだ。
出典元:Makuake/【新感覚!】天然木材100%のくつろぎバスアイテム「おうちでヒノキ風呂」
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