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民間によるベーシック・インカムに!「継続支援型クラファン」から学ぶ、“WINWINなビジネス”のつくり方

長澤まき

2020/12/14(最終更新日:2020/12/14)


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提出:MotionGallery/大高健志代表

コロナ禍により、文化施設やクリエイターにとって厳しい状況が続く中、永続的なクリエイティブ活動の基盤をつくるための新たな仕組みを構築した企業がある。

株式会社MotionGalleryは12月1日(火)より、継続支援型のクラウドファンディング・プラットフォーム「BASIC by MOTION GALLERY」を開始した。

“民間によるベーシック・インカム”を目指す、参加する誰しもにメリットがあるWINWINなビジネスモデルだ。同サービスを通じて、文化的なエコシステムを基盤から支え、クリエィティブでサスティナブルな社会づくりにさらにコミットしていくという。

全員にメリットがあるビジネスモデルをどのようにつくったのか?大高健志代表に取材した。

継続支援でクリエィティブの基盤を支える

「BASIC by MOTION GALLERY」は、月額で資金を募ることで、劇場などの文化施設やクリエイターに毎月継続的に資金を調達し、クリエイティブな活動の基盤を支えるサービス。

支援を受ける側は、毎月インカムがあることで、創作活動やリサーチ・ディベロップメントに注力することが可能に。支援するメンバーは、彼らの活動を継続的に応援できることに加え、オンラインセッションへの参加や制作中の作品の閲覧などのお返しを受け取ることができる。

投資や融資ではないため、フラットな関係を築くことが可能。既存のファンとの継続的なコミュニケーションから関係性を深め、一緒に目標をつくる場所になることも期待できる。

10年の経験を活かし、新たな挑戦

同社は“民間による文化助成金”とも言える購入型クラウドファンディング「MOTION GALELRY」を10年にわたり運営。今回、その経験を活かし、次なるチャレンジとして、同サービスを起動した。

代表の大高健志さんは早稲田大学政治経済学部を卒業後、2007年に外資系コンサルティングファームに入社し、戦略コンサルタントとして事業戦略立案・新規事業立ち上げ等のプロジェクトに従事。

その後、東京藝術大学大学院に進学。制作に携わる中で、 クリエイティブと資金とのより良い関係性を構築する必要性を感じ、2011年にクラウドファンディングプラットフォーム「MOTION GALLERY」を設立。以降、20億円を超えるファンディングをサポートしてきた。

大高代表:文化活動や公共活動は経済的なモノサシでは測れないものも多く、その意義·価値に反して資金を獲得しづらい状況にあります。

それをカバーするための制度や助成金も設けられていますが、日本においては十分とは言えません。また、制度的支援を得られたとしても、審査や評価を受ける過程で、本筋から離れた部分で消耗してしまうことも少なくありません。

そのような状況を打破する手段として、クラウドファンディングはその力を発揮してきました。MOTION GALLERYも購入型クラウドファンディングのプラットフォームとして、社会的インパクトの強いプロジェクトをこの10年間で数多く成功させています。

今年の2月以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、さまざまな事業者が廃業の危機にさらされ、中には実際に廃業に追い込まれた事業者もいたという。

同社はそうした状況を受けて、プラットフォーム手数料を0%に引き下げる形で、彼らを支援するプログラムをいち早く実施。あわせて、自らが発起人となり文化施設を守るソーシャルムーブメントに着手するなど、文化表現活動およびソーシャルグッドな活動における新しい日常への移行・実現をサポートしてきたそうだ。

大高代表:しかし、「プロジェクト」として芽生える前の企画開発の期間を支えるものは、依然として乏しく不安定です。このことはクリエィティビティの土壌をも痩せさせることに繋がります。

それゆえに、豊かな模索の時間を持てるような安定的な経済基盤と継続的なサポートが求められてきました。

このコロナ禍での経験を踏まえて、「BASIC by MOTION GALLERY」を起ち上げることにしました。

相乗効果を生み出す仕組みにこだわり

-----「BASIC by MOTION GALLERY」をつくるにあたってこだわった点を教えてください。また、それを実現させるために、どのような工夫をしましたか?

大高代表:プロジェクト型のクラウドファンディングであるMOTIONGALLERYとの共通の会員IDでシームレスな繋がりをつくるなど、両フェーズにもたらされる強い相乗効果を生み出す仕組みにすることにこだわりました。

そして、独自のオンラインシアターを持てるようにすることで、クリエイターが安心して自由に創作活動をメンバーと共有できるようにしました。

-----支援する側・される側の双方にとってメリットのあるビジネスモデルを、どのように作り上げましたか?

大高代表:ミニシアター・エイド基金や小劇場エイド基金、ブックストア・エイド基金などのコロナ禍でとりくんだ支援活動で獲られた知見や、現状把握によるものです。

提供:MOTION GALLERY/MOTION GALLERYプロジェクトページ

支援は単なる消費ではなく、託す思い

-----今回のような、WINWINのビジネスモデルを企画し作り上げるために、仕事をするにあたって、普段から心がけている行動や考え方はありますか?

大高代表:MOTION GALLERY が大切にしていること。それは、現代芸術家ヨーゼフ・ボイスが提唱したビジョンである 「社会彫刻」の概念の実現です。

MOTION GALLERY はクラウドファンディング黎明期であった 2011 年に誕生し、これまで映画、音楽、舞台をはじめとするアートから、まちづくりや場所づくりなど地域に向けた活動まで、さまざまなプロジェクトを応援してきました。

ひとりが勇気を持って立ち上げたプロジェクトに、誰かが共感し、支援する。クラウドファンディングに集まる支援は、単なる消費活動の結果ではありません。今より創造的な社会を一緒に実現するために託した想いであり、応援される人も応援する人もみな等しく、これからの未来をつくる“クリエイター“なのだと言うことができます。

クラウドファンディングを立ち上げることは、とても勇気のいること。同社はこれからも、一つひとつのプロジェクトが秘めている可能性を丁寧にすくい上げ、実現に向けて並走し、形にしていくという。

大高代表:何よりも、一人の思いや活動が社会をより良い場所へ変えていくことを、MOTION GALLERYは信じています。

みんなの思いや活動を形にし、創造的な社会を作り上げる活動全てがアートであるという芸術家ヨーゼフ・ボイスのビジョン「人間は誰でも芸術家である。」を具体化する場所。それが MOTION GALLERY です。

支援する側とされる側を分けて考えるのではなく、互いをこれからの未来をつくる“クリエイター”同士と捉え、それぞれの形でクリエイティブの未来ために貢献できる仕組みを作り上げたMotionGallery。

ただ消費するだけでなく、自らもその成長に貢献できる、共感の輪でつながる参加型のビジネスモデルは、物やサービスが溢れる時代のビジネスにおいて重要なキーワードになりそうだ。

出典元:BASIC by MOTION GALLERY
出典元:MOTION GALLERY

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