HOMEインタビュー 50万個売れたウェアラブルメモ「wemo」の企画担当者に聞く、既存商品から新シリーズをうみだす秘訣とは?

50万個売れたウェアラブルメモ「wemo」の企画担当者に聞く、既存商品から新シリーズをうみだす秘訣とは?

白井恵里子

2020/08/28(最終更新日:2020/08/28)


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今井裕平さん(提供:株式会社kenma)

株式会社コスモテックと株式会社kenmaは、シリーズ販売数累計50万個の書いて消せるウェアラブルメモ「wemo(ウェモ)」の新シリーズ「wemo #tag」および「wemo Stock & Flow」を12月に新発売する。

「wemo」は、「いつでも どこでも かける おもいだせる」をテーマとした、油性ボールペンで書いて消せる身に着けられるメモ。2018年の「日本文具大賞 機能部門」にて、優秀賞を受賞した。

既にヒットし世の中から認められた製品から、どのようにして新シリーズのアイデアがうまれるのだろうか。「wemo」シリーズの企画担当を手掛ける、株式会社kenmaの代表取締役・ビジネスデザイナーの今井裕平さん(39)を取材した。

提供:株式会社コスモテック

様々な製品開発を手掛けるビジネスデザイナー

今井さんは大学院を卒業後、24歳で建築設計事務所に入社。設計士として建物の設計業務に従事していた。

その後、大学時代の研究室の後輩と「kenma」という名称で、デザイン活動を開始。IBMビジネスコンサルティングサービス(現:日本IBM)や電通コンサルティングでのコンサルタント業務を経て、32歳で「kenma」を法人化し、現在に至る。

これまで、「wemo」をはじめとし、光や電波を通す金属調のインターフェイス素材「METALFACE」や頭と心の疲れをリセットする究極の日本茶エスプレッソ「MUTE」、ガラスや樹脂等に挟んで使うマグネットフック「MAGSUND」などの開発を手掛けてきた。

ウェアラブルメモ「wemo」(提供:株式会社コスモテック)

ふとした光景がきっかけでうまれた新シリーズ

12月に発売予定の「wemo #tag」シリーズは、リアルなモノにタグ付けできるツール。

WEBの世界では「#タグ付け」が行われ情報が整理されているが、リアルな世界でも「タグ」があれば簡単に整理される場面が多く存在するとして、"油性ペンでしっかり書いて、消せる"うえに見た目を損なわないデザインのプラスチック製タグを企画したという。

提供:株式会社コスモテック

「wemo Stock & Flow」シリーズは、用が済めば残す必要のない「Flow(フロー)」情報に特化したメモツール。

クリアフォルダやバインダーに、アイディアやメモをすぐに記録して、不要になったら消去して繰り返し使うことができる。手帳やノートの表紙内側に貼り付けて使用するSealタイプを使えば、メモ情報をStock(残すべき情報)とFlowに大別してスマートに管理することが可能だ。

提供:株式会社コスモテック

ー今回新シリーズのアイデアがどのようにしてうまれたのか、教えてください。

今井さん:「#tag 」シリーズは、とあるデザイン会社を訪問した時に、困っている女性スタッフの方を目にした光景がきっかけです。

そのオフィスは、ドキュメントボックスが全て同一デザインのもので揃えられていたのですが、中に何が入っているか分からず、全てのボックスを慌てて一つ一つ探している様子でした。

テプラみたいなものを貼れば解決するのですが、見栄えが悪くなるのは目に見えています。

見た目を損なわず、中に何が入っているか気軽に記載できるツールがあると良いのではと考え、「#tag」シリーズ を発想しました。

「Stock&Flow 」シリーズでは、2つノートを使い分けている人を目撃したのがきっかけです。

その方は2000円以上する高級ノートと、一冊100円程度のノートを2冊持っていました。

わざわざ2冊持つ必要がないのではと思ったのですが、高級ノートの方にはアイデアや考えなど、後から見返したい内容だけを書き、to doやちょっとしたメモ等、用が済めば必要なくなることはこの普通のノートに書くのだそうです。

だったら、その2つの役割をひとつのノートにできないかと思ったのが、「Stock&Flow」を思いついたきっかけのひとつです。

既存商品に「いかに新しい価値観を持ち込むか」

両シリーズとも、実際に非効率さを感じる場面から発想がうまれたという今井さん。

既に確立された既存商品から新シリーズをうみだす際には、どのようなことを意識し、大切にしているのだろうか。

今井さん:既存商品に「いかに新しい価値観を持ち込むか」を意識しています。

違う言い方をすると、既存商品の延長線上で企画しないことを大切にしています。

例えば、「wemo パッドタイプ」(ノートパソコンに貼って使用するパッド型メモ)は、「wemo バンドタイプ」(腕に巻いて使用できるメモ)の次に発売した商品です。

本来であれば「ウェアラブル」にこだわり、人が身につけられるプロダクトを出すのが延長線上の考え方だと思います。

しかし、パッドタイプは敢えて身につけるものではなく、パソコンやスマートフォンに貼れる製品を企画しました。

なぜならwemoの価値は身につけることよりも、メモをわざわざ携帯しなくてもよい点に価値を感じるユーザが一定層いることに気がついていたからです。

今回の新シリーズについても、考え方は同様だという。

既存のwemoシリーズにはない新たな価値観を持ち込んでいる一方で、「確固たる芯」が何であるかには最善の注意を払う必要があるそうだ。

提供:株式会社kenma

今井さん:「wemo」の場合、芯は2つあります。

ひとつは「社会に対する役割」です。

「記憶に対するストレスを軽減する」ことがwemoが考える社会に対する役割だと考えています。

例えば「wemo バンドタイプ」では、看護師等の現場最前線のワーカーやADHD等記憶に障害を抱える方の役に立つことができています。

もうひとつは「書き消しのテクノロジー」です。

既存シリーズは、wemoの製造販売メーカーであるコスモテックが独自のコーティング技術を開発し、油性ボールペンで書き消しができることを実現しました。

今回の新シリーズでも、これまでのコーティング技術を結集し、各対象ペンでの書き消しを実現しています。

最後にひとつ付け加えるとすれば、この「芯」は現状のものであり、これから更なるシリーズを展開するに当たって変わる可能性は十分にあるということだと今井さんは話す。

そしてこの変化を意思決定できることこそ、「wemo」の強みであり成功要因だと考えているという。

提供:株式会社コスモテック

アウトプットの質よりも数にこだわるべき

ー商品開発にあたって苦手なことや躓きがちなことはありますか?また、それをどのようにして乗り越えていますか?

今井さん:初めて見る人がどのように感じるか、思い通りに製品の良さが伝わるか、不安になることがあります。

その場合、様々な人に試作をみせてコメントをもらいます。

但し、コメントの内容にはあまり注目していません。ここを改善した方がよいとアドバイスが含まれることも多いですが、あまり参考にしていません。

それよりも、その人がどう感じているのか、理解するまでにどれくらいの時間、情報量を必要としていたのかを観察し、新商品の企画やデザイン、伝達方法を調整しています。

ー商品開発や企画・デザインなどを仕事とする若手ビジネスパーソンにアドバイスがあればお願いします。

今井さん:初めから上手くやろうとせず、アウトプットの質よりも数にこだわった方が良いと思います。

とにかく自らの選択で実戦の打席に立って、全力でバットを振る機会を少しでも増やすべきです。

ホワイトな働き方が求められる時代だからこそ、意図的に意識しなければ「効率」に流され、成長に必要な機会を失う可能性があります。

今井裕平さん(提供:株式会社kenma)

これからも、一部の人々にしか知られていないものづくり企業の尖った技術を活かして、世界中の人たちが驚き、役に立てる商品を生み出し続けたい、そして昔のウォークマンの様に日本を代表するフラッグシップ(看板製品)に仕立てあげたいと、今井さんは展望を語る。

「wemo」シリーズの今後の展開をはじめ、彼がうみだす未来の製品が楽しみだ。

出典元:WEMO

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