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リボンや水引にもなる「紐上のお香」が話題 時代に合った新しい香りを生み出す老舗企業の挑戦

長澤まき

2020/02/15(最終更新日:2020/02/15)


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老舗お香・線香メーカーが新たに発売した「紐(ひも)状のお香」が注目を集めている。

リボンや水引の代わりにもなる新しい発想のお香はどのように誕生したのか。株式会社薫寿堂(くんじゅどう)に取材した。

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自由な紐状のお香「AROMA Cord」

1893年(明治26年)創業のお香と線香メーカー・薫寿堂は1月28日、コットンの紐(ひも)でできた紐状のお香「AROMA Cord(アロマコード)」を発売した。

焚くと空間全体に香りが行きわたるお香でありながら、ラッピングのリボン・水引・アクセサリーの代わりとしても楽しむことができる新しい形の商品だ。

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長さを変えることで燃焼時間を調整可能。短時間でリフレッシュしたい時は短め、リラックスタイムは長めなど、様々なシチュエーションで楽しむことができる。10センチで約8分燃焼するそうだ。

ラッピングのリボンとして使用するとプレゼント自体がいい香りのする一品に仕上がり、アクセサリーとして使うとふんわりした香りがファッションに彩を与えてくれるという。

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お香の楽しみ方の幅を広げる商品を模索

画期的なスタイルのお香はどのように誕生したのか?

広報の魚住桂子さんに話を聞いた。

-----「紐状のお香」というアイデアを発案した経緯は?

「お仏壇の減少とともに、お線香が日常的に使われることも昔ほどなくなってきました。

特に若い方々のお香離れは著しく、お香の楽しみ方の幅を広げられる商品が作れないかと模索してきました。

その中で、お線香と同じように『細くて長い素材』でありながら、折れる心配がなく持ち運びができて、形を自由に変えられる『紐』でお香を作れば楽しみ方も広がるのではないかと考え、同商品を開発しました」

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匂いが少なく、ゆっくり燃焼する素材を選定

素材自体を燃やした時の匂いが極力少なく、火を消した後も燃焼がゆっくり進む素材を探すとともに、形を自由に変えられ・燃焼がゆっくり進み・香りを含侵させる方法を開発し商品化。

従来のお香よりも素材の燃える匂いが少ないので、よりフレッシュでストレートな香りを楽しめるという。香りのラインナップは全9種類。

「ラインナップの中には伝統的な香木の香りもありますが、色々なお花の香りや海をイメージした香りなどを開発しました」

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魅力が伝わるよう様々な工夫

-----開発にあたってこだわった点・工夫した点は?

「やはり、『紐のお香』であることがストレートに伝わるネーミングと、お香に馴染みのない方々にも面白そう・楽しそうと興味をもっていただけるデザインにすることです。

デザイナーに相談する中で、瞬時に商品を理解してもらえる『見た目』と『名前』にして様々な使い方ができることを伝えていけば、より多くのお客様の目に止めていただけるのではないかと考え、『アロマコード』と名付けました。

デザインは、誰もが見たことのある糸型の台紙に巻きつけて、中身が見えるパッケージに入れることで、商品のカラフルな華やかさそのものにより、この商品の楽しそうな魅力を発信できると考えました」

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また、専用のクリップを付けることで、使う長さを調節できるよう工夫。

さらに、何種類か買って試せるように、商品価格をなるべくリーズナブルに抑えたそうだ。

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お香の歴史をつないでいく

同社は昨年、和紙でできた葉っぱをモチーフとしたお香「HA KO」を発売。

同商品は、お香を焚くという普遍的な行為に新しい発想を付加し、ゆとりや安らぎといった情緒的な表現を視覚にも訴えかけるデザインに落とし込むことに成功し、消えかけた伝統に新たな火を灯したことが評価され、2019年度グッドデザイン賞を受賞した。

-----貴社が、商品開発にあたって大切にしていることは?

「私たちはお香のメーカーとして、過去の歴史の中でも、業界初となる煙の少ないお線香や、マイクロカプセルに香りを閉じ込めて火をつけると初めて香る点火発光式お線香で特許を取得してきました。

この120余年の歴史の中で培ってきた伝統的な技術を受け継ぎながらも、お香の長い歴史をこの先につないでいくために、時代に合った新しい香りを生み出すことに挑戦し続ける姿勢を大切にしたいと考えています」

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-----新しいお香に込める思い・ビジョンを教えてください。

「私たち日本人は、昔からお香を生活の中にうまく取り入れ、豊かに暮らしてきました。

お香には古くて堅苦しいイメージもあるかもしれませんが、香りには形がなく、お香の形も様々で、本来、もっと自由に楽しめるものだと思っています。

形を変えることで、今までお香に興味のなかった方も、お香好きの方も『お香って楽しいな』『日常にもっとお香を取り入れてみようかな』と、お香そのものへの興味を広げるきっかけになったら幸いです」


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