HOMEビジネス クアルコムが新「Snapdragon」を発表。2つのチップセットにみる2020年のスマホトレンドとは【石野純也のモバイル活用術】

クアルコムが新「Snapdragon」を発表。2つのチップセットにみる2020年のスマホトレンドとは【石野純也のモバイル活用術】

石野純也

2019/12/10(最終更新日:2019/12/10)


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Androidスマホの多くに内蔵されるSnapdragonシリーズを手掛けるクアルコムは、12月3日から5日にかけ、自社イベントの「Snapdragon Tech Summit」を開催。フラッグシップモデル向けの「Snapdragon 865」と、ミドルレンジ向けの「Snapdragon 765/765G」を発表した。

2つのチップセットからは、2020年のスマホのトレンドが垣間見える。

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クアルコムの発表したSnapdragon 865(左)とSnapdragon 765/765G(右)

AIの処理能力が高速になった新Snapdragon

Snapdragon 865でもっとも強化されたのは、AIの処理能力だ。1秒間に可能な演算性能は15兆回(15TOPS)に達し、7TOPSだったSnapdrgon 855を大きく上回った。

アップルがiPhone 11などに採用した「A12 Bionic」は5TOPSで、Snapdragon 865はその3倍にのぼる。

カメラの画像処理やアルバムでの画像識別、翻訳、音声認識など、AIを応用したスマホの機能は多岐にわたるが、こうした機能がより高速になるのがSnapdragon 865の特徴だ。

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15TOPSという高いAIの演算能力を実現

たとえば、カメラに映し出された被写体をスマホが分析し、目、鼻、髪の毛といったそれぞれのパーツに最適な処理をかけ、より写真の質を上げることができる。これは、AIで写真に写った被写体を識別できるからこその機能だ。

翻訳もほぼリアルタイムで可能

Snapdragon Tech Summitでは、英語から中国語へのリアルタイム翻訳のデモも披露されたが、翻訳もAIの得意分野の1つと言える。

音声認識や翻訳などの機能はこれまでも存在したが、高い処理能力を要するため、データをクラウドにアップロードする必要があった。そのため、データの送信、受信でどうしてもタイムラグが生じてしまう課題があったのだ。

一方で、上記のイベントで示された実例は、すべて端末上で処理が行われている。いわゆる「オンデバイスAI」と呼ばれるもので、ネットワーク経由でクラウドにアクセスしなくて済むぶん、レスポンスはリアルタイムに近くなる。

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翻訳などを、端末側で、しかもリアルタイムに行える

ISPも進化し2億画素までのセンサーに対応

画像の処理を担うISP(イメージ・シグナル・プロセッサー)も、大きく進化した。Snapdragon 865では、2億画素までのセンサーに対応しており、従来より大きな映像を扱えるようになる。

スマホサイズのカメラに2億画素は不要と思われるかもしれないが、これにより一部を切り出してデジタルズームしたり、画素を結合することで暗所時の性能を上げたりといった効果が期待できる。

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2億画素のセンサーに対応する


周波数を共用し、5Gも使える

もちろん、Snapdragon 865は5Gにも対応する。しかも併用できるのは「Snapdragon X55 5Gモデム」で、これはクアルコムの第2世代のモデム。下り最大7.5Gbpsの速度が見込めるうえに、4Gと5Gで周波数を共用できる「DSS(ダイナミック・スペクトラム・シェアリング)」の技術も採用する。

DSSは5Gで先行する国での採用が見込まれており、動的に4Gと5Gの周波数を切り替えることが可能。これによって、エリアの拡大ペースを早めることができるのだ。

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下り最大7.5Gbpsの5Gモデムに対応。4Gと周波数を共有するDSSも利用できるようになる

ワンチップ化されたミドルレンジモデルも

ただし、Snapdragon 865はモデムが別添で、ワンチップ化されていない。そのため、メーカーはSnapdragon 865に加えて、モデムも購入する必要がある。

それぞれの性能をフルに発揮するためだというが、実装の難易度が上がるうえに、コストは高くなりがちだ。そのため、各メーカーとの10万円前後のフラッグシップモデルに採用していく可能性が高い。

一方で、フラッグシップモデルだけでは、5G端末の普及は進まない。4G並みの普及を目指すには、ミドルレンジ以下のモデルに5Gを展開していく必要がある。これを目指したのが、Snapdragon 865より1つ下のレンジになる、Snapdragon 765とその強化版であるSnapdragon 765Gだ。

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Snapdragon 765のリファレンスモデル。5Gスマホのミドルレンジ化が期待できる

どちらもSnapdragon 865より性能は低くなるが、Snadpragon 765/765Gはモデムもワンチップ化されているのが特徴。これによって、コストパフォーマンスに優れたミドルレンジモデルでも5G対応が可能になる。

クアルコムは、より価格の安いモデルに採用されるSnapdragon 600シリーズにも5Gモデムを統合していく方針。2020年からは、5Gスマホの低価格化も徐々に進んでいくことになりそうだ。


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