1. 西田宗千佳のトレンドノート:人気のBeats・ソニーの「完全ワイヤレスヘッドホン」、共通点と差別化点

西田宗千佳のトレンドノート:人気のBeats・ソニーの「完全ワイヤレスヘッドホン」、共通点と差別化点

7月中旬になり、2つの人気メーカーから、似たような要素を備えたヘッドホンが相次いで発売になった。 

ひとつは、アップル傘下のBeatsの「PowerBeats Pro」。そしてもうひとつは、ソニーの「WF-1000XM3」だ。どちらも実勢価格は2万7000円前後で、まさにライバルといえる存在である。 

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「PowerBeats Pro」(左)と「WF-1000XM3」(右)。どちらもケースに入れて充電して使う。

どちらも左右のイヤホンをつなぐケーブルのない「完全ワイヤレス型」である。

完全ワイヤレス型のヘッドホンといえば、アップルの「AirPods」が圧倒的なシェアを持ち、街中でつけている人を見る機会も多くなっている。今一番伸びている領域だけに、オーディオ専業メーカーからベンチャーまで、多数の企業が製品を投入する激戦区でもある。 

その中で、PowerBeats ProとWF-1000XM3はどのような地位を占めるのだろうか? そして、結局どちらが「買い」なのだろうか? 

いきなり「定番」、AirPodsヒットの理由 

完全ワイヤレス型は、ケーブルがなく煩わしくないのが利点だが、欠点・難点も多数ある。 

耳に入れて安定させることが多いので比較的落ちやすく、小さいがゆえになくしやすい。バッテリー搭載量も少ないので、連続動作時間も短い。また、左右の耳両方の音を無線伝送しないといけないので、音切れや遅延なども増えやすい。 

これらはどの製品にも多かれ少なかれ存在する欠点で、製品によって有利・不利が異なる。どういうバランスの製品に仕上げるかが、完全ワイヤレス型ヘッドホン開発の勘所といっていい。 

大ヒット製品である「AirPods」は、そこにいきなりひとつの回答を出した。 

音質は最高級ではないし、音漏れもある。形が耳に合わない人だと、ちょっとしたことで耳から落ちることもある。完璧な製品ではない。 

だが、バッテリーは最大で5時間の連続再生に限られるが、コンパクトなケースを使って継ぎ足し充電することで24時間分利用出来て、ヘッドホンの重量は片耳分で4gしかない。価格は税込みで1万9000円強と、そこまで高くない。なにより、Bluetoothによる無線接続の安定性が高く、アップル製品同士での接続ならば設定も切り替えも簡単だ。 

しかも、AirPodsは初代モデルが2016年末に出ている。現在は第二世代製品に変わっているが、若干の音質変更や機能アップを除き、特質は変わっていない。完全ワイヤレス型ヘッドホンの普及期に、iPhoneというヒット製品のコンパニオンとして完成度が高いものを市場に投入したこと、その後も定番として定着したことがなによりも大きい。 

結果として、その後の完全ワイヤレス型ヘッドホンは、「AirPodsと比較してどうか」という観点で判断されるようになっている。現在に至るも、すべての点でAirPodsに勝る、という製品は多くない。 

PowerBeats ProはAirPodsの兄弟機、耳かけ型で落ちづらい 

今回紹介する2つの製品も、「AirPodsと比較してどうか」という見方で考えるのがわかりやすいだろう。 

まず、「PowerBeats Pro」から行こう。実はこの製品は、AirPodsの兄弟機といえる。デザインは耳かけ型でかつ、イヤピース部を耳に押し込む形で、AirPodsとは大きく違う。

だが、使われているワイヤレスチップは、AirPods用にアップルが設計した「Apple H1」だ。AirPodsからデザインを変えて用途を変えた結果、音質などにも変化が生まれたのがPowerBeats Pro、といういい方もできる。 

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PowerBeats Pro。耳かけ式で落ちづらいが、この種のヘッドホンとしては大きめだ。
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PowerBeats Proの充電ケース。かなり大きめで重い。 

特徴はやはり、そのデザインから来る安定性だ。もともとスポーツ向けを想定しているので、走ったりしても耳から落ちない。 

また、耳にイヤーピース部を押し込む「カナル型」に近い構造なので、AirPodsに比べ騒音が聞こえづらい。同時に音漏れも少ない。 

その分開放感はないし、装着にもひと手間かかるが、「落ちる」「音漏れする」「騒音が入ってくる」ことをAirPodsの問題点として考えていたなら、PowerBeats Proは良い代替物となる。 

一方、ワイヤレスチップはAirPodsと同じなので、使う機器を切り換えるのも楽だし、音切れも少ない。特にiPhone・iPadとの相性は圧倒的に良い。 

機構が大きく変わった結果、音質も変わった。率直にいえば、かなり好ましい。クセが少なく、伸びの良い音だ。AirPodsの音質に不満がある人にも向いている。 

ワイヤレス機能改善で名誉挽回、ノイズキャンセル機能が強力なWF-1000XM3 

もうひとつの新製品である、ソニーの「WF-1000XM3」は、AirPodsやPowerBeats Proと比較して語るとさらにわかりやすい。 

ソニーはオーディオ機器メーカーであり、高音質のヘッドホンを多数作っている。「1000X」シリーズは、その中でもハイエンドで、ノイズキャンセル機能を搭載した製品を指すブランドだ。オーバーヘッド型の「WH-1000XM3」は、利用者からの評判も良く、実際、同価格帯ではトップ品質のノイズキャンセル機能付きヘッドホンだと筆者も思う。 

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WH-1000XM3。耳に入れる形ではあるが、耳から飛び出る部分は大きめ。とはいえ、PowerBeats Proよりはサイズは小さい。

一方、2年前に同じ「1000X」ブランドとして出た完全ワイヤレス型ヘッドホン「WF-1000X」は、あまり良い出来の製品ではなかった。特に問題だったのは、Bluetoothでの接続の不安定さだ。電波が混み合う場所での音切れが多く、画面が表示されてから音が耳に伝わるまでの「遅延」も大きめだった。  

今回の新製品「WF-1000XM3」は、そのリベンジといえる。AirPodsに使われている「Apple H1」と同じように通信が安定しており、遅延も少ない。通信品質の面でアップル(Beats)の製品に劣る部分はなくなった、といってもいい。ようやく「ソニー」の名に負けない製品になった、といっていいだろう。 

その上でWF-1000XM3は、ノイズキャンセル機能を搭載している。ソニーのノイズキャンセル機能は優秀で、電車内などの騒音をうまくカットしてくれる。耳栓的な効果で騒音を減らしているPowerBeats Proよりも、ノイズをカットする性能はずっと高い。

それでいて、サイズはPowerBeats Proよりずっと小さく、ケースもコンパクトだ。音質自体は同じ高いレベルにある。 

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WF-1000XM3の充電ケース。AirPodsよりは大きいが、PowerBeats Proとの比較では半分程度。

コンパクトさとノイズ低減を重視するなら、WF-1000XM3は間違いなく、今一番お勧めできる製品である。 

ただ、PowerBeats Proの強みもある。 

PowerBeats Proはスポーツを指向しており、汗や水滴にも強い。WF-1000XM3は、スポーツをしながら使うには向かない。どちらを選ぶかは、そうした点も考慮した上で考えるべきだろう。

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