1. 石野純也のモバイル活用術:なぜ今、アップルがクレジットカード「Apple Card」をわざわざ出すのか

石野純也のモバイル活用術:なぜ今、アップルがクレジットカード「Apple Card」をわざわざ出すのか

3月25日(現地時間)にアップルが開催したスペシャルイベントは、iPhoneやiPadなどの新製品が一切ない、異例の発表会だった。

代わりに発表されたのは、「Apple TV+」や「Apple Arcade」「Apple News+」といったサブスクリプション型のサービス。

毎月、定額の料金を払えば、コンテンツが見放題、使い放題になるというものだ。ただ1つだけ、その枠組みに納まらない新サービスもあった。

それが、「Apple Card」だ。

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アップルがクレジットカード事業に参入。Apple Cardを、夏に開始する

アップルのクレジットカード「Apple Card」

Apple Cardは、Apple Payを前提にしたクレジットカードで、アップルが米金融機関のゴールドマンサックスと手を組み実現したもの。クレジットカードのブランドには、マスターカードを利用する。

これまでのApple Payは、物理的なクレジットカードがあり、そのサブカードをiPhone内に入れて支払いを合算するというものだったが、Apple Cardはその順番が逆になっているのが特徴。Apple Payありきのクレジットカードと言い換えることもできる。

その証拠にApple Cardでは、チタン製の物理カードも用意されるが、そこには既存のクレジットカードにあるカード番号やサイン、有効期限が一切記載されない。カード番号は、iPhoneの中にあるApple Pay用のものを見ればいいからだ。

米国では、Apple Payの利用可能な店舗が7割まで広がっているが、逆にいうと、残りの3割は物理的なクレジットカードでしか決済できない。この穴を埋めるのが、Apple Cardの物理カードというわけだ。

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番号が一切表示されない、超シンプルなチタン製カードも発行する

スマホ決済を前提にした、アップル自身が発行するクレジットカードなだけに、Apple Cardには既存のクレジットカードにはないさまざまな機能が搭載されている。

たとえば、支払った金額はグラフィカルに可視化され、ジャンルごとにいくら使ったのかが一目瞭然になる。利用した場所をマップで表示することも可能だ。

また、住所の変更をボットに話しかけるような形でできるなど、ユーザーインターフェイス(UI)にも磨きがかけられている。

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ユーザーインターフェイスの分かりやすさは、アップルならではだ

米国では日本でいうところのリボ払いが一般的で、利用者自身が返済額を自分で決める習慣が根付いているが、Apple Cardではこの金額も円グラフを操作するだけで簡単に決めることが可能だ。

既存のサービスを直感的なUIでブラッシュアップするのは、アップルの得意とするところ。Apple Cardは端々に、“アップルらしさ”が表れたサービスといえるかもしれない。

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利用者が返済額を自分で決めることが可能

便利なだけでなくお得、利用者は2%のキャッシュバック

単に便利なだけでなく、お得なのもApple Cardの特徴だ。

Apple Cardで支払うと、利用者は常に2%のキャッシュバックを毎日受けられる。1日単位のためお得度が分かりやすく、次の支払いにすぐ使えるのはうれしいポイントといえるだろう。アップルストアなどで使うと、このキャッシュバック率が3%に上る。

日本でも「Kyash」など、一部のサービスが2%キャッシュバックを実現しているが、一般的なカードだと0.5%から1%程度。2%から3%のキャッシュバックが、いかにお得かが分かるはずだ。

ただしこのキャッシュバック率は、米国ならではの点といえる。米国では複数のサービスが2%や3%といったキャッシュバック率を提示しており、Apple Cardだけが群を抜いてお得というわけではない。

カテゴリー限定で、Apple Card以上のキャッシュバック率を誇るクレジットカードも存在する。そのため、海外展開した際に、同じキャッシュバック率が適用されるかは未知数だ。

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2〜3%のキャッシュバックを受けられる。物理カードを使ったときは1%

狙いはやはり決済手数料か

そもそもApple Cardは米国のみのサービスで、現時点では対応国の拡大も発表されていない。同じ北米限定のApple News+が、秋にイギリスやオーストラリアに拡大することがアナウンスされているのとは対照的だ。

この点を考えると、少なくとも年内は米国限定のサービスになるのかもしれない。各国の金融当局との調整も必要になるうえ、そもそもゴールドマンサックスがサービスを海外展開しなければならないため、拡大はほかのサービスよりも時間がかかりそうだ。

アップルの狙いは、やはり決済手数料にあると見られる。同社はApple Payを提供しているものの、クレジットカードを直接発行していないため、ここから得られる収益は少ない。

アップル自身がクレジットカードを発行すれば、これまで既存のクレジットカード会社が取っていた手数料を、丸々自社の収益にできるため旨味が多く、Apple Payが広がったこのタイミングで参入するのも納得できる。

ドコモがおサイフケータイを開始した際に、その上に乗る非接触のクレジットカードプラットフォームのiDを立ち上げ、自身でDCMX(現・dカード)を発行したが、アップルがApple Cardを始めるのもこれに近い。

実際、ドコモのdカードは取扱高が2018年第3四半期で2兆8600億円にまで拡大。スマートライフ領域の四半期営業利益1348億円のうち、約2割が金融決済分野によるものだという。

ここにはいわゆるキャリア決済も含まれるが、クレジットカードの収益も柱の1つになっている。

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ドコモのdカードは、取扱高、契約数ともに順調に拡大している


米国以外に拡大できれば収益はドコモ以上に

非接触決済のプラットフォームを提供し、その上で自身のクレジットカードを発行するという点は、まさにドコモとアップルの共通点といえるだろう。

ただし、アップルは展開国が限られるキャリアとは異なり、ビジネスの土俵がグローバルだ。

仮にApple Cardの事業を米国以外に拡大できれば、そこから得られる収益はドコモ以上に大きくなることが予想される。サービス事業を新たな柱に据えたアップルにとって、Apple Cardは欠かすことができないピースの1つといえるだろう。

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