1. 西田宗千佳のトレンドノート:PlayStation Classic発売、なぜ今「昔のゲーム機」が続々出るのか

西田宗千佳のトレンドノート:PlayStation Classic発売、なぜ今「昔のゲーム機」が続々出るのか

西田宗千佳のトレンドノート:PlayStation Classic発売、なぜ今「昔のゲーム機」が続々出るのか 1番目の画像
Shutterstock

 12月3日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は「PlayStation Classic」を発売する。

 1994年12月3日に発売された初代PlayStation(PS1)を今の技術で小型化し、20本のゲームを内蔵して販売される「リバイバルゲーム機」といえるものだ。

 今回、発売よりもちょっと早く、実機を試すことができた。

西田宗千佳のトレンドノート:PlayStation Classic発売、なぜ今「昔のゲーム機」が続々出るのか 2番目の画像
12月3日発売の「PlayStation Classic」(9800円・税別)。24年前のヒットゲーム機に、20本のゲームがセットになって格安で販売される。

 過去のゲーム機を小型化・低価格化してリバイバルしているのはSIEだけではない。

 任天堂もファミコンやスーパーファミコンを小型化した「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」「同 スーパーファミコン」を発売済み。セガも「ミニメガドライブ」を2019年に発売する。

 ここに来て、各社はなぜ「リバイバル」に走るのか? PlayStation Classicの実機に触れながら、そのことを考えてみた。

24年前の「プレステ」がコンパクトかつ安価に

 PlayStation Classicは意外とシンプルな機械だ。

 PS1と同じ性能の機器にフラッシュメモリーを組み合わせ、中に20本分のソフトを詰め込んだものだ。

 もちろん、PS1のCD-ROMを使うことはできない。だが、起動するとすぐに20本のソフトが見えて、中身を切り替えながら遊べる。

 データの保存も内部のメモリーに行うのでメモリーカードはいらない。

 付属のコントローラー(PS1のものとまったく同じデザインで、サイズも同じだ)を使い、懐かしいゲーム群を楽しむことができる。

西田宗千佳のトレンドノート:PlayStation Classic発売、なぜ今「昔のゲーム機」が続々出るのか 3番目の画像
PlayStation Classicのメイン画面。20本のゲームを切り替えつつ遊べるようになっている。
西田宗千佳のトレンドノート:PlayStation Classic発売、なぜ今「昔のゲーム機」が続々出るのか 4番目の画像
プレイ感覚はPS1そのもの。画面は「JumpingFlash! アロハ男爵ファンキー大作戦の巻」のもの。これを含む20本のヒットゲームが楽しめる。©1995 Sony Interactive Entertainment Inc.

 サイズは半分以下の手のひらサイズになったが、機能は過去のPS1と同じ。

 24年前の発売時は本体だけで3万9800円、ソフトもそれぞれ数千円したものが、たった9800円で遊べるのだから、技術の進歩と時間の経過を感じる。

半導体の進化がサイズとコストを変える

 実際、PlayStation Classicのような機器が作れるのは、時間経過に伴う半導体技術の進歩があってこそのものだ。

 PlayStation Classicは「PS1の設計を小型化したもの」ではない。PS1とはまったく異なるハードウエアでPS1用のソフトを動かす「エミュレーション」という技術を使っている。

 エミュレーションで余裕を持って高い精度でソフトを動かすには、もともとのハードウエアよりもずっと性能の高いものが必要になる。

 だが、今は「PS1より高性能なハードウエアを調達したとしても、ずっと小型・低消費電力で、低価格」なものが作れるようになっている。

 CD-ROMも、24年前には「大容量」だったが、今はフラッシュメモリーの大容量化・低価格化に伴い、20本分の容量を用意しても、パーツコストでいえば数百円に満たない。

 内蔵されているソフトやデザインはもちろん異なるが、どのゲームメーカーが販売する「リバイバルゲーム機」も、構造は同じようなものだ。

 スマートフォン需要の盛り上がりもあって低価格化した汎用半導体とフラッシュメモリーを使い、低価格に「過去のゲームを売る」ことが、これらの製品の狙いだ。

 ゲームとともに育った世代が中年になり、この程度の価格であればすぐに買える経済力を持っていることも、無関係ではあるまい。

「古いゲーム」で再びビジネスをするには

 一方で、こうした「リバイバルゲーム機」は、任天堂やSIE、セガといった「本家本元」から出るのが最初ではない。

 何年も前から、これらの企業のラインセンスを得ることのないグレーな「互換機」として販売されていたものがあった。

 そして、それらとともに違法コピーされたソフトが流通することも多かった。

 こうなるとグレーではなく「黒」だ。

 家庭用ゲーム機はどんどん進化していくが、ソフトの互換性を保つのは難しい。

 そうした施策も用意されてはいるが、「すべてのソフトの互換性を維持する」のはとても大変であり、メーカーとしても割に合いにくい。

 そこで最近は、互換性が確認できた一部のソフトだけをオンライン流通させ、過去のソフト用のROMカートリッジやディスクは使えない……というパターンが多かった。

 過去のソフトが「使える」形ではゲームメーカー側に利益が出ないが、「過去のソフトが再び買える」なら利益になる。ゲームメーカーがそちらになびくのも無理はない。

 一方で、エミュレーション技術の普及により、「海賊版」を作るのも簡単になった。このまま放置するのは問題も多い。

 そこで、ハードメーカー側が「自らリバイバルゲーム機を作り」、そこに「ソフトを入れて販売」し、(少ない額にはなるが)正当な利益をゲームメーカーにも還元することで、海賊版的なハードウエアの拡大を止め、ビジネスにする

 これが、リバイバルゲーム機が出てくるもうひとつの背景だ。

 映画や音楽は、名作になればそれで何度も収益が生まれる。だがゲームは、表現が大きく変わること、動かすためのハードウエアが変わることなどから、収益化の機会がかぎられている。

 本当の名作なら「リメイク」もありうるが、その機会を得られるのはごく少数に限られる。

 だからこそ、リバイバルゲーム機は、ゲームの「再収益化」の機会なのだ。

 何回もできることではないが、家庭用ゲームの歴史が35年を超え、一時は「新参者」と言われたPlayStationですら、24年を迎える。

 リバイバルゲーム機の存在は、ゲーム機ビジネスが「一周した」ことの証でもある。こうしたリバイバルブームは、10年・20年といった境目を迎えるたびに繰り返されていくのではないか、と筆者は予想している。

U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう
この記事を報告する