1. 西田宗千佳のトレンドノート:Boseが狙う「3万円での睡眠改善」とは?

西田宗千佳のトレンドノート:Boseが狙う「3万円での睡眠改善」とは?

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  Boseから、「noise-masking sleepbuds」(以下sleepbuds)という製品が発売になった(写真1)。

  Boseといえば、ノイズキャンセルヘッドホン「Quiet Comfort」シリーズが有名。この製品も「ノイズ」と名前が入っているので、同じような製品だと思う人が多いようだ。

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(写真1)Boseの新製品「noise-masking sleepbuds」。小さなヘッドホンのような形状だが、どちらかといえば「耳栓」に近い機能である。


  だが、sleepbudsとノイズキャンセルヘッドホンはまったく性質の違うものであり、ノイズキャンセルヘッドホン以上に(色々な意味で)挑戦的な製品になっている。sleepbudsとはどんなものなのか、実機でご説明しよう。

音楽は聴けない「超高級耳栓」

  sleepbudsは、「スリープ」という名前の示す通り、眠りの質の改善を目的とした商品である。

  形は、最近増えてきた「左右分離型のヘッドホン」に似ている。だが、似ているのは見た目だけだ。なにしろsleepbudsは、ヘッドホンの機能を持っていないのだから。

  音を出す機能はあるのだが(詳しくは後ほど述べる)、ヘッドホンのようにスマートフォンからの音楽を再生する機能はない。

  その代わり遮音性が高く、耳につけると周りの音がかなり小さくなる。重量も1.4g(イヤーピース部のぞく)と、かなり軽量。つけていても負担はほとんど感じない。

「ヘッドホンにならない、ということは、耳栓ということ?」

  はい、正解。

  sleepbudsは、要は「耳栓」なのである。

  だが、耳栓のようにありふれた製品をBoseが出すはずもない。耳栓なら、その辺のドラッグストアで「3セット400円」くらいで売っている。

  sleepbudsは3万円(税抜)もするし、Bluetoothでスマートフォンに接続する仕組みも、ケース充電器も備えている(写真2、3)。2桁値段が違うものが、同じ機能であるはずがない。

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(写真2)
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(写真3)sleepbudsのケース。中に入れるとsleepbudsが充電される仕組み。ケース内蔵バッテリーでsleepbudsが一度フル充電になる。大きさはのど飴の缶くらい、というとわかりやすいだろうか。

自然のノイズで周囲の音をマスク

  先ほど、sleepbudsには音を出す機能がある、と書いた。だが、ヘッドホンにはならない。ここに秘密がある。

  sleepbudsは専用のスマホアプリと連動し、断続的に「自然に存在するノイズ」を流す機能がある。例えば、キャンプでたき火がパチパチと音を立てて燃える音や、滝の落ちる音、風の流れる音などである。

 耳栓で音を減らし、さらにこうしたノイズを流すことで、周囲の音を聞こえなくする。音で音をマスク(覆う)するので「ノイズマスキング」と名付けられているのだ。

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sleepbudsの専用アプリ「Bose Sleep」。Bluetoothでのスマホとの接続を管理するほか、耳に流す「自然のノイズ」の選択、アラーム設定もこれで行う。


  「Quiet Comfort」シリーズに代表される「ノイズキャンセルヘッドホン」は、マイクで周囲の音を取り込み、その逆位相の音を重ねることで「ノイズが目立たなくなる」ことを使って静粛性を実現している。

  sleepbudsにはその機能はなく、あくまで「ノイズマスキング」で音を小さくしている。だから、電車の中や飛行機の中など、比較的騒音が大きい場所では、外音に負けて静粛性が保てない。ただ、オフィスの中や寝室など、そこまで大きな音がしない場所では有効だ。

  ノイズキャンセルでなく、あえて「ノイズマスキング」である理由は、この製品が「リラックス」を促すことを目的としている点にある。

  虫の声や雨音が聞こえて、ぐっすりと眠れた……という経験がある人も少なくないだろう。人間はまったくの無音よりも、こうした自然なノイズがあった方がリラックスできる、と言われている。逆に、集中するために使いたい、という人も多いようだ。

  自然なノイズの効果はよく知られているので、スマホアプリには「自然なノイズを出して睡眠を促す」アプリが多数存在する。有料・無料どちらもあって、さほど特別なものではない。

  ヘッドホンがあれば、こうしたものとスマホの組み合わせで、簡単に「ノイズを聞きながらリラックスして眠る」環境はできる。

  sleepbudsも、自然なノイズの仕組みを使っていることに違いはない。Bluetoothでスマホと接続し、スマホアプリからノイズを流してsleepbudsから聞く。

  セットで簡単に導入できるのはポイントなのだが、やはり、「3万円もするが、できることは無料のスマホアプリ+ヘッドホンと変わらない」ということもできる。しかも、sleepbudsは音楽を聴くことはできないのだ。

睡眠時の「快適さ」にいくら払えるかが決め手

  では、なぜBoseはわざわざこうした製品を作ったのか?

  それは「睡眠中に耳に入っていても邪魔にならない」環境を作るためだ。

  ヘッドホンをしたまま眠ることもできるが、意外と快適ではないものだ。インナーイヤー型ははずれにくいが耳に違和感が残るし、オーバーヘッドタイプはかさばり、寝返りを打った時に外れてしまうことも多い。左右独立型のヘッドホンはバッテリーがもたないし、やはり耳から外れやすい。

  だがsleepbudsは、非常に外れにくい。耳にフィットしており、重量も軽いからだ。インナーイヤー型に近い構造だが、耳の奥まで差し込むわけではなく、異物感も少ない。バッテリーも、一回の充電で最大16時間持つ。

  また、スマホアプリから流れる音も単なる自然音を録音したものではなく、「周囲の他のノイズが聞こえづらくなるように加工された音」になっている。なので、同じような音をスマホ+ヘッドホンで聞いてみた時よりも、外部の音は目立ちにくい構造にある。

  そして、スマホアプリには「アラーム」機能もある。単なる耳栓だとアラームも聞きづらくなるが、sleepbudsの場合、耳栓をしたままでもきちんとアラーム音で起きられる。

  このように、sleepbudsは耳栓を基本としつつも、「スマホと連携して出来ること」を意識して作られた製品になっている。私も2晩ほど使ってみたが、確かに眠りに入りやすかったし、起きる時のアラームもわかりやすかった。睡眠中にヘッドホンが気になることもない。

  とはいえ、これに3万円を払えるかどうかは、かなり意見が分かれるだろう。高級ヘッドホンと同じ値段で、「寝る時」「集中したい時」にしか使えず、耳栓やヘッドホンでもいざとなれば同じことはできるのだから。

 やはりこれはある種の贅沢品だ。充電器を兼ねたケースの高級さからも、それは強く感じられる。「日々の眠りが騒音で害されている」と強く感じている人や、「出張中の眠りを改善したい」と感じている人向けのものであり、「良い眠りは値千金」といい切れる人のための製品だ。

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