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西田宗千佳のトレンドノート:スマホOSが取り組む「スマホ使い過ぎ」対策

西田宗千佳

2018/08/22(最終更新日:2018/08/22)


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  我々の生活はスマートフォンと切り離せないものになっている。生活のすき間時間に入り込み、ついつい画面を見ている時間が長くなる。そんな様子から、「スマホとSNSは21世紀のタバコ」という人もいるくらいだ。

  そんな状況もあってか、今秋に提供が開始されるスマートフォン用の新OSでは、相次いで「スマホの利用時間管理」機能が搭載される。それらはどのようなものであり、どういう考え方に基づいているのだろうか?

「スマホの利用時間」をOSが管理

  アップルが秋(例年なら9月)に提供を開始する「iOS12」と、Googleがスマートフォンメーカーを通じて秋から順次提供を開始する「Android 9 Pie」には、同じような機能が揃って搭載される。

  どちらも、簡単に言えば「スマホを何時間使って、そのうちどの機能をどれだけ使ったのか」を可視化するものだ。

  iOS12では「スクリーンタイム」、Android 9 Pieでは「Dashboard」と呼ばれるが、どちらも考え方も画面も似ている。

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iOS12に搭載される「スクリーンタイム」。

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Android 9 Pieに搭載される「Dashboard」。


  iOS12とAndroid 9 Pieは、どちらも「アプリが使われた日時」を内部に記録している。その情報から、「今日どれだけアプリを使ったか」「今週どれだけアプリを使ったか」といった情報が集計され、一覧表示できるようになっている。

  両者はほぼ同じような画面で、同じような使い勝手を備えているといっていいだろう。筆者はまだAndroid 9 PieのDashboardを試せていない(機能の実装は機器によって異なり、筆者の環境ではまだ出てこないためだ)ので、iOS12の例で解説する。

  スクリーンタイムでは、どのアプリをどれだけ使ったかが、おおまかなジャンルとアプリ名で把握できるようになっている。

  例えば、YouTubeやNetflixをたくさん見ていれば「エンターテインメント」というカテゴリが、TwitterやFacebookを長く見ていれば「SNS」というカテゴリがたくさん使われているのがわかるし、一日のうち、いつどれだけの時間つかったか、週の累計でどれだけ使ったか、ということもわかる。

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「スクリーンタイム」の例。一日のうちどこで、どんな種類のアプリをどのくらいの長さ使ったかが簡単に把握できる。

使いすぎを「自覚」して対策

  なぜこのような機能があるのか? これは、簡単にいえば「体重計に乗ること」「レコーディングダイエットすること」のようなものだ。

  全世界的に「スマホの使いすぎ」は問題になっているが、人はそうそう使うのを止められない。しかし、数字できちんと把握できれば、完全に止めることはなくても(そうなってはスマホメーカーも困るだけだ)、ある程度自制的になる。

  これまでは、自ら管理するための指針すらなかったが、誰もが簡単に確認できるようになるなら、話は別である。

  iOS12・Android 9 Pieともに、利用時間は「確認できる」だけではない。利用可能な累計時間を定めて、「それ以上使わせない」よう設定することもできる。そうやって強制的に管理してもいい。

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アプリ毎に利用時間に制限をかけることも可能。特に子供向けには有効だ。


  ただ、大人がそうやって使うのは、あまり現実的ではないかもしれない。「利用時間制限」が有効なのは、やはり「子供向け」だ。アカウント連携機能を使うと、スクリーンタイムでは、自分の端末の利用時間だけでなく、家族の端末(例えば子供のもの)の利用時間も把握できる。

  もちろん、プライバシーの問題があるから、見れないように設定することも可能だ。だが、子供にスマホやタブレットを渡すならば、「どのくらい使っているのか」を把握し、必要ならば「利用時間制限をかける」といった使い方が有効である。

  こうした機能は、独自にセキュリティ対策ソフトで導入したものがあるし、PlayStation4やNintendo Switchといったゲーム機でも、「親が利用時間や利用実績を把握する」機能を搭載している。

  スマホ・タブレットのOSも、おくればせながらそうした要素を標準搭載するようになった……といった方が正しいだろう。

「通知の抑制」こそ最大の対策?!

  ただ、筆者は「アプリの利用時間の管理」より、もう少し有効な要素がある、と思っている。それは「通知の管理」だ。

  iOS12・Android 9 Pieでは、アプリの利用時間だけでなく、「通知」の回数や頻度なども把握できる。また、簡単に「通知を出さないようにする」ことも可能になった。例えばiOS12の場合には、予定(例えば会議)が入っていることを把握すると「通知を止めますか?」と聞いて来るようになった。

  通知を止める「おやすみモード」の設定にも、「1時間」「夜まで」「この場所から出発するまで」といった設定を簡単に行う機能がついている。

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iOS12の「おやすみモード」設定。単純にオンにするのではなく、時間設定や「位置」の設定も。


  スマホを使い過ぎるのは「通知がきて、それが気になって確認してしまうから」という事情もある。あえて「今は、ここでは通知を見ない」という選択ができるようにすることで、スマホの使い方をコントロールするわけだ。

  「アプリ毎に時間を設定する」よりも、実はこちらの方が簡単で、自発的に行えるような気がする。

  正直なところ、アプリメーカーやスマホメーカー、そしてウェブサイトにも、そろそろ考え直して欲しい部分がある。アプリや製品のマーケティングには、「通知」を使うのが重要になっている。だから、アプリでもウェブでも、新たに使い始める時は必ず「通知」を求めてくる。

  しかし、消費者がすべての通知を望んでいるか、というとそうではない。スマホのOSには通知の表示を管理する機能はあるが、アプリが増えると設定が面倒で、有効活用している人は多くない。

  通知が来すぎると、人はそれに慣れっこになってしまう。「オフにされるような通知」を出すことに、本当に意味はあるのだろうか?

  通知の回数は厳選し、利用者に「通知オフ」や「デジタルデトックス」を強いない形であることが望ましい。「とにかく通知」がうまくいく時代ではないのだ。


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