1. 中国を「テクノロジー超大国」にした立役者は〇〇:テクノロジーの進歩は誰に向けられるべきなのか?

中国を「テクノロジー超大国」にした立役者は〇〇:テクノロジーの進歩は誰に向けられるべきなのか?

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 近年、中国の技術進歩は急速に進んでいる。QR決済が爆発的に普及したり、無人コンビニが急拡大したりなどと、中国は他国よりも早く、近未来的になった。

 しかし話題となっているのは、規制の厳しさやディストピアを実現したと噂される「社会信用システム」ばかり。テクノロジーの進歩が及ぼした凄まじい前進とその原因についてはあまり語られていない。

 今回TEDで『中国のインターネットの急成長とその行先(The Rapid growth of the Chinese Internet ― and where it's headed)』のスピーカーを務めたのはゲアリー・リウ(Gary Liu)氏。サウスチャイナ・モーニング・ポストのCEOである彼は、中国の急速な技術発展の低所得者や地方民への影響とその原因について語ってくれた。

『中国のインターネットの急成長とその行先』

ゲアリー・リウ氏:年に一度、中国では世界最大の民族大移動が発生します。元日から40日間は春運。家族で祝福するために集まるので、国内で約30億人の交通が起きます。

そのうち2億9千万人の出稼ぎ労働者は、最も過酷な旅路を辿ります。大半のものにとって、これは両親や子どもたちに会う年に一度きりのチャンスなのですからね。

にもかかわらず、交通手段はかなり限定されています。航空券は出稼ぎ労働者の月給の約半分ですから、ほとんどの人は電車を選びます。

彼らの平均移動距離は700キロで、平均移動時間は15時間半。となると、鉄道機関は春節毎に3億9,000人にも及ぶ旅行者の対応をしなければなりません。

最近まで、チケットを購入するだけのために長時間――ときには数日――並ぶ必要がありました。しかも、大体の場合ダフ屋にカモられます。出発日がやっと訪れても、彼らを待ち受けているのは大混雑。

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ゲアリー・リウ氏:テクノロジーによってこの過酷な体験は改善されました。モバイルチェットやデジタルチケットは今や売上高の70%を占めて、駅の列はかなり軽減されました。従来の身元確認等のチェックがデジタルIDスキャナーに代わってからは乗車手続きがよりスムースに。また、AIはネットワーク中を網羅していて、最適なルートを示してくれます。

新たな解決策が発明されたのです。

中国最大手のタクシー配車プラットフォーム、滴滴出行(ディディクワイディ)は新サービス『Hitch』をローンチ。これは、帰路のドライバーと長距離旅行者をつなげるサービスです。

たったの3年で『Hitch』は3,000万ものホリデーシーズン中の旅行を支えました。最長距離は1,500マイル以上。これは大体マイアミ(フロリダ州)からボストン(マサチューセッツ州)の距離です。

出稼ぎ労働者たちの巨大なニーズが国の交通機関の急速な発展とイノベーションを促進しました。

テクノロジーの発展の「原因」と「表と裏」

中国でのイノベーション・起業を駆り立てる「圧倒的な数の貧困層」

ゲアリー・リウ氏:中国のインターネットの発展にはありふれた原因と珍しい原因の両方が存在します。シリコンバレーみたいに、テクノロジーと消費者行動の大きな変化を起こすのは、学術研究や企業の思惑、たまに起きる権利者や若者たちの気まぐれです。

私は一消費者、経営者として、アメリカのテクノロジー業界の産物です。だからこそ、この手の話はよく耳にします。しかし半年ほど前、私はサウスチャイナ・モーニング・ポストのCEOになるために、ニューヨークから香港へ引っ越しました。

おかげで、私は中国のイノベーションと多くの起業家たちを駆り立てる、他国にはない珍しい要因を目撃します。それは30年間、中国の好景気に取り残されていた「圧倒的な数の貧困層による需要」です。

貧富の差や地方差、教育の差――これらのギャップはかなり巨大な促進力のある土台を形成しました。

資本と投資がピラミッドの下層部のニーズに集中したとき、我々はインターネットが真に仕事の発生元、教育を潤す芽、多方面の進歩の源になるのを目撃するでしょう。

もちろん、”珍しい原因”が存在する唯一の国が中国というわけでなければ、唯一可能な国というわけでもありません。しかし、この国の絶大なスケール、超大国としてのステータスのおかげで、国民の需要が真に必要な影響を及ぼしたのです。

中国のテクノロジー業界の急成長を説明づけるとき、多くの人は主に2つの理由を挙げます。1つ目は、中国を母国と呼ぶ14億人の国民。2つ目は政府の積極的な関与、もしくは徹底した介入です。

中央当局は数年間、ネットワークのインフラ設備へ集中的に費やし、投資に魅力的な環境を整えました。同時に、当局は法規と規格に則ったことが、早いコンセンサス、迅速な採択を促しました。

世界最大の技術力が集まるのは、教育インセンティブの豊かさからです。また、民間企業は過去、市場支配によって国際競争によって守られてきました。

一長一短なテクノロジーの発展

もちろん、中国のインターネットは広範な検閲とディストピア的な監視抜きでは語れません。例えば、中国政府は全国民を網羅する「社会信用システム」や誠実さなどの極めて質的特徴に基づいた「報酬と規制制度」を始動しようとしています。

同時に、中国は1億7000万台の有線監視カメラに顔認証システムを搭載しました。新疆自治区では、すでにムスリムのマイノリティたちが常時監視されているのにかかわらず、犯罪やテロを予防するのにAIが用いられているわけです。

とは言っても、インターネットは中国で伸び続けて、大半の人は気づいていないかもしれませんが、巨大になりました。

2017年終盤には、中国のインターネット人口は7億7,200万人に到達しました。これはフランスとカナダ、アメリカ、ロシア、ドイツ、イギリスの人口を全部足したときよりも多いです。

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ゲアリー・リウ氏:ユーザーたちの98%は携帯からアクセスしています。92%はメッセージアプリを使います。デジタルニュースの購読者は6億5,000万人、デジタルビデオの購入者は5億8,000万人、国内最大手のEコマースプラットフォーム、淘宝網(タオバオワン)のアクティブユーザーは月5億8,000万人にのぼります。これはアマゾンよりおよそ80%上の大きさです。

自転車や自動車のオンデマンドトラベルサービスは今や中国で年間100億の利用があります。これは世界中の全旅行の3分の2です。

つまり、中国でのテクノロジーの進歩は一長一短なのです。

たしかに中国のインターネットは規制されていて、操作された形で存在しています。これは間違いありません。しかしながら、かなりの利用者がいて、国民の生活の質をかなり向上しました。

だからこそ欠点はあれど、中国のインターネットの成長は受け入れられるべきです。また、より詳しい調査に値するものなのです。

地方経済と教育の変革

ゲアリー・リウ氏:もう2つ話をさせてください。まずは江西省で生まれ育った34歳のエンジニア、 羅昭劉(ルオ・ツァリオ)のお話です。

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ゲアリー・リウ氏:ルオの故郷は紅軍の発祥地。共産党にとって極めて重要な場所だったそうです。しかし時が経つにつれて、国の経済活動の中心や製造中心地からかけ離れていたため、忘れ去られていきました。

ルオは、同世代の人がそうしたように、主要都市で働くために故郷を若くして離れました。彼はテクノロジーの中心地の1つ、深セン市に身を置きます。若者たちが移住するにつれて、村には赤貧にあえぐ高齢者が取り残されました。

9年が経ち、2017年、ルオは江西省へ戻る決意を固めました。彼は急成長する中国のEコマース市場で故郷を復興できると考えたのです。多くの農山村がそうであるように、ルオの故郷は特産品、「豆腐」の製造に特化していました。

小さな工場を建て、特産品のネット販売を始めました。中国の主要都市では、消費の伸びが何年も持続していました。技術の進歩の影響で中流階級や上流階級の間で、クラフトグッズに火がついたのは近年のことです。WeChat並びその他Eコマースプラットフォームのおかげで、元の販売可能区域をはるかに超えた商売を地方生産者に可能にしたのです。

リサーチ会社は”タオバオ村”を数え、影響を追っています。”タオバオ村”は最低10%以上の世帯がオンライン販売を行っていて、ある一定の利益を得ている村を指します。

ここ数年で、普及は目まぐるしいものでした。2013年では、たった20しかなかったタオバオ村は、2014年には212村、2015年には780村、2016年には1,300村、そして2017年終盤には2,100村にのぼりました。今や50万のオンラインストアを占め、190億ドルの年間売上高を記録し、130万の雇用を生み出しました。

帰郷してから1年目で、ルオは15名の村民を雇い、豆腐を6万個販売できました。急速に需要が伸びる中、来年は30人新たに雇用する予定だそうです。

Edtech(エドテック)の効果

ゲアリー・リウ氏:中国の地方各地には、出稼ぎ親に取り残された6,000万の子がいます。少なくとも片方の親とは離れて、彼らは成長していきます。田舎生活の一般的な困難に加えて、多くの子どもはただ学校に行くためだけに長く険しい道を歩みます。

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ゲアリー・リウ氏:国内の小学生と高校生の30%がそんな子どもたちです。

10歳の常文軒(チャン・ウンケン)はそのような児童の1人です。毎日、1時間かけて幽谷を超えて、登校します。甘粛省にある小さな農村に到着しても、全学年から他に2名の生徒がいるだけです。チャンの学校は甘粛省にある全校生徒が5名以下の1,000校中の1つにすぎません。

限られた学友、資格を持たない先生や不自由の多い孤立した学校を与えられ、生徒たちは長い間不利な状況に置かれていました。高等教育への道なんてあったもんじゃありません。

しかし、チャンの未来は『サンシャイン・クラスルーム(Sunshine Classroom)』の導入によって一変しました。現在、彼は28校から100名の生徒を集めたデジタルクラスの一員で、遠く離れたところからライブストリーミングを行う正式な教員の授業を受けています。

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ゲアリー・リウ氏:音楽や芸術などの新たな教科や新たな学友、故郷とはかけ離れた体験が、彼には与えられました。最近ですと、デンマークのフレデリクスボー城を訪問したそうです。もちろんバーチャル上で。

国外では、オンライン教育は何年も存在していました。しかし、真に影響のあるまでは及びませんでした。恐らく、技術を持つ他国の教育制度がずっと安定的で、進んでいたためです。

中国の広大な地が、イノベーションへの早急で巨大な需要を生み出したのでしょう。深セン市には、たったの1年で30万名の生徒へと展開したスタートアップがあるくらいです。

サウスチャイナ・モーニング・ポストの最大限の調べによると、現在、ライブストリーミング教室を利用している地方の生徒が中国全土で5,500万名います。この市場需要はアメリカの幼稚園生から12年生(高校3年生)までの数よりも多いです。


イノベーションの目的を「恵まれない層」へ!

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ゲアリー・リウ氏:私は中国のEdtechの分野に年10億ドル超の民間投資が行われ、今から2020年までの間に300億ドルの公的資金が公表されたことを非常に喜ばしく感じております。欠点や規制は未だにありますが、中国のインターネットが伸びるうちに、忘れ去られた人々の生活は決定的に変化しました。

”ただ欲しい”だけの人口ではなく、”必要”としている人口に焦点が当てられ、たくさんの好奇心やクリエイティビティ、発展が行われました。これからも増えていくのでしょう。

アメリカでは、インターネット人口、もしくはインターネット普及率が88%に到達しました。中国では、人口のたった56%です。それは、6億人がオフラインで、ネットから切断されていることを意味します。アメリカの人口のほぼ2倍の数です。そこには巨大な機会が眠っています。

”別の燃料”が中国やアフリカ、東南アジアやアメリカの主要都市、どこに眠っていようとも、我々は資金と努力で追い求めるべきです。そうすれば、世界中で経済的、社会的な効果が見えてくるでしょう。

我々の発明の矛先が世界中の恵まれていない層に向けられたら、どんなことが可能になるか、想像してみてください。

ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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