1. スティーブ・ジョブスの後継者ティム・クック「現状を否定し勇猛果敢に挑むこと」デューク大学卒業式スピーチ

スティーブ・ジョブスの後継者ティム・クック「現状を否定し勇猛果敢に挑むこと」デューク大学卒業式スピーチ

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 現在、アメリカでは卒業式シーズン。大学生たちが卒業し、それぞれの道を歩み始める時期だ。

 2018年5月11日から13日、名門デューク大学では第166回目の卒業式が執り行われた。卒業式スピーチに招かれたのはApple社CEOのティム・クック氏。彼もデューク大学の卒業生なのである。

 現状を否定し、勇猛果敢に課題解決へ挑む大切さをクック氏は語った。

「2018年度卒業のみなさん、おめでとうございます!」

ティム・クック氏:ブルーデビルたち、こんにちは! デューク大学を再び訪れることができてとてもうれしいです。公演者、そして同じ卒業生としてみなさまの前に立てることを光栄に思います。

1998年、私はフクア・スクールで学位を取得しました。このスピーチを準備していて、私は当時一番好きだった教授のうちの1名に連絡することにしました。

ボブ・ラインハイマー教授は、マネジメント・コミュニケーションを教えていました。講義の目的の1つは、スピーチ力を磨くことです。

私はラインハイマー教授と数十年ぶりに話しました。「80年代、プレゼンテーションが格別に上手な生徒がいたのを覚えています。才気溢れる、すてきな性格の持ち主でした」と言ってくださり、大変うれしく思いました。

続けて「その頃から、偉大なことを達成するのを予期していました」と付け加えてくださりました。

そう伝えられた私の気持ちは容易に想像できるでしょう。ラインハイマー教授は、人を見る目があります。今自分で考えてみても「彼の直感は正しかった」そう確信できます。

メリンダ・ゲイツ氏(ビル・ゲイツ氏の妻。同じくデューク大出身)は間違いなく偉大な成功者です。

(会場笑)

ラインハイマー教授、ボールディング学部長、そしてすべての教授たち、あなた方の教えは今日という日まで私の中に残っています。プライス学長と教授たち、評議員会には、みなさまとお話する機会をいただいて、ありがとうございました。くわえて、今年の名誉学位取得者、おめでとう。

何よりも2018年度卒業のみなさん、おめでとうございます!!

(会場拍手)

己の力でここまで来られた卒業生はいません。今まで応援をしてくれたご両親やご祖父母、ご友人に感謝をしましょう。

(会場拍手)

特に今日は、デューク大学を卒業する私を見守ってくれていた母親のことを思い出します。彼女のサポートなしでは今の私はおろか、大学卒業もできなかったでしょう。本日ご来場の全母親に感謝をしましょう、今日は母の日です。

(会場拍手)

「あなた方の人生第一部にお別れを告げましょう」

ティム・クック氏:私はこの大学ですばらしい思い出をつくりました。勉強もそうですが、それだけではありません。

今でも交流のある友人と、キャメロン体育館でチームの勝利を祝っておりました。ノースカロライナ大学に勝利したときなんて、大騒ぎでしたよ。

現代人の力

愛情をもって過去を振り返り、あなた方の人生の第一部にお別れを告げましょう。すぐに前を向いてください。なんせ第二部は今日からなのですから。

手を伸ばし、バトンを受け取る日がついに訪れました。

あなた方は大きな課題のある時代に生まれました。我々の国の分裂は根深く、国民の大半が自分とは違う意見を頑なに受け入れません。

地球の温暖化が進めば、おぞましい結末が待っています。しかし中には温暖化を根本的に否定する人もいます。

学校やコミュニティは不平等に苦しんでおります。すべての生徒に良質な教育を保障することができていません。

しかし、これらの課題に直面しても我々は無力ではありません。

解決するのに「あなた」は無力ではないのです。あなた方の世代ほど、力を持っていた世代はありません。素早く変化をつくれる世代はいません。

変革までのスピードは劇的に加速しました。テクノロジーの進化によって、1人1人がよりすばらしい世界をつくるツールや潜在能力、発信力を持っております。これらの要素が現代を史上最高の時代にします。

スティーブ・ジョブスによる学び

あなた方には、奈にをするにしても、熱意でどこに導かれるにしても、与えられた力を正しく使っていただきたいです。「自分が生まれたときよりもいい世界だ」とこの世の去り際に信じられることを目指しなさい。

昔は今ほど人生を明瞭にとらえておりませんでした。しかし私は、人生最大の挑戦が「普遍的な概念を打ち砕くこと」と学びました。

受け継いだ世界をそのまま受け入れてはなりません。現状を甘受してはならないのです。大胆に見方を変えて、違うことを試さない限り、大きな課題解決や持続的な向上は実現できません。

幸運にも、私は上記のような考えを強く持つ人物に出会うことができました。世界を変えるのは道をたどることではなく、ビジョンを追い求めることであるのを彼は熟知していました。

私の友人であり、そして師であるその人物の名はスティーブ・ジョブス。

(会場拍手)

スティーブは「現状を絶え間なく拒否することから名案が生まれる」という価値観を持っておりました。この考え方はApple社で、今日という日まで生きております。

我々は「地球温暖化は回避不可能」という見解を受け入れません。だからこそ、Apple社では100%再生可能なエネルギーを利用しています。

(会場拍手)

ありがとうございます。

我々は「テクノロジーをフル活用するためには、プライバシーを犠牲にしなければならない」という言い訳を拒否します。そのため我々は違う方法を採りました。個人情報の収集を最小限に抑え、それが我々の手に渡ったときは、思いやりと丁重さを持って保護しています。個人情報がみなさまの所有物であることを心得ているからです。

いつでもどこでも、我々が自問するのは「今できること」ではなく「すべきこと」です。これこそが変化をもたらす方法であるとスティーブは教えてくれました。「もののあり方に満足してはいけない」と私が学んだのもスティーブからです。

若い人たちはこのようなマインドセットを自然に持っているように思います。どうかその不満を捨てないでください。

「現状にどう挑みますか? 世界をどのように前進させますか?」

ティム・クック氏:本日の式は、学位を授与するためだけのものではありません。ある質問を提示するためのものでもあるのです。

あなたは現状にどう挑みますか? 世界をどのように前進させますか?

50年前の今日、1968年5月13日にロバート・ケネディ(ジョン・F・ケネディ氏の実弟)はネブラスカ州で選挙活動を行っておりました。そこでは、先述の質問と奮闘する生徒たちと話す機会がありました。

当時も課題の多い時代だったのです。アメリカはベトナムと戦争をしており、市民は混乱していました。加えて、キング牧師暗殺事件は尾を引いておりました。

ケネディ氏は生徒たちに行動するように呼びかけました。この国を見渡してみると、差別や貧困で不利になっている人々が存在します。

不公平や不正が存在しているとき、「決して現状を受け入れてはならない」と伝えました。

ケネディ氏の言葉を今一度、ここで響かせましょう。決して現状を受け入れてはなりません。

薬学やビジネス、エンジニアリングや人文学科、あなたが情熱を持って取り組めるどんな道を選んだとしても「自分が後世に継ぐ世界は改善できない」と納得する一番最後の人間になりましょう。

「ここではこれが普通なんだ」とい言い訳をする一番最後の人間になりましょう。

デュークの卒業生たちよ、あなた方は変革を最後まで決してあきらめないでください。そして変革の先駆者になりなさい。

(会場拍手)

あなた方が受講し、努力をした世界レベルの教育は、限られた人間にしか与えられない機会をもたらすでしょう。あなた方はそれぞれ自分にしかできないことがあり、ゆえに「世界をよくしなければならない」という大きな責任があります。簡単にはできませんし、多大なる勇気が必要となるでしょう。

その勇気はあなたの人生を最高に充実させるだけではなく、人々の人生を一変させる力を与えてくれます。

勇気とは何か

先月、キング牧師の50周忌のためバーミングハムへ赴きました。身に余るほど光栄なことに、私はキング牧師のそばで行進し、活動した方々とお話ししました。

行進に参加した人たちの大半は、当時あなた方よりも若かったです。両親に逆らい、座り込みやボイコットに参加したとき、そして警察犬や消化ホースを目前にしたとき、彼らはためらうことなく正義のために全身全霊、戦いました。

そのような行動をしたのは、変化の必要性を確信していたためです。大儀を信じていたためです。そしてどんな困難に見舞われても、「次世代のために世界をよくしよう」という信念、チャンスがあったからです。

彼らの行動から、我々全員が学べることがあります。

「世界に変革をもたらしたいのなら、勇猛果敢にならなければならない」です。

大学卒業時の私のような人がいらっしゃったら、勇猛果敢な気持ちはさほどないでしょう。将来就きたい職について考えているかもしれません。あるいは住む場所や奨学金の返済についてかもしれません。

これらは私自身が経験した現実的な問題です。しかし、そのような困難から変化をもたらす邪魔をされてはなりません。

勇猛果敢というのは行き先のわからない中、第一歩を進むことです。名誉にではなく、大切な目的に導かれることを指します。大衆の一部になるのではなく、大衆から距離を置き、自分自身をさらけ出すことを理解していることです。

失敗を恐れずに成長できれば、拒否を恐れずにお互い会話ができれば、たとえ誰も見ていなくても、かなり些細なことにも思いやりと良識をもって行動すれば、あとはパズルのようにはまるでしょう。

何よりも、大きな課題に直面したときに、全身全霊で取り組むことができるようになります。勇猛果敢さが本領発揮するのは、真に困難な状況に出会ったときです。

たとえば、銃暴力の伝播について「黙認」を拒否したフロリダ州パークランドの生徒たちのような勇猛果敢さです。おかげで彼らは数百万もの声を集めました。

(会場拍手)

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例えば、「#metoo」や「#timesup」を世に提示した女性たちのような勇猛果敢さ。暗い出来事に光を投じ、より公平公正な未来へ導いてくれる女性たちのことです。

(会場拍手)

例えば、希望に満ちた未来は貢献したい人は誰でも歓迎する世界であると理解していて、移民たちの権利のために戦う人の勇猛果敢さ。

(会場拍手)


「正しいことをするタイミングに間違いなどない」

ティム・クック氏:デューク大学の卒業生諸君、勇猛果敢になりなさい! 現状を受け入れる最後の人間になり、最初に声を上げ、変化をもたらす人間に是非なってください。

1964年、キング牧師はペイジ講堂(デューク大学)で公演を開き、大勢の生徒が訪れました。席が取れなかった生徒たちは、外で傾聴しました。

「いつか、悪い言動のみが罪になるのではなく、「時を待とう」と勧めるおぞましい黙認や無関心さも罪になる時代が来るでしょう」とキング牧師は警告しました。

(会場拍手)

彼はまさにこの場所で「正しいことをするタイミングに間違いなどない」と主張したのです。

卒業生のみなさまにとって「タイミング」は「今」です。

それはいつだって「今」なのです。

「進歩」という道にレンガを積み上げる時が来ました。我々全員が「前進」をすべき時が来ました。そしてあなた方が道を開拓して、「先導」すべき時がついに来たのです。

ご清聴ありがとうございました! 2018年度卒業生のみなさま、おめでとうございます!

(会場拍手)

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