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西田宗千佳のトレンドノート:iPhone/iPadのARアプリは進化していた!使える・遊べるアプリ3本

西田宗千佳

2018/05/21(最終更新日:2018/05/21)


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 iPhone・iPad用OSの最新版である「iOS11」には、「ARKit」という機能が搭載されている。これを使ったアプリでは、現実世界に映像をうまく重ね、現実だけでは得られない便利さや面白さを生み出せる。いわゆる「拡張現実(AR)」を実現するから「ARKit」だ。

 iOS11が公開されたのは昨年秋。もう半年以上が経過しているが、「使ったことないなあ」という人も少なくないと思う。

 では、どんなことが出来るのか? 今回は3本のアプリを紹介してみたいと思う。どれも「ちょっとしたこと」だ。だが、どれもARKitがなければ実現が面倒なことであり、今までのアプリとは違う価値観を持っている。

ドラえもん的な「宝島ごっこ」を無料アプリで楽しめる「ARrrrrgh」

 子供の頃「宝島ごっこ」をしたことはないだろうか。自分で「宝島の地図」を描いて、そこにちょっとしたものを隠し、友達に探させる遊びだ。自分は、「ドラえもん」の中でのび太達がやっているのを見て、「同じ事がやりたい」と思って始めたような記憶がある。

 そんな「宝島ごっこ」も、スマホとARKitが絡むと「ドラえもん」の中に描かれていた光景に近づいていく。「ARrrrrgh」(開発元:Warpin Media AB 価格:無料)はそんなアプリの1つだ。

ARrrrrgh

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 ARrrrrg。英語のみのアプリだが、文字はほとんどないので子供でも楽しめる。

 このアプリは2人以上で遊ぶ。まず、「宝を隠す人」が好きな場所に歩いていって、隠したい場所で「穴を掘って宝箱を隠す」。画面上には、実際に穴が掘られて宝箱が埋められる。もちろんこの時は、どこに埋めたのか、相手にばれないように!

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歩き回って、気になる場所に宝箱を「埋める」。実際に地面が掘られているところに注目。

 そして、今度は宝を探す人にiPhoneを渡す。地図の上には「宝箱までの距離」が表示されているので、それを手がかりに歩き回る。

「ここだ!」と思う場所に来たら穴を掘る。そこに宝箱があれば出てくるし、そうでなければ穴は掘れない。

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画面の上には、宝箱までのだいたいの距離が表示されている。これを目印に宝箱を探す。
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見事宝箱を発見!きちんと地面に埋まっている。

 とってもシンプルなアプリだが、やってみると意外なほど面白い。理由は、現実の床に穴が掘られて、そこから宝箱が出てくるから。

 現実にアプリ内の世界が影響を与え、ちょっとした楽しみにつながる。まさにARでなければできない遊びだ。

方向音痴に朗報「Yahoo! MAP」にARナビがついた

 次に紹介するのは「地図アプリ」、それも、みなさんよくご存じの「Yahoo! MAP」(開発元:ヤフージャパン 価格:無料)だ。

Yahoo! MAP

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 Yahoo! MAP。おなじみの地図アプリだが、方向音痴を助ける「AR機能」が搭載された。

 方向音痴の人間にありがちな問題として「駅を出たのはいいが、どちらに行けばいいのかわからない」ということがある。

 地図があっても、自分がどちらを向いているのかが正確に把握できていないと、結局迷う。電子コンパスの存在により、地図アプリには向いている方向が出るようになっているが、それでも、目の前の風景と地図アプリが示すものが一致していないと、どうにも不安になるものだ。

 そこでヤフーは「ARナビ」を追加した。いわゆる徒歩ナビゲーションによる経路の情報を、カメラから得た実景の上に重ねるのだ。こうすると、どの方向に歩き出せばいいかが一目瞭然。

 ちょっと面白いのは、経路の途中に看板が現れることだ。目的地まであとどのくらいなのかが数字で表される。後ろを向けば、これまで歩いてきた道に経路が残っているのもわかる。

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徒歩ナビの際に、実際の風景に歩くべき道筋が表示されるようになった。あとどれくらい歩くべきかもわかる。くれぐれも「歩きスマホ」にはご注意を。

 ARKitは、平らな面の認識と、「空間の中でどこになにが配置されているのか」という情報の記録、という機能をもっている。これをうまく組み合わせると、ナビの情報を地面に貼り付けることができるようになるわけだ。

 過去にも「AR地図」的な機能を持ったアプリはあったが、方向を示す矢印が地面からズレたりして、手間の割に効果は今ひとつだった。Yahoo! MAPのARナビも、まだ若干の位置ずれがあり、完璧とは言えない。

 しかし、地面にきちんと貼り付くようになったことで、「どこにいくべきか」「自分はどこから来たのか」がしっかりわかるようになった。

 ARKitを使った、アップルの純正地図アプリがなぜ搭載していないのか、不思議なほどの便利な機能だ。

近寄って自由に楽しめる美術館「Boulevard AR」

 美術館での絵画鑑賞は楽しいものだ。しかし、著名な作品ともなると多数の人が集まり、じっくり鑑賞するのが難しいのが実情。そのため、デジタルデータで絵画を見せる試みは多数ある。しかし、単に画像になった絵画を見ても、あまり面白くないのは事実である。

 そこで出てきたのが、ARやVRを使う、という考え方。そこでご紹介するのが「Boulevard AR」(開発元:Boulevard Arts, Inc. 価格:360円)だ。

Boulevard AR

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 これはiPhoneよりも、iPadで楽しむのに向いたアプリである。16世紀のイギリスの外交官、ヘンリー・アントン卿の自画像を鑑賞するアプリなのだが、単に絵が出てくるわけではない。

 壁に絵が「実物大で」貼り付くのだ。それをARで好きな場所から見られる。横から見てもいいし、近寄ってもいい。近くで見れば、絵の「刷毛目」までわかる。元々、自画像が8Kでデータ化されていて、十分なディテール情報があるから、こういう使い方をしても問題ない。

 Boulevard AR。本当の壁には絵はないが、iPadの中から見ると、実際と同じサイズの絵がそこに見える。

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絵は額縁まで立体的に作られているので、よこから見ることも可能。
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絵は8Kでデータ化されていて、近寄れば刷毛目まで見える。

 実は、昨年秋にiOS11が登場した時には、こういうアプリは作れなかった。認識できるのが「水平な面」に限られていたからだ。

 だが、最新の「iOS11.3(3月公開)」からは、壁のような「垂直の面」も把握できるようになったため、Boulevard ARのように「仮想の美術館を作る」ようなアプリも可能になった。


「進化の過程を楽しめる」こともARの魅力

 これらのARアプリがやっていることは「すごくて震える」ような話ではない。日常の空間にちょっとした情報を追加してくれるものに過ぎない。

 だが、それでいいのだ。

 まだまだ面倒で、スマホでのARは「毎日欠かさず使うもの」にはなっていない。しかし、ここで紹介したようなアプリが出てきて、日常になっていくことで、もっと多くのアプリの中でARが使われるようになっていくだろう。

 そのうち、「ここにARを使うとすごく便利だった」というなにかが見つかるはずだ。技術の進化とともに、アプリの使い方も変わる。ARアプリの進化は、その過程を我々が体験できる、という意味でも貴重なものなのである。


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