「上司の過干渉にはもううんざり」「部下の小さなミスが気になってしょうがない」——部下、管理職それぞれの不満の原因は“マイクロマネジメント”にあるかもしれない。
今回は部下の心を壊し、組織を崩壊させかねない“マイクロマネジメント”の特徴と対処法について解説していきたい。
マイクロマネジメントとは?
マイクロマネジメントとは「過干渉」のこと
マイクロマネジメントを一言で表すと、上司が部下の仕事に対して「過干渉」になること。
管理職、上司が部下の仕事へ過度に監督や干渉を行うことを否定的な意味で示す際に使われる「マイクロマネジメント」。
マイクロマネジメントについては、Google人事のトップが執筆したことで話題になった書籍『WORK RULES!』でも以下のように述べられている。
マイクロマネジメントのチェックリスト
マイクロマネジメントを受けている/しているかをチェック!
部下の仕事に対して過干渉、過度な監督をしてしまうマイクロマネジメントだが、一体どんな特徴があるのだろうか?
部下であれば自分がマイクロマネジメントをされているのか、管理職・上司の立場であれば自分がマイクロマネジメントをしているかどうか、以下のチェック項目で確かめてみよう。
チェック数が多ければ多いほど、マイクロマネジメントをしている、されている恐れがあるということになる。
部下と上司、それぞれの立場に合ったチェックリストで確認してみてほしい。
【部下編】マイクロマネジメントのチェックリスト7項目
- 上司、管理職が過去の成功体験への固執している
- 「上司と部下」という関係性にこだわっている
- 目標達成への過重な圧力をかけられる
- 頻繁に業務報告、自分の仕事を共有することを求められる
- 些細なミスを追求される
- メールのCCに都度自分を含むように注意される
- 仕事における上司の好き嫌いを押し付けられる
【上司編】マイクロマネジメントのチェックリスト10項目
- マネジメント経験が少ない、経験不足であるために不安を抱えている
- 部下の仕事は全て把握しておきたい。どこにいるのか、何に取り組んでいるのかを常に把握していたい
- 部下が犯しかねない仕事に関するあらゆるリスクを消しておきたい
- 部下のどんな小さなミスでも気になる、原因追求する
- 部下を信頼していない。部下に仕事を任せられない
- メールのCCには必ず自分を入れるように指示している
- 責任範囲内の仕事は、隅々まで自分の思う通りにしておきたい
- 部下の成果物、仕事の出来に深く満足できたことがない
- 自分なら違うやり方で仕事を進めるのに、というもどかしさを頻繁に覚える
- 部下に対して頻繁に進捗報告を求める
マイクロマネジメントをしやすい人とは?
以上の項目が全て当てはまる、心当たりがあるという人は、マイクロマネジメントをしている・されている可能性が高い。
では、一体どんな人がマイクロマネジメントをする傾向にあるのだろうか?
部下を持つ前に自分がマイクロマネジメントをしやすいタイプかどうか、下記を参考に省みてみよう。
マイクロマネジメントをしやすいタイプの4つの特徴
- 準備段階では完璧さを追求するが、本番はないがしろにしやすい
- 幼少期から勉強や物事の進め方にこだわりがあった
- 「変なところに気を遣う、気にするよね」と友人にいわれたことがある
- 自分では真面目だと思っていないが、人から「真面目」だと思われている
マイクロマネジメントが部下や組織にとって“害”とされる理由
今までマイクロマネジメントについて否定的な記述の仕方をしてきたが、マイクロマネジメントが部下や組織にとって“害”であるといわれるのは何故なのだろうか?
マイクロマネジメントが部下に及ぼす影響とは?
部下の仕事に対して、上司が過干渉するマイクロマネジメントだが、上司の性格によっては部下に悪影響を与えかねない。
マイクロマネジメントが部下や組織に及ぼす悪影響として、一般的には以下のものが挙げられる。
マイクロマネジメントが部下と組織に及ぼす6つの悪影響
- 部下の自主性がなくなる。自発的に行動しなくなる
- 怒られたくない一心から異常にミスを恐れるようになる
- 上司にアラ探しされる恐怖に怯えながら仕事をする。部下がのびのびと仕事をできなくなる
- 出社から帰社まで常に上司に監視されている感覚に陥る
- 自分で考えることをやめて、思考停止したロボットのように仕事をこなすようになる
- 必要以上な報連相によって、組織にとってタイムロスが発生する
マイクロマネジメントが奪う「のびのびと仕事できる環境」
上記のことから、マイクロマネジメントは「のびのびと仕事できる環境」を部下から奪ってしまうマネジメントといえる。
部下を注意する際に上司がパワハラまがいな言葉を用いると、部下はより萎縮してしまうものだ。
監視状態の中で怯えながら仕事をする部下が、入社するときに評価されていた長所を100%発揮できるだろうか? 自発的に上司に何かを提案できるだろうか?
マイクロマネジメントによってのびのびと仕事できる環境を奪うということは、部下の長所を殺しかねないということを覚えておいてほしい。
マイクロマネジメントが組織に及ぼす悪影響とは?
組織内が、上司や管理職に怯えながら働くメンバーで溢れてしまうとどうなるだろうか?
管理されているメンバー全員が恐る恐る働いていると、職場全体にギスギスとした悪い雰囲気を蔓延してしまうだろう。
また、上司や管理職が過度な報連相を求めるとタイムロスに繋がり、仕事の進捗が遅れてしまうというケースも想定できる。
マイクロマネジメントは部下という個人だけでなく、組織にとって悪影響を及ぼすことが十分に考えられるのだ。
【部下編】マイクロマネジメントへの対処法
部下にとって厄介なマイクロマネジメントだが、マイクロマネジメントをする上司に対してどのように対処すればいいのだろうか?
マイクロマネジメントをする上司の特徴から考えた攻略法が以下の通りだ。
マイクロマネジメント上司の攻略法
- 仕事の内容の大小に関わらず「とにかく上司より先」に自分から報告・共有する
- 確認の必要がないと思える内容でも「〇〇でよいでしょうか?」と確認する
- マイクロマネジメントが終わるまで上司に反論しない
- 上司とコミュニケーションとるときは笑顔、ヘラヘラした雰囲気が嫌いな上司には真剣な表情を心がける
- とにかくミスをしないように最大限の努力をする
- ミスをしたらいち早く「現状」「自分が考える対処法」「上司に相談したい事項」を共有する
- 上司の考え方に共感できなくても実践してみて、行動の結果を上司に報告する
攻略ゴールはマイクロマネジメント上司からの“信頼獲得”
極端なマイクロマネジメントを行っている上司の場合、部下への信頼度がかなり低いことが考えられる。
信頼度の低い部下から意見をいわれたとしても、上司は聞く耳を持たないだろう。
また、マイクロマネジメントを行う上司は「自分がマイクロマネジメントをしている」ということに気づきにくい傾向がある。
マイクロマネジメントを行う上司自らが反省し、部下への態度を変えるということは極めて稀であると考えよう。
上司からの信頼を得るまで愚直に上記の攻略法を実践してみてほしい。
マイクロマネジメントをする上司から離れるのも対処法の一つ
パワハラの一種としても考えられるマイクロマネジメントは、部下の心を壊す危険性をはらんでいる。
部署異動願いを出したり、転職を考えてみたりと、マイクロマネジメントを行う上司や管理職から離れることも対処法の一つだ。
異動できない職場、異動しづらい環境である場合には、ストレスで精神が追い詰められてしまう前にキャリアアドバイザーに相談してみるといいだろう。
マイクロマネジメントを受けていて「今にも精神的な限界を迎えそう……」という人は、何よりも大切なのは自分の心と体の健康だと考えて一歩踏み出そう。
【上司編】マイクロマネジメントを治す方法
上司、管理職自身が気づきにくいマイクロマネジメント。
もし自分に少しでもマイクロマネジメントの兆候があるようであれば、以下のポイントに注意しながら部下に接してみてほしい。
マイクロマネジメントをやめるための5つ方法
- 自分の言い分を正当化することをやめる
- 部下に任せられる仕事、自分が最も価値を付加できる仕事を分ける
- 「最終成果物のイメージ」をしっかり説明し、成果を出すまでのアプローチ計画には口出しせずに確認だけする
- 成功条件を満たすための必要なりソース、情報、サポートを提供して、部下の成功を期待する
- 部下の小さな失敗を許容する
マイクロマネジメントをやめる方法①:自分の言い分を正当化することをやめる
「私がやったほうが、自分の時間を節約できる」「仕事を期日までにやらなければ、私の信用が危うくなるから」「チームの仕事に深く関与することを上が望んでいる」——このように自分の言い分を正当化した経験はないだろうか?
これらはいずれもマイクロマネジメントを行う上司が、過干渉を正当化するときの一般的な言い分とされている。
マイクロマネジメントをやめたいという人は、過剰管理を正当化する理由ではなく、過剰管理すべきではない理由を探してみよう。
マイクロマネジメントをやめる方法②:部下に任せられる仕事、自分が最も価値を付加できる仕事を分ける
マイクロマネジメントを行う上司の特徴の一つである「部下を信頼できないから、部下に仕事を任せられない」ということ。
部下に仕事を任せるコツは、少しずつ仕事を手放していくことにある。
まずは部下と共有している仕事を一覧化し、「部下に任せられる仕事」「自分が最も価値を付加できる重要な仕事」に振り分けてみよう。
部下に任せる仕事を決めたら、部下と一緒に“上司の関与を必要とするライン”を決めていく。
部下に任せられる仕事に適度に関与し、自分が最も価値を付加できる重要な仕事に丁寧なフィードバックを返そう。
こうすることで、過干渉を防げるようになる。
マイクロマネジメントをやめる方法③:「最終成果物のイメージ」を説明し、成果を出すまでのアプローチ計画には口出しせずに確認だけする
上司、管理者の役割は「部下に割り当てる仕事の成功条件を明確に定義、設定すること」にある。
あくまで最終成果物の成功条件を伝えるだけであるため、「どのように達成するか」を伝える必要はない。
「何を達成すべき、何をなすべきなのか」だけを共有し、どうやって達成するかの計画を尋ねてみよう。
部下のアプローチ方法を確認した後は、自分と異なるやり方でも決して口出ししないことが重要だ。部下の可能性を信じてあげよう。
マイクロマネジメントのやめる方法④:成功条件を満たすための必要なリソース、情報、サポートを提供して、部下の成功を期待する
上司、管理職の役割だが、先に紹介した仕事の成功条件を明確に設定すること以外にも「部下が成功条件を満たすための必要なリソース、情報、サポートを提供する」という役割もある。
部下が成功へのイメージを明確に描けるように、上司がとことんサポートするのだ。
マイクロマネジメントをやめる方法⑤:部下の小さな失敗を許容する
あれこれサポートしても、きっと失敗してしまうこともあるだろう。
その際に小さなミスを追求するのではなく、まずは部下のミスを許容することから始めてみてほしい。
許容した上であれば部下を叱る際の語勢も落ち着き、的を射た評価を与えることができる。
マイクロマネジメントの特徴と対処法について解説してきた。
存在そのものを知らなければ、部下も上司も具体的な対処法がわからないマイクロマネジメント。
本記事で紹介したマイクロマネジメントの特徴に心当たりがあるという人は、上司であれ部下であれ、対処法を実践してみてほしい。
上司と部下、組織の人間関係を改善する糸口になるかもしれない。
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