1. 西田宗千佳のトレンドノート:プロ野球もJリーグも手に入れた「DAZN」の今

西田宗千佳のトレンドノート:プロ野球もJリーグも手に入れた「DAZN」の今

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 春が近づき、日本のプロスポーツも2018年シーズンの開幕を迎えている。スポーツを視聴する環境として、今年はいきなり「DAZN」の存在感が大きくなってきた。

 2017年からJリーグの配信権を取得して注目を集めてきたが、今年はさらにプロ野球・11球団のホーム戦の配信権を取得し、さらに注目度が高くなった。

 今回は改めて、DAZNにコンテンツが集まった理由と視聴方法についておさらいしておこう。

プロ野球配信で勢いにのるDAZN

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2月16日の発表会より。プロ野球の配信が始まることを大きくアピールした。

 2月16日に都内で開かれた発表会にて、DAZNのジェームズ・ラシュトンCEOは「DAZNはスポーツの本拠地を目指す」とキャッチフレーズを紹介した。現在DAZNは、このキャッチフレーズでテレビCMなども積極的に行っているため、目にした方も多いだろう。

 彼らのいう「本拠地」発言のベースになっているのは、メジャーなプロスポーツの配信がDAZNに集まってきた、ということが大きい。DAZNは2016年8月に日本参入を果たした際、Jリーグとの間で、2017年度シーズンより10年間の放映権契約を交わしたことで話題になった。2017年春の配信開始直後には配信が途切れるなどのトラブルもあったものの、その後はかなり改善している。

 DAZNはそれだけでなく、UEFAチャンピオンズリーグ・UEFAヨーロッパリーグ、UEFAスーパーカップなどのサッカー欧州リーグ、F1などのモータスポーツに自転車競技、VリーグにBリーグと、多数のプロスポーツジャンルをカバーしている。

 そこに今年、大きな武器として追加されたのが「プロ野球」の存在だ。DAZNでは、巨人以外の11球団の公式戦主催試合(ただし、広島については広島県内でのライブ配信は対象外で、中日の公式戦は主要試合に限定)が、生配信・オンデマンド両方で配信される。

「スポナビライブ」撤退で状況が激変

 昨年まで、プロ野球の配信は、ソフトバンクがヤフーと共同で運営していた「スポナビライブ」というサービスで視聴できた。

 スポナビライブは、ソフトバンクの携帯電話の利用者なら月額980円(当初は画質こそ低いものの、500円とさらに安かった)で見られることを特徴に、「JリーグのDAZN対プロ野球・大相撲のスポナビライブ」という対立構図が生まれていた。

 だが、2018年2月になって、突如雲行きが変わる。ソフトバンクが5月31日をもって、スポナビライブのサービスをすべて終了する、と発表したからだ。スポナビライブで配信者されていたコンテンツのうち、大相撲をのぞく大半のスポーツは、DAZNでの配信に切り替わることとなった。

 どうやらこの話はかなり急なものだったようで、権利元であるスポーツ関係者の側でも、DAZNの側でも、それなりの混乱があったようだ。

 スポナビライブがサービスを止めることになった理由は明かされていないが、会員獲得にはかなり苦労していたようだ。DAZNがJリーグの独占権を得て配信を始めるまではスポナビライブの方がユーザー数は多い、と言われていたが、2017年に入ると逆転し、DAZNの好調さが目立つ形になった。

 DAZNもスポナビライブも正確な利用者数を公表していないが、DAZNは昨年8月、自ら「サービス開始から1年で100万契約を超えた」と公言している。現在はもっと多い値だろう。だがスポナビライブは、それよりもかなり低い水準だったと見られている。

 動画配信には多額のインフラ維持コストが必要で、ユーザー数が一定以上にならないと採算が合わない。最低でも100万単位のユーザーがいないと維持は難しい。ソフトバンクはおそらく、「今後自社でインフラを維持したとしても採算がとれない」と判断したのだろう。

 結果的に、日本のスポーツ配信はDAZNの一強に近い状態となり、衛星放送と競争する状態となった。

DAZNの仮想敵は衛星放送に

 実際、今年のDAZNは、完全にスカパー!やWOWOWなどの衛星放送事業者を仮想敵にしている。各種プロモーションでも「新しさ」「手軽さ」をウリにしている。

 実のところ、プロ野球については、スカパー!が12球団の全試合を放送するため、Jリーグと異なり「独占」というわけではない。DAZNは巨人戦・広島戦・中日戦については、すべてが配信されるわけではない。スカパー!は全試合なので、これらのチームが贔屓ならば、分かりやすさの点でもスカパー!に軍配が上がる。

 しかし、費用や手間を考えると、DAZNがきわめて有利な状態にあるのは間違いない。DAZNは月額1750円(税抜、NTTドコモの利用者は同じサービスを月額980円で利用可能)。それに対しそれに対し衛星放送はパックセットで月額2000円台から3000円台(プロ野球12球団が視聴できるパックで3980円)と、かなり高い。

 DAZNはネットで入会手続きが完了するので、ものの5分もあれば視聴可能になる。また、シーズンオフなどの「あまり見ない期間」は、契約を休んでおく(解約はしないが課金はされない)ことも可能だ。

 DAZNのようなネット配信の場合、視聴のネックとなるのは「ネット回線」の品質だ。放送に近い「フルHD画質」で視聴する場合、DAZN側は「9Mbps以上の回線速度が必要」としている。余裕を考えると、十数Mbpsの速度が出ている通信回線が望ましい。日本の場合、この速度はさほど難しい条件ではなくなっている。

 もちろん、携帯電話回線回線を使う場合、パケット通信料(最高画質の場合、実測で概ね一時間で1GB消費する)の問題はある。家庭などで固定回線を利用して視聴する前提なら、あまり問題ないだろう。

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 視聴可能な機器も、今はかなり広がっている。PCやスマートフォン、タブレットなら、概ね大丈夫なのは当然なのだが、テレビも最新の機種は、内蔵の機能やアプリのダウンロードで対応できる。

 PlayStation 4のようなゲーム機や、Apple TV・Amazon Fire TVのような、テレビに接続するデバイスでも視聴が可能だ。DAZNの場合、サービスには6つの端末が登録可能で、さらに、2つの端末まで同時に視聴ができる。だから、リビングと子供部屋で別々のスポーツを視聴する……といった使い方の場合にも、1アカウントの契約で大丈夫だ。


「配信は録画できない」落とし穴

 こうなると「もう衛星じゃなくても」という感想を持つ人もいそうだ。

 確かに、「見る」ならもう、衛星放送にこだわる必要はない。むしろ、スタジアムでも他球場の試合をリアルタイムにチェックできる、といったメリットがあり、ファンなら入っていて損はない。

 だが、ファンだからこそ気になるのが「残せない」という点だ。

 ネット配信は「録画」できない。ライブ以外で視聴するための「見逃し配信」はあるが、原則として初回放送後30日以内しか残らないし、場合によってはより短い期間で終わるものもある。「名勝負は録画して残したい」ファンにとっては、ネット配信は現状、ニーズを満たすものではないのだ。その場合はやはり、衛星放送がベストである。だが、サッカーの場合、衛星放送では見られない中継も出てきているのが悩ましいところだ。

 現状、合法的にこの点を解決する方法はない。サービス運営側でぜひニーズを汲み取って改善を考えてほしい。

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