1. 西田宗千佳のトレンドノート:「家電の音声対応」は連携よりも「機能」が重要だ

西田宗千佳のトレンドノート:「家電の音声対応」は連携よりも「機能」が重要だ

 スマートスピーカーが日本でも販売されるようになったことで、「声で操作する家電」が今年は増えることが期待されている。

 一方、スマートスピーカーについて「さほど賢くない」との評判も聞こえてくる。声で操作する家電の本質はどこにあるのか? 今年登場する音声対応家電は、どのような部分が支持され、実際に伸びようとしているのだろうか。

家電連携につきまとう「面倒くささ」という課題

 アメリカでは、日本より一足先にスマートスピーカーが普及している。そのため、今年のCESでは、スマートスピーカーと連携する家電が多く展示された。音声で様々な家電のオンオフをしたり、エアコンの温度を調節したり、電動カーテンを動かしたりする機器が目立った。それはそれで、まあ確かに便利ではあるだろう。

 だが、筆者は一方でこうも感じたのだ。

「設定、めんどくさそう……」

 スマートスピーカー連携が抱える、現在の問題点は「面倒くささ」だ。どの機器がどのスマートスピーカーと連携し、どんなことができるかを理解した上で、購入後、自分でスマホから連携の設定を行わなければいけない。

 最初の1回だから……というのがせめてもの救いだが、「ここまでやってこの程度か」という部分もある。人間の行動を読んで、「壁のスイッチを押す」より便利なことをしてくれるならいいのだが、現状は、単純な連携に留まっているのが実情だ。

 一方で「家電の音声連携」に強い期待を抱く人々がいる。それは、テレビを開発している人々だ。筆者は1月に、複数のメーカーのテレビ開発者と話をしたが、その多くが「音声認識は、今年のテレビにとって大きな価値になる」と期待していた。

 2年ほど前から、家電メーカーはテレビに「音声検索」の機能を搭載している。ネット動画や録画番組の検索に使うものだが、今年はこれを、より汎用的な「テレビの操作」に使う方向で考えているのだ。

 例えばソニーは、今年発売するテレビのリモコンに「Googleアシスタント」ボタンをつけた。

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ソニーの2018年モデルテレビのリモコンには、音声アシスタントである「Googleアシスタント」を呼び出すボタンがついている

 なぜ、テレビでの音声認識に、家電メーカーが期待を抱くのだろうか? よくわからない、という人もいるはずだ。テレビにはリモコンがある。

 電源を入れるのもチャンネルを切り換えるのも、ボタンを押すだけでいい。それを音声化したとしても、ボタンを押す方が早いではないか。スマートスピーカーでの家電連携と同じように「面倒くさいだけ」に思える。

テレビの音声対応は「高齢者」を救う?

 だが、テレビメーカーが期待している点を聞くと、その感想が少しずれている、ということが見えてくる。

 彼らが、音声認識を使う人々として期待しているのは、主に高齢者や技術が苦手な人達だ。

  よく批判されるが、今のテレビは複雑だ。ネット機能の搭載が当たり前になり、すべての機能を理解するのはなかなか難しい。特に日本のテレビには、他国にはあまりない「録画」という機能があり、それが複雑さの元になっている。

 意外と知られていないが、テレビ番組の録画という文化が広く普及している国は日本くらいのもので、日本のテレビは世界でもっとも機能が多い製品になっている。

  テレビメーカーは、それらの機能をいかに多くの人に使ってもらうかに知恵を注いできた。メニューを改善したり、リモコンを工夫したりと、その努力は10年にも及ぶ。

 しかし、その努力が完全に実を結んだわけではない。ITをよく理解している人(といっても、スマホやPCを普通に使える、という意味で、中身まで知っている必要はない)の場合、十字キー+決定ボタンがあればある程度操作できるが、IT機器が苦手な人から見れば、あの「メニュー」というものが好まれない。だから現在のテレビは、「きちんと使える人」と「そうでない人」がかなりはっきりと分かれてしまっている。

 一方で、利用率が上がってきているのが「音声検索」。ネット系の機能であり、一見ITリテラシーが高い人が使っているのでは……と思えるが、実は逆だ。

 テレビメーカーの調査によると、子供から高齢者まで非常にまんべんなく使われており、使い始めた家庭の場合、どのメーカーでも「ほぼ毎日音声検索が使われている」という調査結果が出ている、と聞いている。シンプルかつ簡単なものだからだ。

  テレビも、特に2018年モデルから、音声対応のレベルがさらに進む。音声で使いたい機能を話せば呼び出してくれるようになる。

  もちろん、そんなに理想通り行くかは疑問もある。音声対応のレベルが低く、思った機能を結局呼び出せない、という可能性もある。だが、テレビメーカーが「音声」というテクノロジーを使うことで、頭を悩ませてきた複雑さの解決の糸口とすることはできないか……と考え、その方向で技術開発を進めていることは間違いなく、数年以内に、ある程度のレベルに到達するだろう。

お父さんが「音声対応調理器」で料理にハマる理由

 もうひとつ、音声対応が家電を変えた例がある。

 シャープは全社で「AIoT」、すなわちAI+IoTをかけ声としている。テレビやスマホ、RoBoHoNのようなロボットはもちろん、エアコンやオーブンレンジにも「AIoTモジュール」を入れ、ネット接続可能にしている。

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「へルシオ ホットクック KN-HW24C-R」

 中でも面白いのは、水なしで調理できる「ヘルシオ」シリーズだ。この最上位モデルには、無線LANとAIoTモジュールが内蔵されており、ネットにつながって音声で操作の状況を伝える機能がある。ウォーターオーブンについては、声で操作もできる。

 テレビなどと違い、白物家電はネット接続のメリットが見えづらい。なぜなら、調理そのものはネットと関係ないからだ。レシピがダウンロードできるから、といってネットにつなぐ人はそこまで多くない。

 しかしシャープによれば、ヘルシオのネット接続率は高い。例えば水なし調理鍋である「ヘルシオ ホットクック」の場合、ネット接続率は4割を大きく超えているという。理由はやはり「音声対応」だ。ならこれも高齢者向けか……というとそうではない。

 ヘルシオ ホットクックは、レシピに合わせて食材や調味料を用意し、ヘルシオホットクックの中に入れていくと、自動的に無水で適切に料理してくれる……という機械だ。だから、機械が順番を教えてくれて、その通りに作業が出来るととても簡単に使える。

 だが、スマホのように大きな画面を備えているわけではないので、画面のレシピを見るのは大変だ。

 しかし、ネットにつながり「声での指示に合わせて調理する」することで、画面操作が減り、とても使いやすくなる。ヘルシオの指示に合わせて食材を入れていけばおいしいカレーができる。だから、普段は料理をしたことがないお父さんが料理にはまってしまう……。実際、そんなことが起きているそうだ。

 やはり、家電にとって重要なのは、「音声で使うと、その機器にどんな新しい価値が付け加わるのか」という点だ。

 スマートスピーカーは元々、「リビングで音楽を簡単に聞く」という付加価値のために生まれた。テレビでの音声対応も、ヘルシオ ホットクックの例も、「連携ありき」ではなく「その家電に必要な要素はなにか」から生まれている。

 IoT・ネット家電というと「連携」という話になるが、実はそれらの「本質的な変化はどこにあるのか」ということこそ、重要なのである。

[記事訂正]
事実関係に誤認があったため、一部、記事を修正致しました。
ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。

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