1. アカデミー賞レース第5弾|ジャーナリズムの在り方を問う「ペンタゴン・ペーパーズ╱最高機密文書」

アカデミー賞レース第5弾|ジャーナリズムの在り方を問う「ペンタゴン・ペーパーズ╱最高機密文書」

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 過去アカデミー賞(R)の監督賞を「シンドラーのリスト」(1993年、作品賞とダブル受賞)と「プライベート・ライアン」(1998年)で2度受賞している巨匠スティーヴン・スピルバーグ。

 2度のオスカー受賞は史上最多4回のジョン・フォード、3回のウィリアム・ワイラーとフランク・キャプラに次ぐ快挙である。

 そのスピルバーグが今年のアカデミー賞では残念ながら監督賞の候補から漏れたものの、堂々、作品賞と主演女優賞(メリル・ストリープが何と21回目の候補に!)の2部門で候補入りを果たした最新作が「ペンタゴン・ペーパーズ╱最高機密文書」だ。

新聞が暴いた米国防省の機密文書の中身とは?

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 「ペンタゴン・ペーパーズ」とは、ベトナム戦争が泥沼化の一途を辿る1971年、ニューヨーク・タイムズがスクープした米国防省の最高機密文書の通称である。

 7000ページにも及ぶ膨大な記録には、1945年から66年までの21年間、トルーマン、アイゼンハワー、J.K.ケネディ、ジョンソン、以上4人のアメリカ大統領とその政権が隠蔽してきた、ベトナム戦争の知られざる真実が記されていた。

 文書によると、4人の歴代大統領はベトナムに於けるアメリカの軍事行動について、平和的解決を追求していると国民に虚偽の報告を続ける傍らで、CIAと結託して秘密裏に軍備を増強していた。この歴史的失策が、結果的に5万8000人超のアメリカ兵と、100万人以上の命を奪い去ることになる。

編集主幹と社主の勇気ある決断!

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 映画は、ライバル紙のスクープに刺激されたホワイトハウスの地元紙ワシントン・ポスト内の混乱と決断にフォーカスして行く。

 ニューヨーク・タイムズと連携し、文書に関する記事を掲載し始めたワシントン・ポストにも政府から強い圧力がかかる中、編集主幹のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)は部下たちに真実の徹底追求を指示し、社主のケイ・グラハム(メリル・ストリープ)は会社の存続と良心の間で激しく揺れ動く。

今まさにジャーナリズムの在り方を問う

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 かつて、J.F.Kと週1ペースで食事を共にし、キャンプ・デービッドで頻繁にゴルフを楽しんだこともあるベンが「もはやメディアと政権がなれ合いの関係でいられる時代は終わった」と呟くシーン。

 また、父親が経営するワシントン・ポストを亡き夫に代わって引き継ぎ、会社経営のノウハウを知らないお嬢様と揶揄されて来たケイが、社運がかかる掲載続行か断念かの二者択一を迫られた時、こともなげに即断するシーン。そこからは、各々が築き上げてきたステイタスを良心のために迷わず放棄するジャーナリストの気概が強く伝わって、観る側の胸までが熱くなる。

 果たして、政権にすり寄り、国民に真実を伝えないジャーナリズムというものが存在し得るのか?

 「シンドラーのリスト」ではホロコーストの実態を、「プライベート・ライアン」ではノルマンディー上陸作戦の是非を、そして、「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015年)では冷戦時代の人の繋がりを描くなど、20世紀という時代を映像で検証してきたスピルバーグ。

 その最新監督作は、同じ20世紀のエポックであるベトナム戦争とその時代を再現しながら、たった今、絶滅の危機に晒されるジャーナリズムと新聞文化の重要さを描いて、ここ数年で最も今日的な作品に仕上がっている。

 原題の「The Post」とは、新聞の総称なのである。

アカデミー賞受賞期待度(★5つ評価):★★★☆☆

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「ペンタゴン・ペーパーズ╱最高機密文書」
3月30日(金)全国ロードショー
公式ホームページ:http://pentagonpapers-movie.jp/
©Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

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