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高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」

チャン・ワタシ

2018/02/13(最終更新日:2018/02/13)


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高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 1番目の画像

 先日、友人の結婚式に出席したら、新郎新婦の紹介欄に“マイベストプレイス: ニューヨーク”と書いてあった。マイベストプレイス・ニューヨーク。

 なんやねんかっこいいなぁと思いながら、自分のベストプレイスを考えてみると、高円寺しか思いつかない。

 今行きたい街ナンバーワン、高円寺。住みたい街ナンバーワン、高円寺。骨を埋めたい街ナンバーワン、高円寺。「あのう、高円寺ですか?」「はい、高円寺です」。

 かつて、街にフィットするために、私は劇団員にもなった。2000年代、渋谷に溶け込むためにギャルになった女子がいたとしたら、私は手をとって「わかるよ」と言うだろう。

 そんなマイベストプレイスであるこの街・高円寺の景色を、ここではゆるりと紹介していきたい。アルコール多めで。

 というわけで、高円寺は野方屋に来ました。

やきとん「野方屋」 

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 2番目の画像

 南口を出て左、高架下に並ぶ、ノスタルジーが香る飲み屋。

 もう随分と通っていますが、詳しいことは何も知らない。たぶんお父さんとお母さんとその息子さんでやっているけど、それも私の憶測。入店と同時に「いらっしゃい」と声をかけてもらい、テレビが流れる奥の席に座る。

 実はここ、かつて常連になり、そして一度パッタリと行かなくなって、そこから二年の時を経てまた通うようになった。切っても切れないような関係の店、だけど店の人には一ミリも覚えられていない。そこがまたいい。自分が何か消費する瞬間はできるだけ人の記憶に残りたくない。

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 3番目の画像
ここのラインナップはちゃんと行くたびに変わっている。

 レバーやささみ、チレ刺など、昔はふんだんに生肉を食べれたこの店、数年前からそういうものはあまり出さなくなってしまった。大将に聞くと「いろいろ厳しくなってねぇ」とだけ言われ、とても残念に思ったのを覚えている。

 「ちょいレバ焼き」というのが大好きだった。串に刺したレバーを軽く炙り、ごま油と塩とネギをちょろっとかけて出してくれる。慣れた手つきで串から外しながら、5本はよろこんで食べていた。「梅ささみ」が大好きだった。大きなささみの表面を少し焼いて、塩っぱい梅と大葉をのせて出してくれた。それも全てメニューから消えた。

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 4番目の画像

 人に勧めるときは「ちょいレバ焼きと梅ささみというのがあってね」と説明していた私には、それがあまりに残念で、他にも美味しいものはあるのだけれど、足が遠のいてしまった。

 夏。高円寺が一年でいちばん盛り上がる、阿波踊り祭りの日。

 ふらっと通りかかると、野方屋の姉さんが店の外に焼き場を出してせっせと串を焼いていた。私も祭り気分に浮かれて、久しぶりに入ってみるか、と立ち寄ると、「いらっしゃい」といつものごとく全く覚えていないような声で中に通され、店は忙しいのによく冷えたホッピーとすだち酒を飲んだ。

 やっぱり「ちょいレバ焼き」も「梅ささみ」もメニューにはなかったけれど、そこからまたよく通わせていただいている。でも顔は覚えられていない。

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 5番目の画像

 ここはもつ焼き屋さんなんです。

 もつがウマい。でもそれも「信じられないほど美味しいぜ!」とは言わなくて、何を食べても「ちょっとおいしいよ、やっぱりおいしいよ」と、それくらい。でもちょっとおいしいよ。やっぱりおいしいよ。

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 6番目の画像
かしらねぎポン酢、400円。

 かしらポン酢を頼めば、下にどさっと辛くないたまねぎをしいて出してくれる。ここの人気メニューのひとつなので、まずは何も考えずにお通しのように頼めばいい。もみじおろしとポン酢と、付け合わせのわかめまでしっかり食べて、残すものがない。

 串をおまかせで5本頼むと、塩、たれ、味噌だれを混合で出してくれる。5本もあれば、塩が合うのもありゃ、味噌が合うのもある。それは大将が一番分かってるわけだから、適当にお願いした方がいいと思う。

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 7番目の画像
ねぎま、はつ、たん、かしら、はらみ。おまかせ5本、600円。

 ここは串の仕事が丁寧だ。いつも同じ大きさの粒が並んで、綺麗にぎゅっぎゅっと整えられている。大きさを揃えられるのは、串刺し職人の腕の見せどころ。って食べ◯グにどなたかが書いておりました。

 私にはそんな知識はなくて、いいカンジなぁ、といただくだけですが、そういうことを知るとまた一つこの店が好きになる。好きな人の良いところを別の友人から聞かされるとうれしいもんね。

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 8番目の画像

 お酒は、キンミヤの梅割りを飲もう。受け皿がしかれたグラスが出てきて、キンミヤと梅シロップをたっぷり注いでくれる。

 もり上がった液体の表面はふるふると揺れるから、これは口をもっていかないと絶対に飲めない。

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 9番目の画像
キンミヤ焼酎梅割り、380円。

 小学生の頃、粉薬も錠剤もうまく飲めず、風邪のときは小児科に特別なシロップを出してもらっていた。その特別なシロップの味が、このキンミヤ梅割りにあります。かろやかでついお酒ということを忘れる。梅はぴしゃっと甘い。グラスを飲み干すと寂しいけれど、受け皿に残ったお酒に気づいて、まだ飲めるとうれしくなる。受け皿からグラスに注ぐのがスマートな飲み方らしい。

 この頃には、わははとよく笑って、内容も入ってこないテレビを観たり。

高円寺、アルコールコール。もつとキンミヤ梅割りの店「野方屋」 10番目の画像
トマト肉巻き、アスパラ肉巻き、各220円。

 もうちょっと何かつまみたいな、というときはトマト巻きとアスパラ巻きを頼む。トマトはいつも大玉の方で、アスパラは切られてることもあれば丸々一本ということもある。私は店を信頼しているので、いつでも美味しい方法で食材に合わせて作ってくれているんだろうと解釈している。カリカリになった豚と野菜は、その食感だけで、もううれしい。

 実はもつ煮込みが名物なんですよね、このお店。でももつ煮は気分がのったときしか頼まない。それでもじゅうぶん、この店は楽しいです。

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メニューは「もつ初め、もつ休め」などで構成されている。世界の中心がもつ。

 あー今日は疲れた。あー今日はもう何もかも御免だ。ってときに立ち寄りたい。

 切っても切れない仲のお店です。

「やきとん 野方屋」
電話:03-3310-5225
住所:東京都杉並区高円寺南4-49-1


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