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2017年映画興収トップ10から読み解くヒット映画の法則!

清藤秀人

2017/12/16(最終更新日:2017/12/16)


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2017年映画興収トップ10から読み解くヒット映画の法則! 1番目の画像

 2017年の映画界も決算期に入った。今年は何が当たったか?まずは興行収入トップ10の作品と数字をご覧頂こう。

2017年映画興収トップ10

  • 1位/美女と野獣:123億6000万円
  • 2位/ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅:73億円
  • 2位/怪盗グルーのミニオン大脱走:73億円
  • 4位/名探偵コナン から紅の恋歌:68億7000万円
  • 5位/パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊:66億9000万円
  • 6位/モアナと伝説の海:51億5000万円
  • 7位/SING:51億1000万円
  • 8位/ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー:46億3000万円
  • 9位/映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険:44億3000万円
  • 10位/ラ・ラ・ランド:43億円
  • 数字は12月13日現在

 こう見ると分かるように、トップ10のうち8本が洋画で残り2本が邦画、それもアニメ作品という割合になった。

 つまり、今年はここ数年続いていた“邦高洋低”傾向が完全に覆ったというわけだ。邦画の実写映画にヒットが出なかったという事実を映画会社は深刻に受け止めるべき時が来たのかも知れない。

アドバンテージに頼らないディズニーの戦略

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 興収第1位に輝いた「美女と野獣」は4月21日の公開から42日間で興収100億円を突破。これは日本歴代3位の記録的ヒットとなった「アナと雪の女王」(14年)と「アリス・イン・ワンダーランド」(10年)に次ぐディズニー史上2番目の早さだ。

 まず、自社製作のオリジナルアニメ映画「美女と野獣」(91年)があって、それを舞台化したステージ・ミュージカルが世界中でロングランに。だが、そんなアドバンテージに頼らず、日本のミュージカル界を代表するキャストによる吹き替え版を製作するなど、ディズニーは巧みな戦略を仕掛けてヒットに繋げた。おかげでヒロインのベルを演じたエマ・ワトソンは今や日本の洋画ファンの間で人気NO.1女優である。

その他の洋画もブランド力の賜物

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 その他、洋画のヒット作は「美女と野獣」と同じく、すでに確立されているブランド力を土台にした作品ばかりだ。昨年11月の公開から数字を積み重ねた「ファンタスティック・ビースト〜」は、「ハリー・ポッター」シリーズのJ.K.ローリングの原作を映画化した同じ“魔法もの”だし、「パイレーツ・オブ・カリビアン〜」は6年というインターバルがファンにとっては新鮮だったシリーズ第5作。

 「ローグ・ワン」は言うまでもなく「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ作品だ。極論すれば、「モアナと伝説の海」もある程度以上のクオリティが約束されているディズニーアニメのブランド力に支えられてのヒットだったと思う。

新興アニメスタジオ、イルミネーションへの期待値

 今やそのディズニーを脅かす勢いの新興アニメスタジオ、イルミネーションによる「怪盗グルーのミニオン大脱走」も「怪盗グルー」シリーズの第3弾。同シリーズからは「ミニオンズ」(15年)というスピンオフ映画も生まれている。

 ハートウォーミングなテーマを珠玉の歌とメロディで綴るディズニーアニメに対し、より強烈な風刺と灰汁の強い笑いをファレル・ウィリアムズたちヒットメーカーの主題歌に乗せて届けるイルミネーションに対する期待値は、ここ数年で急上昇。結果、誕生したのが動物たちの歌唱コンテストにフォーカスした「SING」だ。



邦画アニメの2本は連続して記録更新

 2本の邦画アニメも過去に築いたレガシーをアップデートした最新作だ。邦画のトップに食い込んだ「名探偵コナン〜」は2013年に公開されたシリーズ第17作「絶海の探偵」以来、実に5年連続でシリーズ最高興収を更新するという快挙を成し遂げた。

 また、「映画ドラえもん~」もシリーズ最高興収を挙げた前作「新・のび太の日本誕生」(16年)を超えて、2年連続で記録を更新。両作品とも、もはや日本の風物詩になった感さえする。それは一重に作り手たちの弛まぬ努力の成果だろう。

今年を象徴する「ラ・ラ・ランド」のヒット

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 そんな中で、何のアドバンテージもなく、ただ口コミでロングランヒットとなった唯一の作品が「ラ・ラ・ランド」だ。

 昨年度の賞レースを賑わせ、期待されたアカデミー賞では土壇場で「ムーンライト」にかわされたものの、L.A.の路上で展開するミュージカルシーケンスと、公開前からヒットし始めたオープニング・ナンバー“アナザー・デイ・オブ・サン“効果で、公開後1ヶ月半で興収40億円を突破。「ラ・ラ・ランド」のヒットこそが、今年の“洋高邦低”を象徴する事件だったような気がする。

 さて、今はまさにアワード・シーズン真っ直中。来年、「ラ・ラ・ランド」に匹敵するサプライズはあるだろうか?

©︎2017 Disney
EW0001:Sebastian (Ryan Gosling) and Mia(Emma Stone) in LA LA LAND. Photo courtesy of Lionsgate


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