1. 【書き起こし】世界有数の交渉人ウィリアム・ウリーが「真に聴く方法」を伝授!

【書き起こし】世界有数の交渉人ウィリアム・ウリーが「真に聴く方法」を伝授!

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 技術が発達し、我々は様々な方法で意思を伝達することができるようになった。海外では「コミュニケーション時代」と呼ばれているほど。

 しかし電子機器の普及も相まって情報過多とも言える今、我々が本当に相手の話を「聴いていること」はあるのだろうか? 少し考えれば、コミュニケーションが一方通行で終わっていることがほとんであることがわかる。

 ウィリアム・ウリ―氏は家族内の争いから重役間の争い、果ては民族紛争を解決するベテランネゴシエイター、仲介人として活躍してきた。彼は、世界の内戦を根絶させようと試みる団体「International Negotiation Network」をジミー・カーター元大統領と創立した実績も持つ。

 世界で活躍するウリ―氏が、今回TEDで語ったのは「聴くことの大切さ」、「真に聴く方法」だ。彼は「聴くこと」を世界が学べば、世の中はよりよくなる、と語った。

『「聴く」が持つパワー』

ウリー氏:「森林の中木が倒れ、それを聴く人がいなかったら、音はするのだろうか?」という、古代より伝わる哲学的な難問があります。科学的な見識では、「木が空気中で振動を起こすものの、それが音を出すには聴く耳が必要だ」と言われています。

そこで私の疑問は「人が話し――例えばTEDスピーチをするとして――それを聴く人がいないとしたら、それは本当にコミュニケーションと言えるのだろうか?」というもの。

「聴く」というのはコミュニケーションに欠けている半分の要素である、と私は信じています。絶対に必要なのに、しばしば見落とされているコミュニケーションの要素。

私たちは“コミュニケーションの時代”に生きています。確かに、携帯電話やテキストメッセージ、ツイートやEメールによって、「話すこと」は補完されつつあります。しかしそれらに一体どれだけの「聴く」ができている、と言えるのでしょう。

この30年間、私は望みが薄いネゴシエーションで「イエス」という答えを頂けるように仲介することを生業にしてきました。家族間から会社間の争いまで、従業員のストライキから内戦まで――多岐にわたるネゴシエーションを扱いました。

そしてそこでは「話すこと」は多く行われているものの、「真に聴くこと」があまり行われていないのです。交渉は発話が肝である、と考えがちですが、実は一番大切なのが「聴くこと」なんです。

成功したネゴシエイターの言動を観察してみると、彼らは「話す」よりも「聴く」ことに重点を置いているのがわかります。

結局のところ、人間に2つの耳、1つの口が備わっているのには理由がありますからね。少なくとも話す量の倍は、聴かなければなりません。

なぜ「聴く」が必要なのか

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ウリー氏:では、なぜ「聴く」が必要なのでしょう? なぜそこまで大切なのでしょうか? 「聴く」ことにまつわる私の体験談をお聞きください。

ベネズエラの内争を仲介した体験

ウリー氏:数年前、私はベネズエラで政府と反対勢力を仲介していました。ちょうど争いが激化した頃で、多くの人は内戦を恐れていました。

PM9:00、大統領官邸にて同僚のフランシスコ・ディアスと共に、大統領ウゴ・チャベスとのアポイントメントがありました。深夜になってやっと案内され、そこには内閣の皆を後ろ控えた大統領がいました。

彼は私に問います、「ウリ―氏、この状況をどう捉える?」と。

「大統領閣下、私はここにいる内閣の皆さんとも、反対勢力の方々ともお話をしました。結果、状況は進展していると思います」と私は答えました。

「進展だと? 一体どういうことだ!」と彼は声を荒げ、「お前は何も見えちゃいない。あの裏切り者どもが画策している卑劣な手段を見抜いていないのだ」と私をののしります。

彼は顔を私の目前まで近づけ、罵声を上げ続けました。私はどうすればいいのでしょうか?

反射的に弁解したくもありました。しかし、ベネズエラ大統領と口論を展開したところで、いい結果に転ぶようには思えません。それがどう平和につながるでしょうか。

(会場笑)

ですから私は聴くことにしました。全神経を彼に向けたのです。

彼の意見を聴きました。チャベス大統領は、8時間ものスピーチをすることでも有名。しかし30分間、私がただ頷き、聴くだけをしていると、彼の肩は徐々に落ちていきました。

彼は疲労困憊した声で、「ウリー氏よ。私はどうすればいいのだ?」と質問します。これは人間の精神が聴く気になったときの合図。

私はこう提案しました。「大統領閣下、もう少しでクリスマスではないですか。この国には休暇が必要です。去年は、この争いが原因ですべての祝祭はキャンセルされました。国民が祝日に家族と過ごせるように、今回は休戦宣言をしてみてはいかがでしょうか。そうすればその後、国民は機嫌を直して話を聞いてくれるかもしれませんよ」と。

「すばらしいアイデアだ。次のスピーチで休戦宣言をしよう」と彼は答えたのです。彼の機嫌は一変しました。でもどうやって? 

ただ単純に「聴く力」によってです。私が彼の話を聴いたから、彼の中で私の話を聴く心構えができたのです。

「聴く」が大切な3つの理由

ウリー氏:どんな交渉の場や争いでも、「聴くこと」が大切な理由は少なくとも3つあります。

まず、相手側を理解することに役立ちます。とどのつまり、“交渉”というのは影響力の行使なのです。相手の考えを変えようとしているわけですからね。

相手の意見を理解していないのに、どう意見を変えようと言うのでしょうか? 「聴く」ことが肝なのです。

次に、相手と通じるのに役立ちます。信頼関係を築く手助けをしてくれるのです。

「聴く」ことは、相手の意見に関心があることを示します。意見を聴いてほしくない人なんていませんからね。

そして最後に――チャベス大統領がそうだったように――相手が自分の意見を聴いてくれる可能性を強めます。つまり、「イエス」に到達する手助けをしてくれるのです。

要するに、「聴く」は交渉の場において、最も手頃な譲歩です。何も失うことなく、絶大な利益が得られる。

「聴く」は人間関係という扉を開ける黄金のカギなのです。

「真に聴く」方法

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ウリー氏:ではどうすれば「聴くこと」ができるのでしょうか? 

私たちは「聴くこと」を簡単で当然の行為だと思っていて、軽視しがちです。しかし少なくとも私の経験上、「真に聴く」ためには習得と日常的な練習が必要です。

私たちは普段の「リスニング」で単語を聴いています。多くの場合、「どこで同意しようかな? どこで否定しようかな? それに対してなんて言おうかな?」など考えています。要するに、焦点を自分に置いているのです。

けれども「真のリスニング」では、スポットライトは相手に向けます。相手の立場になって考え、相手の波長に合わせるのです。

自分だけではなく、相手の視点に則って聴きます。これは簡単なことではありません。

「真に聴く」とき、我々は相手の発言だけではなく、発言の裏にあることもくみ取ります。裏に潜む感情、ニーズ――つまり、相手が真に何を求め、必要としているのか――注意深く聴くのです。例を紹介しましょう。

「近年最大の他国間の重役争い」の仲介

ウリー氏:1年半前、アビーリオ・ディニス氏というブラジルの起業家から依頼を受けました。彼はフランス人のビジネスパートナーと、ブラジル最大の小売企業の支配権を巡って法的な争いに対して頭を抱えていました。

フィナンシャル・タイムズ誌が「近年最大の他国間でもビジネス的な争い」と称したほどです。

争いはすでに2年半以上続いていて、それはお互いにとってだけではなく、両者の家族や15万人の従業員にとって多大な犠牲とストレスを与えるものでした。

アビーリオさんの自宅で会話したとき、彼の話を聴きました。それが終わると、私には疑問が浮かびました。

私は「アビ―リオさん、教えてください。あなたが本当に求めているのはなんですか?」と彼に問います。

「一定価格の株が欲しい。本社もだ。競業避止義務を廃止して欲しい」と彼は列挙していきました。

しかしそれを聴くうちに、発されていない言葉が彼の心の底から聴こえてきました。そこで私は「アビーリオさん、あなたはすべてを手に入れた人間であるように見受けられます。先ほど列挙したものは、あなたにとって何の役に立つのですか。あなたが人生で一番欲しているものとはなんですか?」と質問。

すると彼は少し固まり、熟考しました。そして彼は「自由。私は自由が欲しい。自分のビジネス・ドリームを追求する自由が欲しいのだ。家族と過ごす時間も欲しい」と回答します。

私が知りたかったのはまさにそれです。ビジネス界の覇者としての彼の言葉だけではなく、私は言葉の裏に隠された彼の人間性を聴き取ったのです。

彼が心底求めているものが明確になり、交渉そのものが――挑戦的ではあったものの――とても簡単になりました。4日という短期間で、私と同僚たちは両サイドの話を聴くことによって、この巨大な争いを両者が大満足する形で解決することができました。

これがきっかけで友人となったアビーリオさんは、後から私にこう言いました。「求めていたものはすべて手に入った。そして最も重要なことに、自分の人生を取り戻すことができたよ」と。

これはどうして起きたのでしょうか? 「聴く力」のおかげです。


「聴く」方法

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ウリー氏:では「聴くこと」はこんなにも便利なのに、なぜみんな使わないのでしょうか? 実を言うと、「聴く」のはそう容易いことではありません。

私自身の経験を振り返ってみますと、仕事上で「結構聴けたな」と思ったばかりのところで、家に帰って妻の話を聴いていない自分に気付くことがあります。恥ずかしい話です。

真の問題は、我々の脳内ではたくさんのことが考えられていて、真に相手のことを聴くために精神的な余裕を持つには雑音や妨害が多すぎることにあります。

「聴く」ためにはまず自分を「聴く」

ウリー氏:では雑音を取り払うには、どうすればいいのでしょう。

おかしく思えるかもしれませんが、私が発見した秘訣は「相手の意見を聴きたいのであれば、まず自分自身を聴くことを学ばなければならない」というものです。

チャベス大統領と話していたとき、直前に自分の心中に注意を払うために静寂な時間を取ったことには、本当に救われました。

自分の精神を落ち着かせるために、自分自身を聴いたのです。おかげで彼が怒号を上げたとき、私は「聴く状態」にいました。

実際自分の頬が赤まり、歯を食いしばり、恐れと不安を感じているのを認めました。ですが、興奮や感情に注意を払うことによって、それを手放し、チャベス大統領の言葉を「真に聴くこと」ができたのです。

もし、大切やデリケートな話合いの前に自分の立ち位置に波長を合わせ、聴くための静寂の時間を取ったとしたら? それさえできれば、相手の話を聴くのは断然容易になると思います。

「聴く」が世界をよくする

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ウリー氏:最後の設問は、「聴くこと」ができると世界にどう影響を及ぼすのか、です。結果は大きく違ってくるでしょう。

仲介人としての仕事を通じて、私は内乱、崩壊した人間関係、家族関係、職場での溜まりきったストレス、高額な訴訟、そして無意味な戦争による膨大な犠牲を目撃してきました。

争いを未然に防ぐことが、私たちに与えられた最大のチャンスだ、とその都度感じさせられます。

それはどう実現すればいいのでしょうか? それは容易ではありませんが、ほとんどの場合ではシンプルな手順から始まります。それは「聴く」こと。

私の夢は「コミュニケーション時代」を「リスニング時代」に変えるリスニング革命の実現です。つまり、「真のコミュニケーション時代」です。

子供が幼少期から「聴く」を習得している時代を少し想像してみてください。必修授業として、リーディングのようにリスニングを教えたらどうでしょうか? 「リスニング」は人を読むのに必要ですしね。

両親が子供の言葉を「聴く」時代を想像してみてください。私たちが子供たちを聴くことほど、子供に「聴くこと」を教える最善の方法は他にあるでしょうか? 彼らが本当に大切であることを示す方法が他にあるでしょうか? 私たちの愛を「聴くこと」以上に伝える方法があるでしょうか?

おまけに、カップルがお互いのことを聴けるようになり、より幸せな結婚が実現し、離婚件数が減るかもしれません。

世のリーダーたちが部下たちの言葉を「聴く」時代を想像してください。リーダーたちが「話す能力」ではなく、「聴く能力」に基づいて決定されたら? 企業中で「聴く」ことが一般的になったら?

テレビやラジオでトークショーだけではなく、「リッスンショー」があったらどうでしょうか? 和平会談だけではなく、「和平傾聴」があったらどうでしょう?

「イエス」という答えをより頻繁に聞けるようになるのは間違いありません。すべての争いをなくすのは無理かもしれませんが、多くの争い、戦争さえも回避することができます。人間は一層幸せになることでしょう。

喜ばしいことに、私は失業するかもしれません。これが私の夢です。

(会場笑)

大胆な提案に聞こえるかもしれませんが、そこまで複雑な話ではありません。「聴くこと」は真に聴いてもらえた相手が次は聴く側に転じようと自然に感じさせるような、連鎖反応を起こしますから。

「聴く」は伝播するのです。ですからこの場、この瞬間からその連鎖反応を生むようにしてください。同僚、顧客、パートナー、子供、友人――誰でも、次に話すときはどうか全注意を相手に払ってあげてください。

そして言葉の裏にある人間性も聴くのです。人が人に与えられる最高のプレゼントの1つは「聴いてもらうこと」ですから。

「聴く」という簡単な解決策で、人間関係や家族関係を一変することができます。そしてそれが伝播し、世の中がよくなっていくでしょう。

「ご清聴」ありがとうございました。

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