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【書き起こし】悩んでいる人を元気づける方法は「相手の身になって考えること」ではなかった!

森澤

2017/12/21(最終更新日:2017/12/21)


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【書き起こし】悩んでいる人を元気づける方法は「相手の身になって考えること」ではなかった! 1番目の画像
出典:www.ted.com

 相手をなんとか元気づけようとしているのに、相手は一向に元気にならない。こんな歯がゆい経験をしたことはないだろうか。

 上司として部下をねぎらおうと負担を軽減しても、相手の表情は曇る一方だったり、よかれと思って部下に挑戦させても、喜んでいる様子があまり見えなかったり……。実際、このような食い違いはよく起きている。

 従業員エンゲージメント、イノベーションやリーダーシップを訓練する企業Juice Inc.を創業したブレイディー・ウィルソン氏は、すべての状況において「一番大切なもの」が人それぞれにあることを示唆。

 今回TEDで、ウィルソン氏は「枯渇した脳を活性化する方法」を伝授した。

「疲れ果てた脳の直し方」

ウィルソン氏:私はこのスピーチの主役ではありません。私がやるべきことを果せられれば、あなたが主役になるのです。

あなた自身が今日旅に発ち、180度変わった世界を目撃することになります。

ウィルソン氏の体験(要約)

 彼は幼少期のある日、兄同士の喧嘩を目撃することになる。そして兄たちは「お互いにもう二度と話さない」と誓う。そのため、必要な伝言などがあるときは彼が中立役となって生活したそう。

 またある時、父親が兄を勘当した。ひどく悲しんだ母親は、時折父にわからぬようパイを焼き、それを「愛している」という伝言とともに渡すようウィルソン氏にお願いした。彼はそれからずっと、中立役を演じているらしい。

「枯渇した脳」

ウィルソン氏:本日私がしたいのは、中立の立場になったときの影響力をみなさん理解していただくことです。

そのために、私はポーラとその上司、ジアードについて話します。彼らは枯渇した脳が活性化する体験をしました。

ポーラについて(要約)

 ポーラは高い志とともに職に就いたという。彼女は積極的で、会社に貢献したいと思っていた。しかし、そんな彼女を待ち受けたのは企業改革だった。

 上司は彼女の教育どころではなくなり、彼女は真に必要としていたサポートを受けることができなくなってしまった。

 最終的に、高い志を持って就いた職だったのに、彼女の意欲は枯渇してしまう。

実行機能を失った脳

ウィルソン氏:これは米国中で起きていることです。膨大な数の従業員、マネージャー、リーダーたちが、熱はあれど疲れ果てて、献身的なのに枯渇しています。

我々の脳が枯渇したとき、ベストを尽くすのは非常に難しい。これはなぜでしょう?

頭蓋骨の中にある、わずか1キロほどの豆腐のような物体を観察してみましょう。

私たちの脳は、全体重の2%しか占めていません。しかし、どれだけのエネルギーを消耗するのでしょうか?

代謝的にはすごいですよ。毎日、私たちのエネルギーの20%も消耗しているのです。この消耗量は身体のどの器官よりも多いんです。

心臓、肺、肝――どれも大切ですが脳が消耗するエネルギーには遠く及びません。では、熱心なのに疲れ切ってしまったとき、何が起きるのでしょうか。

献身的なのに枯渇してしまうと、1つの大事な機能が遮断されます。

まず失うのは実行機能です。免疫、消化、闘争・逃走反応などの自動的機能は働き続けますが、実行機能は遮断されてしまいます。

身体は非常に効率的にエネルギーを使いますから。では、実行機能とはなんなのかを見てみましょう。

活性化された脳

ウィルソン氏:活性化された脳は集中できて、感情が安定します。驚くべき方法で結論を下すことが可能で、ある決定や態度に隠された危険サインを予期することができます。

そして、とても賢明な判断ができるのです。

枯渇した脳

ウィルソン氏:その反面、脳が枯渇し、実行機能が失われると、注意散漫になり、ひどく衝動的な反応をするようになります。その上話の筋がわからなくなり、危険サインを見抜けなくなります。

そして、とても愚鈍な判断をするようになるのです。

ここで悪いのは人ではなく、脳です。

「枯渇した脳」を「活性化」する方法

ウィルソン氏:ここでジアードが登場します。企業改革の結果、彼が彼女の上司になりました。彼は他の上司たちから彼女について次のように聞いていました。

「コンディションがいいとき、ポーラはすごい。聡明で、生産力がとても高くなる。しかし彼女はストレス、病気、欠勤癖に悩んでいる」

実際、彼女があまりにも頻繁に欠勤するものですから、上司たちは真剣に“解雇”も打診したのです。

そこでジアードはポーラと話し、こう言いました。

「君の人生で何が起きているかなんて言わなくてもいいよ。僕の知ったことではないからね。でも、僕は君の味方であることは知っておいてほしい。君をよくするために、どういった負担を取り除けばいい?」と。

ここまででこのアプローチは大丈夫だと思いますか?

答えは「ノー」です。実際、大惨事ですよ。

私がリーダーへする最大の仕事は、彼らが“親業”から“パートナー業”に変換できるように教えることです。

ジアードはここで、伝統的な親のアプローチを取りました――最善を知っているつもりで、ポーラの状態を「負担の軽減」で直そうとしてね。

しかし人が相手の状態を直そうとするとき、更にフラストレーションが溜まり、枯渇してしまうことが実際にあるのです。このような会話をすると毎度、すごい不満が胸中に残りつつ、両者は去ります。

ジアードが私の「脳を活性化する方法」の講習会に現れたのはこの時期です。そしてそれが魔法ではないことを、彼は学びました。

事実、それは先天的なものではなく、習得可能なスキルですからね。誰でも学べます。

最も重要なのは一番大切なことを理解し、状況に繋げることです。ジアードはどんな状況でも、「一番大切なこと」が存在することを学びました。

「一番大切なこと」について(要約)

 ウィルソン氏はそれぞれの状況に応じて、「一番大切なこと」が存在する、と語った。

 状況によっては、身内意識、安心、自由、影響力、意義や目的が「一番大切なこと」になることもある。それを理解した上で、状況に繋げることが大事なのだ。

 ジアードは「自由」を必要としていて、「ポーラもそうなのだろう」と決め込んでしまった。ゆえに彼のアプローチは「負担を軽減する」だったのだ。

 この食い違いによって、お互いが満足しない状況が続いていた。

問題解決

ウィルソン氏:ジアードはポーラが最も必要としていたのが、「自身の影響力」であることを学びました。

彼がそれを学んだのは以下の方法です。読心術者である必要も、セラピストや専門的なコーチである必要もありません。

脳を活性化させるのが上手な人は、たった1つのシンプルなことをします。

それは「聞くこと」。「この状況では、あなたに一番大切なのはなんですか?」とね。

ジアードは講習会で学び、ポーラと非常に簡単な話し合いをしました。

「ポーラ、お互い辛かったね。僕と君の会話、やり直しはできないだろうか。ただ1つの質問が聞きたい。この状況下で、君にとって一番大切なのはなんだい?」

すると彼女は瞬時に答えます。「私は有能な人材として見られたいの。生産性の高い人間としてね。でもあなたと会うと毎回、業務を取り除き、私から挑戦や学ぶ機会を奪うの。私は仕事で、もっと挑戦したい」と。

ジアードは「ストレスや病気、欠勤癖で悩んでいる人物が挑戦を求めているなんて、誰が予測しただろうか?」と驚きました。そこで彼女が達成できるか半信半疑だったものの、試しにやらせてみることにします。

挑戦に次ぐ挑戦を彼女に与え、その都度彼女をサポートしたのです。何が起こったかと言うと、毎回、彼女はその仕事でホームランを打ちました。

最も肝心なことを見つけ出すと、可能性がとても流動的に流れてきます。そしてポーラが物事に新しい付加価値を付け、積極的、そしてイノベーティブになっている姿を人々は目撃しました。

一般的にそれが起きると、パートナーとして団結して進展できます。


脳内ホルモンの作用

ウィルソン氏:2人の脳内では何が起きていたのでしょうか? それは強力な高パフォーマンスのホルモンが分泌していたのです。

ロレッタ・ブレウニング博士及び哺乳類学会のおかげで、哺乳類の精神に、状況下によって何が起こっているのかがわかるようになりました。

オキシトシン

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ウィルソン氏:コアラとその子どもを見てください。この状況では強力なホルモンが豊かに分泌されています。何人かはご存じかもしれません。

それはオキシトシンです。オキシゴドン(麻薬)と間違えないでくださいね(笑)。

2匹の哺乳類の関係性が築かれたとき――私たちも哺乳類ですからね――その繋がりがオキシトシンを放ちます。なぜオキシトシンについて知っておいたほうがいいの、って?

オキシトシンが脳に伝達されると、信頼や同士愛という感覚を生み出します。

「もっと信頼し合いたい人がいる」と考えている人もいるでしょう。

関係をより深くし、脳内にオキシトシンを放出するために何かできることはあるでしょうか? もちろんあります。

(オキシトシンは交流によって分泌される)

ドーパミン

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ウィルソン氏:彼女は何を見ているのでしょうか? 食料を見つけたのです。哺乳類が可能性を感じると、ドーパミンが脳内で分泌されます。

そしてドーパミンが放出されると、強烈なことが起きます。それはモチベーション、独創性、創造力、イノベーション、目標定位です。

セラピストが意欲のない人を扱うとき、一番最初にするのがドーパミンの数値の計測。

相手がドーパミンを分泌するために、できることはなにかあるのでしょうか? もちろんあります。

可能性、ポテンシャル、チャンスをチラッと見せればいいのです。

セロトニン

ウィルソン氏:哺乳類はお互いを出し抜くのを好みます。そうすることが自分の種の生存を保証するからです。

進展や達成をしたとき、そして人々から尊敬されたとき、私たちは痛快な気持ちになります。なぜ、そこまで心地良いのでしょうか? それは脳内にセロトニンが流れているからです。

セロトニンが脳内で分泌されると、無敵感を得て、自分をコントロールできる感覚、信念や自信、自己効力感が解禁されます。

セロトニンを相手の脳内に流すために、私たちができることはありますか? もちろんあります。

彼らとパートナー関係になり、進展すればよいのです。

「相手の身になって考える」が原因

ウィルソン氏:一番大切なことと関連させることは、誰もができるのです。誰だって可能性を見せることはできますし、進展のためにパートナーとなることができます。

ではなぜ実行しないのでしょうか?

実行しない驚くべき理由は、なにも相手に飽きているわけでも、スマートフォンに拘束されているから、というわけでもありません。

それは「相手の身になって考えてしまうから」です。

「それって誰もがすべきことなんじゃないの?」とあなたは驚くかもしれません。理由を教えましょう。

あなたの先入観、分別、結論、信念で「相手の身になって考えた」ところで、次のようになります。「もし私があなたの立場にいたら……」と、この後に続くのは彼らの状況に自伝的修正を加えたもの。

これは数年前、私自身の身に降りかかった出来事です。

息子の交通事故(要約)

 ウィルソン氏の息子、タイラーは当時大学生で、友人とドライブしていたそうだ。事故に会い、車は何度か横転した。そのとき、車に火がついたのだ。

 幸い、1人も亡くなることもなく、全員無事に逃げ出すことができた。

友人との会話

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ウィルソン氏:これが私の息子、タイラーです。

1人目の友人との会話

ウィルソン氏:次の日の夜、タイラーのことをよく知る友人と出かけました。

そしてタイラーの身に起きた出来事をそのまま説明します。「信じられないことがタイラーに起きたんだ」とね。

私が話を終えるとすぐさま、彼は「先週シカゴで僕に起きたことも驚くよ!」と大きな声で言います。

開いた口がふさがりませんでした。私は自分にとってこんなにも大切な話をしたのにも関わらず、即座に片付けられてしまったのですから。そして彼は自分の話をしました。

私はその友人を愛していますから、次の日「コーヒーでも飲まないかい?」と彼に電話し、カフェへ行きました。

「タイラーの話をしたのを覚えている?」と僕は聞いた。「もちろんだとも」と彼。

「話した後の自分の反応、覚えている?」と質問。「いいや、あまり」と彼は返事した。

そこで彼の反応を話すと「本当に僕がそんなことを言ったの? 信じられない」と彼は言った。

彼の行動について掘り下げてみたら、何がわかったと思いますか?

彼は私を出し抜こうとしたわけではない。

彼は親身さとつながりを求めていたのです。「自分の話をシェアすることによって君の息子、タイラーの話をきちんと理解したことを示したかった」という具合に。

彼は私の身になって考え、返答するには十分な情報を得た、と考えたわけです。これが何年か前の感謝祭の日のことでした。

2人目の友人との会話

ウィルソン氏:タイラーはその年のクリスマスに実家へ帰ってきて、その様子がどんなものだったかは想像がつくでしょう。

クリスマスが終わり、タイラーのことをよく知る別の友人と出かけました。そしてタイラーに起きたことを説明しました。

私が語り終えると、彼はすぐに「その事故の後初めて彼に会ったとき、どうだった?」と聞きます。

「ベースメントにいて、彼が玄関に入るのが聞こえたんだ。階段を駆け上がって、彼を抱きしめたよ! それはもうぎゅっとね! 事故の後会ったのは初めてだったから、離したくなかったんだ」と私はとても感情的に話しました。

その友人が投資したのは「その事故の後、初めて彼に会ったとき、どうだっだ?」と聞いたたったの5秒だけ。説明しますと、息子を失いかけた父親から、まったく別レベルの「一番大切なこと」が現れたのです。

1番目の会話の後、私のエネルギーレベルは床を突き破っていました。逆に2番目の会話の後は、エネルギーレベルが天井を突き破りました。

人があなたを中立的な状態にすることはほぼないです。人はあなたを「積極的」もしくは「枯渇」、どちらかの状態にするのです。

(会場拍手)


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