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今年のクリスマスを飾る豪華寝台列車ミステリー「オリエント急行殺人事件」のスリルとサスペンス!!

清藤秀人

2017/11/25(最終更新日:2017/11/25)


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 ミステリーの女王アガサ・クリスティの小説は過去に繰り返し映画化されてきた。巧妙に張り巡らせされたトリックと意外な犯人像が、名推理によって解明されていくプロセスは、上質のミステリー映画になりやすいし、ヒットが見込めるからだ。

 代表的な映画化作品は、孤島から出られなくなった10人が1人ずつ殺されていく「そして誰もいなくなった」(1945年と75年に映画化)。

 殺人事件の法廷に弁護側の証人として出廷した人妻が検察側に寝返る「情婦」は、57年と現在同じ原作を基にしたリメイク映画の制作がベン・アフレック主演で進行中だ。

 そして、パーティ会場で発生した奇怪な殺人事件の真相を推理好きな老婦人、ミス・マープルが解明していく「クリスタル殺人事件」は80年に公開され、ミス・マープル・シリーズはこれを含めて計4作品作られている。

大先輩の偉業に挑むケネス・ブラナー

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 そして、最も有名なのが、名探偵エルキュール・ポワロが難事件を解決に導くポワロ・シリーズだ。

 かつて、イギリスの名優、ピーター・ユスチノフが「ナイル殺人事件」(78年)、「地中海殺人事件」(82年)、「死海殺人事件」(88年)の計3本でポワロを演じている。

 しかし、何と言っても強烈だったのが、「オリエント急行殺人事件」(74年)で見事アカデミー賞候補に名を連ねたアルバート・フィニーのポワロではないだろうか?

 あれから43年。今年、大先輩の偉業を称えつつ、新たなポワロ像で勝負に出たのが、フィニーやユスチノフと同じイギリス演劇界にベースを持つケネス・ブラナーだ。

 ブラナーが監督と主演を務める2017年版「オリエント急行殺人事件」は、イスタンブールを出発した超豪華寝台列車内で発生する密室殺人の“意外すぎる”真相を、ポワロがその天才的な嗅覚を駆使して暴いていく過程を描く。

新旧どちらもオールスターが競演!

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 74年版は、フィニーのほか、リチャード・ウィドマークやローレン・バコール、そして、見事オスカーに輝いたイングリッド・バーグマンといったのベテラン勢が名を連ねた。

 さらに、ショーン・コネリーやヴァネッサ・レッドグレイブたち中堅俳優、当時アイドルだったジャクリーヌ・ビセットやマイケル・ヨークという、各世代のトップスターを集めた超豪華な布陣が魅力のオールスター映画だった。

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 それに対し、ブラナー版は、ウィドマークが演じた車中で殺害される富豪役にジョニー・デップ、バコールが演じた事件の鍵を握るマダム役にミシェル・ファィファー、バーグマンが演じた家庭教師にペネロペ・クルス、レッドグレイブが演じた宣教師に「スター・ウォーズ」のデイジー・リドリーという、前作と比べて決して見劣りしないゴージャスなキャスティングで対抗している。

リメイク版はカメラが車外へ飛び出す!

 しかし、最新作が何よりチャレンジングなのは、終始列車内にカメラをセットすることで独特の圧迫感と緊張感を生んでいた前作の縛りを取り払い、カメラを堂々と車外に持ち出した点。

 途中、雪崩に遭遇して鉄橋の上で立ち往生してしまった急行列車から容疑者の1人が脱出し、それをポワロが追跡する屋外アクションは、観客の視界を一気に広げてくれる。密室殺人という原作最大の売りを、映画的な方法論で凌駕する見せ場の1つだ。

 突如停止した列車内で発生する残忍な刺殺事件は、めぼしい乗客全員が容疑者という、推理劇としては類い稀な構造を持っていて、それがクリスティの原作が長く愛読され、2度も映画化される理由でもある。

 ビギナーは是非、情報を遮断し、頭の中をまっさらにして豪華寝台列車の乗客になって欲しい。


実物から再現されたオリエント急行

 ポワロの、物事に余白を与えない神経質な性格を物語る、冒頭のエルサレムのシーンだけは、地中海のマルタ島で撮影されている。

 その他のシーンはほぼ全編、「007 スカイフォール」や「ドクター・ストレンジ」が撮影されたロンドン西部のロングクロス・スタジオに巨大セットを組み、撮影された。

 凄いのは、スイスに現存するオリエント急行の“484列車”を基に、実物大の列車のセットが車内用と車外用の計2つ作られたこと。

 その結果、乗客が窓側のテーブルに座る間をポワロが歩く車内シーンと、イスタンブール駅をゆっくりと出発する列車の姿が、合成なしで提供されている。鉄道オタクは見逃せないだろう。

 いつも身支度が綺麗に整えられたポワロのワードローブは、演じるブラナーの体型に馴染むよう、何とクランクインの9ヶ月前に採寸がなされ、ネクタイの結び方が3か月も吟味されたとか。

ポワロの変化を見逃すな!

 それはなぜか? そこまで服にこだわり、いい物、ダメな物を明確に区別する、言い換えれば、世の中には善と悪しか存在しないと信じていたポワロ。

 しかし、オリエント急行内で発生した殺人事件を推理した結果、それまでの価値観を揺るがす人の世の真実を受け容れざるを得なくなるからだ。

 そこが、アルバート・フィニーが怪演したポワロ像にはなかった、人間ドラマとして魅力でもある。

 昨今のスーパーヒーロー映画に代表されるフランチャイズものとはひと味違う世界観を持つ、クリスマスムービーとしては異色の「オリエント急行殺人事件」。

 しかし、映画は全世界で大ヒット中で、ブラナーはすでにシリーズ第2作「ナイル殺人事件」の準備に入ったとか。果てはミステリー・フランチャイズの始まりか?

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【作品情報】
「オリエント急行殺人事件」
公式ホームページをチェック
12月8日(金)より全国ロードショー
©2017 Twentieth Century Fox Corporation


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