1. 石野純也のモバイル活用術:なんでこんなにスマホ料金が安いの?格安スマホのカラクリ

石野純也のモバイル活用術:なんでこんなにスマホ料金が安いの?格安スマホのカラクリ

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※写真は2016年のヨドバシカメラで撮影

 格安スマホ、格安SIMとも呼ばれるMVNO。料金相場はデータ通信だけで、3GB=900円程度で、音声通話をつけても1600円前後に収まる。同様の料金プランを大手キャリアで選ぶと、6000円〜7000円程度になるため、確かに“格安”という言葉がしっくりくる。実際、こうした料金プランが受け、利用者はここ数年で急増した。

 では、なぜ、MVNOは安価な料金プランを設定できるのか。1つは、大手キャリアよりも、コストの負担が軽いことがある。会社にもよるが、大手キャリアのように全国的なショップ網を持っているMVNOは少なく、テレビCMを見かけることもまれだ。

MVNOの多くがネットワークを“借りている”

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mineoや楽天モバイルのように、ショップを展開するMVNOもあるが、数は大手キャリアと比べるとまだまだ少ない。写真は東京・渋谷のmineoショップ

 こうした見えないコストがかかっていないことは、格安スマホが安い理由の1つ。端末も、開発まで手掛ける大手キャリアとは異なり、SIMフリーで売られているものを調達しているケースが多い。

 とはいえ、それだけが理由ではない。レイヤー2接続や帯域あたりの課金という仕組みも、料金を下げられる要因といえる。MVNOは大手キャリアからネットワークを借りているため、基地局などの設備は持たない。その分の料金は、大手キャリアに支払っていることになる。

 この課金方法が、レイヤー2接続の場合、帯域あたりいくらとなっているのだ。分かりやすくするために、具体例を出そう。MVNOの多くにネットワークを借しているNTTドコモは、2016年度の接続料を10Mbpsあたり、67万4818円に設定している。この金額を払えば、NTTドコモと相互接続して、秒間、10Mビットのデータが流れる“道”を借りられるというわけだ。

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MVNOは、大手キャリアと接続するためのパイプを、帯域という単位で借りている。写真は、2014年11月に開催されたIIJmioミーティングで示された図

 ここに1人のユーザーを収容しても、10人を収容しても、MVNOがNTTドコモに払う料金は同じ。借りた道にたくさんのユーザーが通れば、そのぶん、1人あたりの料金は下がることになる。ただし、ユーザーは常に通信するとは限らない。そのため、一般的なMVNOは、ピーク時に“そこそこの速度”で通信できるように帯域を借りている。

 この見込みが外れてしまうと、ユーザーの通信速度が極端に低下するケースもある。多くのユーザーが一斉に通信するお昼休みの時間帯に、十分なスピードが出ないのはそのためだ。ユーザーがMVNO側の見込み以上に増えてしまった場合なども、通信が常態的に遅くなることがある。安い分、大手キャリアのように、常時高速通信ができるとは限らないのだ。

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結果として帯域が足りないと、ユーザーの送るパケットが捨てられてしまい、速度が低下する

 もちろん、MVNO側も、ユーザーの属性の幅を広げることで、こうした状況に対処しようとしている。例えば、法人用途で、空いている夜にしか通信しないような回線を増やせば、無駄がなくなり、帯域の有効活用につながる。結果として全体の帯域が増えれば、お昼にある程度人が集中しても、快適に通信できるようになる。

 とはいえ、それぞれのMVNOが、どの程度の速度で通信できるかは、実際に使ってみないと分からない部分がある。この点は、安さとのトレードオフといえるだろう。契約時には、ユーザーの口コミを確認するなど、下調べも必要になる。

 また、安さを武器に成長してきたMVNOも、曲がり角に差し掛かりつつある。ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルが勢いを拡大し、これに対抗する形でKDDIも傘下の企業を使ってサブブランドを開始した。MVNOは、このあおりを受けている。

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MVNOの多くが回線を借りるNTTドコモの純増数が、年度当初の予想を下回っている。MVNOの勢いにブレーキがかかりつつある証拠だ

 MVNO同士の競争も激化している。事業を始める障壁が低いこともあり、現状では、すでに600社を超える会社が市場にひしめき合っている。この数で価格競争をするのは、特に体力がない会社には厳しく、下手に規模を追うと経営を圧迫しかねない。実際、すでにMVNOの淘汰は始まっており、最近では、FREETEL SIMを運営していたプラスワン・マーケティング社のMVNO事業が、11月に楽天に買収された。

 もちろん、すべてのMVNOの経営環境が苦しいというわけではなく、IIJのように、個人向けMVNO単独でも黒字化している会社はある。ただ、それをいちユーザーが見分けるのは、難しい話だ。結果として、元々ブランド力があったり、シェアの高かったりする大手に、ますますユーザーが集中することになっていくのかもしれない。

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