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西田宗千佳のトレンドノート:ソニーも出す「コラボ型スマートスピーカー」に注目せよ

西田宗千佳

2017/10/29(最終更新日:2017/10/29)


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 スマートスピーカーが今冬の注目商品であるのは間違いない。やはり目玉は、音声アシスタントを持つGoogleにLINE、そして、近々発表が噂されているAmazon……といった企業の製品だろう。

  だが一方で、それらの企業とコラボレーションする形で、自社でもスマートスピーカーを持つ家電メーカーも出てきている。国内ではそうした企業の先陣を切る形で、ソニーが10月26日、Googleの技術を使ったスマートスピーカー「LF-S50G」(予想実売価格・税抜き2万5000円)を、12月に発売すると発表した。

  こうした製品は、プラットフォーマーが発売する製品とはどう違うのだろう? そして、選ぶ価値はどこにあるのだろうか?

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ソニーの「LF-S50G」。Googleの技術を活用したスマートスピーカーで、12月に発売になる。予想価格は2万5000円。3色のバリエーションが用意されている。

音質と「キッチン対応」で攻めるソニー

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 LF-S50GはGoogleの技術を使ったスマートスピーカーである。具体的には、Google Homeとまったく同じように、音声アシスタントとして「Googleアシスタント」を利用している。

 だから、呼びかけるコマンドワードは「ねぇ、Google」だし、できることもまったく同じである。当然ソニーとしては、「Google Homeより良いGoogle Homeのようなもの」を作ることを目標に開発された。

 もちろんソニー製だから、音質は良い。Google Home同様にモノラルスピーカーだが、スピーカーの質と構造にこだわっており、より自然に、360度に音が広がる。音圧もGoogle Homeより高く、自然に響く感じだ。

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LF-S50Gのスピーカー。中高域の伸びの良さが特徴だ。

 だが、それ以上に大きな特徴なのが「キッチンで使いやすい」ということだ。

 LF-S50Gは防滴仕様になっており、水しぶきなどがかかっても問題ない。また、音量調整などは本体に触れず、ジェスチャーで行える。

 スマートスピーカーは声で操作するため、料理中などに使うと便利だ。とはいうものの、音量調節などのシンプルなことは触って使った方が楽なのも事実。

 そのためGoogle Homeも、ボリュームはタッチセンサーで操作できるようになっている。LF-S50Gの場合、センサーの上で指を動かすことでタッチと同じ役割を果たすようになっているので、本体に触れる必要がない。だから、料理中で手が汚れていたり、濡れていたりする時には、より使いやすい……ということなのだ。

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ボディの上でジェスチャーをすると、それで音量調整が行える。手が汚れている時や濡れている時でも操作が可能。

 そもそも、ボディのメッシュ部は取り外し可能で、しかも水洗いができる。だから、汚れてしまっても大丈夫だ。こうした部分も、「キッチンやリビングで使う」ことを想定した、独自の改善点といえる。

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メッシュ部は取り外しして洗うこともできる。より汚れに強い構造だ。

 また、LEDで時間なども表示されるようになっており、この点も、他の製品にない差別化点だ。

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時計などを表示するLEDも内蔵されている。

「パートナー製」スマートスピーカーが続々と登場

 冒頭で述べたように、ソニーのLF-S50Gは、Google Homeと同じように使える製品だ。かといって、Googleが作った製品をソニーが仕入れて売っているとか、逆に、そもそもGoogle Homeをソニーが作っている……というわけではない。

 Googleアシスタントはあくまでネットサービスだ。Google側が示した基準に合わせてハードウエアを作れば、Google以外の企業が、Googleアシスタントを使ったスマートスピーカーを作って販売することもできる。

 これをGoogleは「Work with the Googleアシスタント」と呼んでおり、複数のメーカーがこうした規格に賛同し、製品開発を進めている。日本向けではソニーが先行したが、欧米市場向けには、パナソニックやオンキヨー、JBLといった企業が、「Work with the Googleアシスタント」対応のスマートスピーカー製品の販売を準備中である。

 このような動きは、実はGoogle以上にAmazonが積極的に展開している。Amazonは、同社のスマートスピーカー・「Amazon Echo」に使われている「Alexa」をネットサービスとして使うための技術と、Echoと同じようなハードウエアを作るための技術を無償で公開している。

 サービスを使う場合にはメーカー側に費用負担が発生する場合もあるのだが、基本的には、ハードメーカー側が自由に「Alexa対応機器」を開発できる状況にある。今年1月、米ラスベガスで開催されたテクノロジー展示会「CES 2017」には、すでに700件以上の「Alexa対応機器」が出展されていた。今はさらに増加しているだろう。

 大手メーカーとしても、オンキヨーやハーマンカードン、レノボが開発中のほか、モバイルバッテリーやUSB電源のメーカーとしておなじみのAnkerも、Alexa対応スマートスピーカーの製品化を準備中である。

 今見えているスマートスピーカーの市場は、氷山の一角に過ぎない。AmazonやGoogleの製品はたしかに有力だが、多数のメーカーが製品を手がけることで、「より安いもの」「より品質の良いもの」「デザインに独自性のあるもの」が多数出てくることになる。Amazonが本命視されているのは、対応機器の裾野が圧倒的に広いから……という側面もある。

 賢く選ぶのであれば、そうした機器が出そろってから、品定めする方がいい。海外では、そうした「パートナー製スマートスピーカー」が出てくるまでに1年半以上の時間がかかったが、日本の場合、そもそもスマートスピーカーの市場投入が遅れたため、AmazonやGoogleのスマートスピーカーと、パートナー製スマートスピーカーの市場投入時期は、ほんの数ヶ月しか違わない。

価格競争で差別化は困難、「違い」をどこに見出すかが鍵

 とはいうものの、当面、AmazonやGoogleなどのプラットフォーマーの製品が強いであろう……というのは揺るぎない事実である。

 スマートスピーカーは、ハードウエアとしてはシンプルなものだ。だから、安く作ろうと思えば数千円でかなりの製品ができてしまう。Googleの製品を見ても、1万4000円(実売価格はもっと安いが)の「Google Home」に対し、6000円の「Google Home Mini」は大きく見劣りするものではない。むしろ後者の方が製品としてのまとまりは良く、お買い得だ、と筆者は考えている。

 Amazonの場合にも、海外で圧倒的に売れているのは、低価格版である「Echo Dot」(アメリカでの価格は50ドル)である。

 ここまで安くなると、価格で対抗するのは困難だ。安いものでは差別化は難しい。そうなると、各メーカーは「高付加価値化」で戦うことになるのだが、いかに音質がいいからといって、数千円で買える製品に数万円を支払う人の数は、絶対数としては限られてくる。だから、「スマートスピーカー全体」としては、結局プラットフォーマーが優位……ということになる。

 だからこそ、各社は「使用シーン」や「デザイン」など、マネのしづらい差別化要素を探すことになる。ソニーはそこで、音質のほかに「台所で使いやすい」という要素を組み込んだわけだ。このほかにも、自動車内に特化するところもあれば、家具に組み込みを目指すところなど、色々な方向性がある。

 さて、成功するのはどのような差別化だろうか。


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