1. イスタンブールの猫はペットじゃなく野良。究極の猫映画「猫が教えてくれたこと」

イスタンブールの猫はペットじゃなく野良。究極の猫映画「猫が教えてくれたこと」

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 今は空前の猫ブーム。今年、日本のペット市場で長年首位を守ってきた犬が、その座を遂に猫へ明け渡した。

 猫の国内の現存数は約1,000万匹、その経済効果は2兆3,000億円と言われている。すでに破綻濃厚な“アベノミクス”に対し、2015年に経済用語として浮上した“ネコノミクス”効果は、どうやらホンモノみたいだ。

猫人気を反映!猫映画が次々と

 女性誌の猫特集やテレビの「岩合光昭の世界ネコ歩き」がブームを煽る中、ここ数年、劇場では毎年のように猫映画が公開されている。

 冴えないボクサーと2匹の猫が織りなす日常を綴った「猫なんかよんでもこない。」、ベストセラー小説を映画化した「世界から猫が消えたなら」、スマホ向けゲームアプリを実写化した「ねこあつめの家」、ストリートミュージシャンと野良猫の触れ合いを描く「ボブという名の猫  幸せのハイタッチ」

 各作品は、単に猫の可愛さにフォーカスしたものではない。テーマや視点が広範囲に渡っている点が、猫ブームの定着を物語っているのかも知れない。

究極の猫映画はロッテンで98%の高評価!

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 そんな中、究極の猫映画が11月18日(土)から公開される。今年2月、アメリカの1館のみで公開していたが、直後に130館に拡大。結果的にアメリカ国内で公開された外国語ドキュメンタリーとして史上3位の興収を弾き出したトルコ映画「猫が教えてくれたこと」だ。

 お馴染みの映画評価サイト「Rotten Tomatoes(ロッテントマト)」ではプロの批評家たちから98%の高評価を獲得。その理由はおそらく、映画好きに猫好きが多いからでは決してない。

イスタンブールの愛すべき野良猫たち

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 まず、舞台が他のどこでもなく、トルコの首都イスタンブールであることがポイントだ。

 古くから海洋交易の拠点として栄えたイスタンブールには、東ヨーロッパ、アジア、南アフリカを広範囲に支配したオスマン帝国の船に乗って、世界各地から猫が集まって来たと言われている。

 日本の猫が中国からやって来たのとは少し違う。港に降り立った猫たちは、そのまま野良猫として地域に定住し、それ以来、今に至るまで町のあちこちで自由気ままに暮らしている。

 そう、イスタンブールの猫は基本、野良猫なのだ。

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 彼らが野良でいられるのは、町の人々が毎日、様子見にやって来る猫たちに餌を与え、かと言って拘束せず、あくまで隣人としての自由を保障しているから。

 イスラム教徒が大半を占める彼らにとって、猫は神からの使者であり、猫側から見ると、人間は自分たちを地上に送った神の代理人。だからこそ、猫は感謝すべき対象なのだ。

 そこが、衛生面の懸念から野良猫を殺処分するヨーロッパやアメリカ、単に放置するアジアやアラブ諸国、そして、ペットとして愛玩する日本とは違うところだ。



厳選された名物猫7匹をカメラが追う

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 このドキュメントではイスタンブールの名物野良猫にフォーカスし、その奔放なライフスタイルを追跡する。厳選されたその7匹を簡単に紹介しよう。

 ボスポラス海峡を望む人気シーフード・レストランに住み着き、お店の人から餌を貰う代わりに、レストランに出没する鼠を退治する“アスラン”。市場を牛耳り、漁師や闘犬を追っ払ってしまうほどの、わがままでワイルドな雌猫“サイコパス”。

 アーティストが多く住むジハンギル地区で暮らす魅力的な雄猫“ガムシズ”。町のランドマーク、ガラタ塔を根城にする泥棒猫の“サリ”。工業地帯で働く男たちをそのセクシーなルックスで虜にする灰色の虎猫“べンギュ”、オーガニック・マーケットのマスコット“デニス”。

 そして、ポスターにもフィーチャーされているのは、新市街のニシャンタシュ地区で人気のデリカテッセンをウィンドー越しに覗いては、チーズやターキーを分けて貰っているグルメ猫の"デュマン"。

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 それぞれの猫には、猫との触れ合いの中に生き甲斐を見出している人々がいる。両者の付かず離れず、それでいて心の何処かで通じ合う共存関係の、何と大人びて心地いいことか。

 そこから、宗教や町の歴史とは無関係に、相手を尊重する気持ちの大切さがひしひしと伝わってくる。

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 一方で、ドローンがとらえるイスタンブールの俯瞰映像は、急激な近代化によって猫たちの住処が奪われて行く現実を映し出す。「このままでは猫がいなくなってしまう」と不安がる住民もいる。人と猫が織りなす楽園の未来は、決して明るくはないのだ。

地上10センチの猫目線で地べたを徘徊

 本作で長編デビューを飾った監督のジェイダ・トルンは、トルコ生まれのアメリカ育ち。

 幼い頃、猫と暮らした経験があるトルンは、ドキュメンター撮影の経験豊富なカメラマン、チャーリー・ウッパーマンと2人で、まずは35匹の野良猫たちをリサーチ。その中から19匹を選んでカメラに治め、最終的に7匹に絞った。

 地上10センチの“猫目線”でイスタンブールを徘徊する絶妙なアングルは、まるで映画版“岩合光昭”。根気強く地べたに這いつくばった甲斐あって、観客は猫になってイスタンブールを探訪できる。リアルでディープな旅映画としても楽しい猫映画だ。

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【作品情報】
「猫が教えてくれたこと」
2017年11月18日(土)、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開
©2016 Nine Cats LLC
配給:アンプラグド

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