1. 現地の臨場感が凄い!映画「エルネスト」で日本とキューバの知られざる繋がりをオダギリジョーが熱演

現地の臨場感が凄い!映画「エルネスト」で日本とキューバの知られざる繋がりをオダギリジョーが熱演

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 キューバと日本は、カリブ海と極東の違いはあるにせよ、同じ形状を持つ島国同士。野球では世界のタイトルを奪い合うライバル同士でもある。

 さらに歴史の細部を紐解くと、両国の間には意外な交流があったことを教えてくれるのが映画「エルネスト」だ。

チェ・ゲバラがかつて広島を訪れていた?

 物語は、第二次大戦終結から14年が経過した1959年7月、アメリカ軍による原爆投下で壊滅的な被害を被った広島から始まる。

 この地に、後のキューバ首相フィデル・カストロと共に、キューバ革命(親米的独裁政権を打倒した武装解放闘争)を指揮した革命家、チェ・ゲバラが訪問してくるのである。

 社会の平等と自由を求めて闘い続け、39歳の若さで散ったチェ・ゲバラは、夢想家と革命家の代名詞となっており、むしろカストロよりもカリスマ性の高い存在。

 「オーシャンズ11」(01)で知られるスティーブン・ソダーバーグが監督した「チェ 28歳の革命/ 39歳 別れの手紙」(08)を筆頭に、これまでにも劇映画とドキュメンタリーを含めて計11本の映画が作られてきた歴史的アイコンだ。

 中でも、チェの若き日のバイク旅行にフォーカスしたロードムービー「モーターサイクル・ダイヤリーズ」(04)は、自分の未来を模索する若者たちのバイブルとして愛される青春映画の傑作だ。

 そんな“チェ映画”の12本目となる「エルネスト」は、しかし、チェ・ゲバラが主人公ではない。

主人公は日系人移民2世のフレディ前村

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 主人公は、チェが広島を訪れてから3年後の1962年、医師を目指して南米のボリビアからキューバのハバナ大学に留学してきた日系人青年・フレディ前村だ。この映画は、彼がやがてチェと共に革命の一翼を担うまでを、史実を忠実になぞりながら描いて行く。

 鹿児島県出身の父とボリビア人の母の下、5人兄弟の次男として生まれたフレディは、幼い頃から貧困や病に苦しんでいる人々に手を差し伸べる優しい心の持ち主だったと言われている。

 やがて、医師を目指してハバナ大学に留学したフレディは、折しもキューバ革命の最中にチェ・ケバラと出会いその人格に魅了される。

 その後、母国ボリビアでクーデターが発生し、勉学の道を捨て、革命軍の一員として久々に帰国したフレディは、部隊を指揮するチェから戦地での戦士名"エルネスト"を授けられる。それは、チェ自身のファースト・ネームでもあった。

チェとフレディには多くの共通点が

 チェとフレディには多くの共通点がある。共に裕福な家庭に育ちながら、幼くして不平等が蔓延る社会に疑問を持っていた。やがて異国の地で出会い(チェの母国はアルゼンチン)、理想的な世界を目指して短い命を燃やしたこと、などなど。

 そんな2人の、言い換えればキューバと日本の知られざる繋がりを、歴史的文献と現地調査によって研究し尽くし、映画化に踏み切ったのは、昨年異色の集団住宅SF「団地」で日本映画の各賞を総ナメにした阪本順治監督。

 これは、阪本監督が製作期間として実に4年を費やした渾身の作品なのである。



お手盛り現地ロケ映画にはない臨場感が! 

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 監督は製作準備段階で度々キューバを訪れ、足を棒にしてロケハンに奔走する一方、チェ役を始めメインキャラを演じるキューバ人俳優のオーディションを敢行。

 そして、昨年9月3日から10月13日まで約1ヶ月半を費やし、キューバ国内の各地でロケーションを行った。

 ロケは度重なる予定変更と、現地人スタッフとのミスコミュニケーションに苦しめられたという。

 しかし、そんな苦難が映像に結実した「エルネスト」は、過去に海外ロケを行った多くの日本映画に見受けられる、“とりあえず外国でそれらしい風景を撮ってきました”的なお手盛り感は皆無。

 たとえ短期間でも、地域に根ざした作り手の思いが、その風景に、カメラワークに、俳優の演技に乗り移り、観客をカリブの孤島で起きた史実の裏側へとまんま運び去るのだ。

オタギリジョーのスペイン語が凄い!

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革命で繫がった同志、チェ・ゲバラとフレディ。

 フレディ役に指名されたオダギリジョーが、阪本監督の情熱に呼応するように、12キロも減量し、肌を褐色にし、頭をフレディと同じ縮れ毛にし、最も困難だったに違いないボリビア方言のスペイン語を完璧にマスター。

 キューバ人共演者たちと交わす会話のスムースさは、これまた台詞のために外国語を即興で学んだことがバレバレな、多くのケースとは完全に一線を画すレベルなのだ。

 息苦しい世の中を変えられると信じ、人生を駆け抜けたチェやフレディを、単に夢想家と斬り捨てず、今、何を思い、何をすべきかを我々に問うてくる本作。

 しかし、ひとまずそんな理屈はさておき、日本映画と日本人俳優の可能性を形にして示した海外ロケ作品として、推薦しておきたい1作だ。

【作品情報】

「エルネスト」

公式ホームページ:http://www.ernesto.jp/

10月6日(金) TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー

©2017 “ERNESTO”FILM PARTNERS.

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