1. 「障がい」表記は逆に好感度低い?1200人に聞いた「障害/障がい/障碍」表記の違い

「障がい」表記は逆に好感度低い?1200人に聞いた「障害/障がい/障碍」表記の違い

by Keoni Cabral

 “「障害」の「害」の字はよくないから、「障がい」とひらがなにして書きましょう”……学校や勤務先で、このように指導された経験はあるだろうか。

 しかし近年、「障がい」表記を考え直す動きが目立ってきた。

私からしたら、障害は本人じゃなく社会やから、ひらがなに直して、勝手に消さんといてほしい

出典:パラリンピック水泳日本代表の一ノ瀬メイ 「障がい」の表記に「嫌い ...

私は「障害」を「障がい」と置き換えることには反対です。
「障害」という言葉が引っかかるからこそ、それを社会的に解消しなければならないわけで、表現をソフトにすることは決してバリアフリー社会の実現に資するものではありません

出典:「障がい者」表記に反対する熊谷俊人・千葉市長、どうして?

 今回、筆者によるWEBアンケートに答えてくださった約1200名の方々の中では、実は「障害」表記の方が全体的に好感度が高い、ということがわかった。「障がい」表記はいやだという人の方が、「障害」表記はいやだという人の約2倍となっている。

 多数決の問題ではない。そもそも、表記を変えて根本解決できることでもない。ただ、自分の言葉がどのように受け取られ、どのような意味と経緯を持つのかを考えて「障がい」と書くか否かを決めることは、「“障がい”って書いておけば無難でしょ?」というよりも、ずっと豊かな言葉の使い方ではないだろうか。

 あなた自身が納得できる言葉づかいをするために。あなたのビジネスや人間関係を、よりよいものにするために。まずは、アンケート結果を見ていこう。

※なお本稿では、法令における表記に則り「障害」表記としている。

1200人に聞いた「障害/障がい/障碍」表記による印象の違い

「障害」(障子の障に、有害・無害の害)は……いいと思う 50.8% 場合によってはいいと思う 16.1% 場合によっては嫌だと思う 22.4% どんな時でも嫌だと思う 8.1%
 まずは、「障害」表記。このアンケート結果に限る話ではあるが、なんと半数の人が「いいと思う」と回答している。
  • 私自身障害持ちですが、「障がい」表記はすごく嫌い。「障害」がいい。完全に好みの問題で。でも「障害」表記が嫌な人に向けて書く時は配慮します。(一部引用)
 「害」の字ばかりを問題にするのではなく、「障害」という一単語で捉える見方があるようだ。
  • 素敵や貴様のように文字面(づら)だけで判断されないものもあるので、それと同じものとしてみてます。

 しかしながら、理屈ではない抵抗感を示す人もいる。

  • 書き方そのものを制限するよりか、一般の方の理解が深まってくれる方が嬉しいです。ただ、「害」という表記を見る度、ドキッとしてしまうのも事実。(一部引用)
  • 「障害」という文字を見た時だけ、心がチクッとします。

 漢字の意味は「邪魔、妨げ、災い」など。用例で言えば「害虫」「妨害」「災害」などとなる。意味が近いと言われる「障」の字と決定的に違うのは、「害」の字に「生き物の命を止める」という意味があることだ。

 「傷害」「殺害」などといった熟語のイメージを考えると、どうすることもできない抵抗感を持つ人がいてもおかしくないだろう。


「障がい」(障子の障に、ひらがなで「がい」)は……いいと思う 30.7% 場合によってはいいと思う 22.6% 場合によってはいやだと思う 22.9% いやだと思う 20.2%

 続いては「障がい」。「障害」表記に比べ、いいと思う人が約半分、いやだと思う人が2倍になった。

  • 私自身も息子も障害を持っているので、役所の書類等でその単語を見る機会は多いのですが、今住んでいる自治体では「障がい」と書かれていることが多いです。「が」が一瞬助詞の「が」に見えやすくて、読みにくいです。正直、「配慮してあげてますよ」というポーズに思えてしまいます。(一部引用)
  • 障がい、障碍だと自動読み上げ機能で、さわがいになってしまうというのも問題点の1つ(一部引用)

 印象の問題ではなく、音声読み上げブラウザ等で認識されにくいという具体的問題も生じている。

 漢字ひらがな交ぜ書きの「障がい」表記は、「がい」が良いから、ではなく、「害」がダメだから、という、消極的理由で使われているというのが実情のようだ。


「障碍」(障子の障に、碍子の碍、石へんに損得の「得」の字のつくり)は……いいと思う 23.9% 場合によってはいいと思う 23.4% 場合によってはいやだと思う 22.2% いやだと思う 17.9%
 最後に、「障碍」表記。もともと「しょうがい」は「障碍」と書かれていたが、1946年、「碍」という漢字が当用漢字から外れたことから「害」の字が当てられるようになったという経緯がある(参考:内閣府 「障害」の表記に関する検討結果について)。
  • 本来の日本語の表記は「障碍」なので、これが一番しっくりきます。(一部引用)
  • 私は日本語という言語がとても好きなので、政治や一部の思想によって曲げられてしまう前の、きれいな日本語を使いたいという意図から「障碍」を推奨したいです。(一部引用)
 ただし、「碍」が当用漢字から外れて70年以上経過した今、この字は5人に1人が「読めない」と回答しており、そもそも伝わりにくいという問題もある。漢字の意味は「妨げる」で、行く手を阻む石のイメージからできている。確かに、「害」の字よりはイメージがソフトである。

 以上、「障害」「障がい」「障碍」それぞれの印象の違いを見てきた。その他、アンケートによると、このような意見も見られた。

「障害」ではなく、別の表現を考えたい

  • 「要支援」
  • 「チャレンジド」
 「チャレンジド」は英語由来で、「挑戦という使命や課題、挑戦するチャンスや資格を与えられた人」という意味が込められている。カタカナ語であるため、伝わりにくくはなるが、就労支援やスポーツ大会などの場ではすでに使われた実例がある。

 表記、そして表現。このような議論がなされるようになった背景には、障害そのもののを捉える視点が変化してきているということが挙げられる。「医学モデル」から「社会モデル」への変化だ。
那覇空港内の案内板。これなら視認性が高く、漢字では不便だという人にも伝わる

「医学モデル」から「社会モデル」へ

 もともと、いわゆる「障害」は、各個人の側にあり、医療により対処すべきものであると捉えられてきた。これを「医学モデル」という。「個人モデル」という場合もある。

 しかし、障害というものは、本当に各個人の側だけにあるものだろうか? 近視を例に考えてみてほしい。

 近視の状態では、標識や歩行者が見えにくいため車の運転が難しい、スマホや本に極端に顔を近づけないと文字が読めない、といった困難がある。

 こうした個人の困難を、社会は、メガネ・コンタクトレンズ・レーシックといった技術で軽減している。加えて、近視の人々への理解を広め、制度的差別をしないことで、極力、不平等が生じないようにしている。

by kenteegardin

 だが、社会の側で技術や理解や制度の整備が追いついていなければ、こうはならないわけだ。よって障害とは、各個人だけに帰するものではなく、個人が社会参加にあたって直面する障壁によって生じるものである、という見方もできる。これを「社会モデル」という。

 社会モデルの見地に立てば、「個人の存在が社会にとって障害となる」のでは決してない。「個人が社会における障害に直面する」ということなのだ。個人を「障害」扱いするのではなく、社会の側にある「障害」を直視し、解決していこうという視点に立てば、「障害」表記は適切であるという意見もアンケート結果にみられた。
  • 「障害」という言葉は、社会が個人に対して「お前は害だ」と突きつけるレッテルではなくて、むしろ障害に悩む個人が、社会の用意した障壁に対して「邪魔だ」と言ってのけるための、社会へのアンチテーゼなのだ。

まとめ

「障害」

  • 法令の名称(「障害者差別解消法」など)で使われている。
  • 「殺害」などを連想し、理屈ではない抵抗感を持つ人もいるため、個人を指して使う際は相手の言葉遣いに合わせることが必要。

「障がい」

  • 一部自治体や企業など、不特定多数の住民・顧客・従業員などに対応する必要がある時に使われている(「障がい福祉課」など)。
  • イメージがソフトになる反面、助詞の「が」と見間違えられてしまう、音声読み上げブラウザで認識されづらいなどの問題も。

「障碍」

  • 元々の日本語の表記。マイクロソフト、コクヨKハートなど一部企業で使われている他、この表記を積極的に使う個人や民間団体もあり、常用漢字に追加しようという動きもある。
  • 本稿のアンケートによれば5人に1人が読めないという結果だった。

 それぞれに長所と短所があるが、基本は「相手と自分の関係性の中で考えること」「特定の個人を指す場合は、その人の言葉遣いに合わせること(例えば、「障がい者」と名乗る人は「障害者」と呼ばず「障がい者」と呼ぶ)」であろう。

 表記が割れたことで不便もあるが、そのぶん、人それぞれの考え方に合わせることができるようになった、という捉え方もできるのではないだろうか。

 なお、アンケートの設問はこちらのURLからご覧いただける(※外部サイトに遷移する)。

 すべて匿名で、回答すれば最新の結果が見られるようになっている(回答後、「前の回答を表示」から閲覧可能)。一度回答した後の訂正も可能だ。

 書き方を変えただけでは解消できない困難がある、というのはもちろんのことだ。しかし、身近なところから少しでもよくしていくためには、考え、そして話し合うのが第一歩なのではないだろうか。

参考文献:学研漢和大字典(1978)、改訂新版漢字源(2002)

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