そろそろ夏の長期休暇に入る、という方も多いのではないだろうか。
「休暇だけれど、暑いしお金もないし……」
そんなインドア派のあなたには、ネット配信でドラマやアニメの「イッキ見」がオススメだ。
2年前にNetflixやAmazon Prime Videoが日本参入を果たして以降、「月額固定料金制(通称SVOD、サブスクリプション・ビデオオンデマンド)」のネット配信は、コンテンツの量と質を急速に高めている。そろそろ、使ってみないともったいない。
今回は、ネット配信に良質のコンテンツが集まる理由と、初めてSVODを使う人にオススメの使い方をお伝えしよう。
見放題のネット配信「SVOD」とはなにか
SVODは「月額固定料金制」という名前の通り、毎月決まった料金を支払えば、登録されている映像作品が何本でも、何回でも見放題になるサービスだ。視聴にはPCやスマートフォン・タブレットの他、PlayStation 4などのゲーム機、低価格なセットトップボックスが使える。
ここ2年くらいで販売されたテレビやブルーレイレコーダーであれば、視聴機能が搭載されたものも多くなっている。その性質上、最低数Mbpsの速度が出るインターネット回線が必要になるが、逆にいえば、そのくらいの準備で使えてしまう。当然、工事や新しい機器の購入は不要だ。
通信料金がかさむので固定回線での利用をオススメするが、スマートフォンなどでモバイル回線を使って見ることも十分にできる。しかも、月額料金は500円〜1500円程度。衛星放送やケーブルTVに比べれば安く、月に数回DVDをレンタルする人ならば元が取れる程度である。
こうしたサービスは、海外、主にアメリカでまず火がついた。現在世界最大のSVODであるNetflixは、アメリカの半数の家庭が契約し、ゴールデンタイムのすべてのネットトラフィックの3割をNetflix向けが占めるという、バケモノのような規模になっている。全世界での契約者数も、先日1億人(!)を超えた。
通販大手のAmazonも、有料会員サービス「Amazon Prime」契約者向けに、「Amazon Prime Video」を展開中だ。これが世界第二位のサービスになっている。日本でも、NTTドコモとエイベックスが合弁で展開する「dTV」、外資系サービスを日本テレビが買収して展開する「Hulu」などが積極的なビジネスを展開し、活況を呈している。
巨大な予算で新規作品が続々登場
SVODが騒がれる理由は、いままでのDVDレンタルやケーブルテレビ、放送とは違う仕組みで、「新しいコンテンツが大量に生まれる」ようになったからだ。これらのサービスでは、映画館向けの映画やテレビ放送されたドラマ・アニメも大量に用意されているが、むしろ魅力は「オリジナルコンテンツ」にある。
映像配信のために作られ、放送やディスク販売よりも先、もしくは同タイミングで見られる作品が毎週のように増え、放送や映画以上に活気がある。
それも当然のことだ。Netflixは、2017年、オリジナルコンテンツ作成に「60億ドル(約6600億円)」もの予算を配分している。アマゾンも同様だ。国内事業者はそこまでの規模ではないが、少なくとも、一般的なドラマやアニメと同規模の予算を用意し、オリジナル作品を作っている。
身も蓋もない話だが、予算がそこにあり、新しい作品を作りたいと思うクリエイターが集まっているからこそ、活気が出るのである。
そのため、アメリカでは「ドラマの黄金期がやってきた」と言われている。ソニーも決算内で、「映画事業の収益には、ネット配信向けのオリジナルドラマ制作が大きく寄与している」(ソニー・吉田憲一郎CFO)と明言するほどだ。
日本では特に、海外市場も視野に入れたオリジナルアニメ制作が活発だ。アニメ制作には1作品で数億円がかかる。
全額がSVOD事業者から出ることはないが、アニメ制作関係者の話によれば、「配信権料などを勘案すると、費用の半分以上をSVODから回収できるため、積極的な制作体制を作れる」という。
規制・制約からの解放がコンテンツの拡大を生む
では、なぜそこまで活況なのか? 予算がつくのか? 多分に先行投資の部分があるが、なにも赤字覚悟でばらまいているわけではない。
理由は、既存のビジネスの「閉塞感」にある。
近年映画やドラマには「表現規制」がつきものだった。性的・暴力的表現はもちろんだが、政治的なスタンスでも、タバコなどの描写でも制限が多い。特にテレビ放送は、誰もが見るものになったため、昔のように自由な表現をすることは困難だ。映画でも、マス向けには当然「枠」がかけられる。
表現規制だけでなく、企画面でも閉塞感があった。どんどん制作規模が大きくなり、予算が必要になった結果、ヒットを狙うために冒険がしづらくなり、無難で続編的なものばかりが通りやすくなった。
こうした点に風穴を開けたのが、Netflixである。
彼らは考え方を変えた。有料配信で、誰がなにを見たかは把握できる。逆にいえば、「SVODは誰もが付和雷同に見るものではない」と定義したわけだ。表現で萎縮するのは、意図しない人々からのクレームを恐れてのもの。「望む人々に狙ってコンテンツを届ける」と考えれば、規制の判断は当然緩くできる。
アメリカの有料放送には存在した考え方なのだが、この方法論をより大規模に展開し、「まずクリエイターの意見ありき」でコンテンツ作りをするようにしたのである。
企画面でも、視聴数の目標はあり、それが続編制作への指針にはなっているものの、視聴率や映画興行収益のような短期的な数字での判断はしていない。なぜなら、コンテンツは増えて蓄積されていくが、消えるわけではない。
公開半年後でも1年後でも、見られればサービスにとってはプラスになるからだ。長期的にブランドにプラスになる、と判断されれば、「顧客を釣る」力が弱いものでも企画にゴーが出る。
そもそも、放送と違って「尺」の制限が緩いし、CMを入れる場所が決まっているわけでもないので、映像の作り方のフォーマットがゆるい。これだけで、クリエイターにとっては大きな「制約のなさ」になる。
こうした「制約からの解放の可能性」は、過去にもあったことなのだ。
衛星放送・ケーブルTVが初めて生まれた時にも、レンタルビデオ店が増えて「オリジナルビデオ作品」という市場が出来た時にも、そこには新しい可能性があった。SVODにあるのは、要はそうした可能性の新しい形であり、それが「世界規模で起きている」ということなのである。
クリエイターにとっては天国のような環境に見えるが、もちろん厳しさはある。見られる数や「どこで視聴が止められたか」をサービス側は把握しているので、特に続編制作への判断は放送よりも映画よりも厳しい、という。
日本の慣習では、作品は毎週完成させていって納品し、企画が出来た段階でもある程度の収入がある場合が多いのだが、海外ベースのSVODでは「完成納品後の支払」が基本。13本なら13本、26本なら26本、完成するまで収益は上がらない。計画的な制作体制が求められる。
だがそれでも、新しい市場の可能性があることが、世界的なSVODの隆盛を生んでいるのだ。
まずは無料体験「必要な時だけ契約する」柔軟さも
じゃあ、どこのサービスで、どれを見ればいいのだろうか? SVODの欠点は、外部からでは、どのサービスがいいのかわかりづらいことだ。結局、サービスの人気で判断することになってしまう。
そこでオススメなのは、とにかく「全部まず入ってみる」ことだ。大変なお金がかかりそうだが、初回ならは、実は「無料」で済む。2週間から1ヶ月の「無料体験期間」が設定されており、その間はどこも、コンテンツを無料で見放題にできる。これを活かし、自分に向いたサービスを選べばいのだ。
この夏休みにドラマやアニメをイッキ見するなら、無料で済ませてしまうことだってできる……ということではあるのだが。
筆者の私見で、サービスのイメージを簡単にお伝えしよう。
世界最大手のNetflixは、特に海外ドラマが強い。アニメにも力を入れている。自由度の高さから、オリジナル作品の「独自性」は一番高い。一方、国内のドラマやバラエティにはまだ弱さもある。
Amazon Prime Videoは、外資系のイメージとは裏腹に、国内向け作品が非常に強い。むしろ海外ドラマは他の方が質が良い印象だ。特にここ1年は、国内向けのバラエティ、特にお笑いとリアリティショーに力を入れている。過去のドラマやアニメも多い。
国内でもっとも契約者数の多いdTVは、やはり国内コンテンツが強い。エイベックスが主体となっているので、同社のライブ系コンテンツが強い、というのも特徴だろう。オリジナルコンテンツは映画などとのコラボ作品が中心。知名度はあるしファン向けにはプラスだが、面白みには欠ける。
Huluは、日本テレビ傘下ということもあって、テレビ由来のコンテンツが厚い。特に、テレビ放送の「見逃し視聴」に魅力を感じるなら価値が高い。意外と海外ドラマも強く、質が揃っている。
実際のところ、1つのサービスですべてのニーズをカバーするのは難しいので、2つくらいを契約して使うのがオススメだ。
また、見たいものをだいたい見た……と思ったら契約を一旦止め、別のサービスに乗り換える、という形でもいい。数ヶ月毎にサービスを「サーフィン」していくようなイメージだ。サービス契約に工事などが不要なので、そういう柔軟な考え方でいい。ある意味それが、SVODのもっとも良いところ……と言えるかも知れない。
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