1. 厚切りジェイソンが語る新時代の働き方

厚切りジェイソンが語る新時代の働き方

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 「パラレルキャリア」という言葉が世の中に登場し、少しずつ浸透しつつある昨今。日本政府が副業解禁を宣言したいま、ビジネスパーソンの働き方は大きな変革を迎えている。

 では、本業のみならず副業でも活躍するためには、どうすべきなのだろうか。

 今回は、芸人とビジネスパーソンの両軸で成功を収めている厚切りジェイソン氏と、プロワーカーと日本全国の企業をつなぐ株式会社サーキュレーションの代表を務め、自身も“副業・兼業“についてのプロフェッショナルである久保田雅俊氏が対談。

 副業元年という社会背景を踏まえ、これからの「新しい働き方」について話し合った。

「芸人“を”やりたい」ではなく「芸人“も”やりたい」だった

——日本政府が副業解禁を打ち出したことで、今後、働き方が変化すると捉えられています。パラレルキャリアを実践する立場と、牽引する立場にいるお二人は、現在の日本に対してどうお考えでしょうか?

久保田雅俊(以下、久保田):日本は歴史をたどっても終身雇用が前提であり、製造業が主の国だったために、働き方が変化しづらい国だったんですね。女性やシニアの活躍支援や、グローバリゼーションに関してもそうです。

しかし、労働人口が減少しているなか、時代の流れとして働き方を変えていかなければなりません。じゃあどこから変えるか、というとホワイトカラーの優秀層がターゲットになる。高い職務遂行能力を持った会社に頼らずとも成果が出せる人たちなんです。

ところが、この層は大手企業で良いポジションについていて、安定しているからなかなか環境を変えられない。

厚切りジェイソン(以下、ジェイソン):アメリカ合衆国建国時の話に少し似ていますね。ヨーロッパで安定した職に就いていた人たちは、その環境から出るリスクが大きかった。

ところが、生活が困窮していた労働階級が集まり「新しい機会が待っているかもしれない!」と飛び出した結果がアメリカなんです。
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——ジェイソンさんは、芸人とビジネスパーソンという、まさにパラレルキャリアとして活躍されてらっしゃいますが、現在のキャリアを選んだ理由を教えてください。

ジェイソン:まずビジネスパーソンとしてITを選んだ理由は、子どもの頃から「こんなに早くモノが変わっていく業界は他にはない」とワクワクしたことが大きいですね。世界の流れはITが握っている、と。

IT業界でキャリアを順調に積んでいるときは、自分の成功ばかり考えていました。そんな中で、ある時ふと「自分の好きなこともやってみたいな」と感じるようになって、芸人をやろうと決めたんです。

同時期に芸人を目指した同期は、「芸人“を”やりたい」であって、それ以外の人生はすべて捨てていました。でも、その中から売れた人はいないんですよね。僕は「芸人“も”やりたい」だった。もちろん、仕事を辞めることはまったく考えていなかったので、週末などの時間を使って目指すことにしたんです。

このやり方だとリスクはありません。いろいろなスキルが身につくかもしれないし、人前でより話せるようになるかもしれない。普段の仕事との相乗効果もあるし、やらない理由がなかったんです。

久保田:もともとエリートじゃないですか。その立場から考えると、芸人はメリットもあるとは思いますが、本当にリスクはなかったんですか?メディアに出ることで、仕事の調整がきかなくなるとか。

ジェイソン:実は少しありました。売れだした頃は、お笑い番組で変なことをやらされたら、取締役会で「ジェイソン何やってんの?」と言われたり(笑)。

ただ、それよりずっとメリットが大きかった。会社のメディアへの露出にもつながるし、「柔軟な考え方を持ったほうが事業にとってもプラスになる」と説得できましたね。

久保田:なるほど。それでも会社とのバランス調整が一番大変だったときはいつでしたか?

ジェイソン:ちょうど売れ出したときですね。いろいろと時期がかぶったんですよ。2015年の2月に、R1決勝戦。そして、2ヶ月後には勤める会社が上場するタイミングで。多方面から注目を浴びて、多忙な時期を送っていました。その時期のことはよく覚えていないくらい大変でしたね。

久保田:その時期に発見したことや学びはありましたか?

ジェイソン:「断ることも大事」ですね。本当に必要かどうかを見極めて、他の人でもできることはどんどん断っていく。全部やろうとするとパンクするので無理ですね。

久保田:その際、仕事の選び方はどうやって決めていますか?

ジェイソン:この先のヴィジョンややりたいことに紐づくかどうかですね。僕は将来的にエンジェル投資家として確立したいので、そのためにプラスになる仕事を優先しています。

例えば最近だと、若い経営者の間で流行しているニュース系のネット番組を担当していますが、注目してほしい層が見ているので他の仕事より優先しています。

日本の99%を占める中小企業が抱えるリスクの先に見えた答え

——久保田さんが、パラレルキャリアをサポートする『サーキュレーション』を立ち上げたきっかけはなんでしょうか?

久保田:21歳のときに中小企業の代表をしていた父が倒れて、そこから約12年間、介護をしていたんです。突然だったので、金庫の所在もわからない状態。会社は継続不可能となり、僕が清算することになりました。

実はこの時期に、日本の中小企業の実情を知ったんですね。僕が経験してきたことは、僕だけじゃなくて、日本の多くの会社にあるリスクだとわかりました。日本は99%が中小企業で、9割が家族経営です。そして黒字率は3割で7割が赤字という現実。

ジェイソン:ひどい。それはきつい現状だ。

久保田:また、事業承継にリスクがあるんです。要するに、引き継ぐ相手がいない。子供が地元に帰ってこない、引き継ぐあてがないなど、60歳以上の経営者の50%が廃業を選択している事実があります。

中小企業に人が行き届いていないということは社会問題です。経営者が経理や人事などバックオフィスまで全てをこなし、新規事業や新しい挑戦ができていない企業が多い。優秀なビジネスマンを採用する余力もないし、そもそも人材が集まらないという現状。

ところが、多様な働き方ができる経験・知見を有した人たちが、例えば課題解決者として中小企業に週1日入るだけで、一気に変わります。

こうした問題を解決するのはコンサルティング企業じゃない。銀行でもない。と考えたときに「プロの経営者や彼らをシェアするシステムが必要だ」と。その想いがサーキュレーションの事業を発想した原点ですね。

「何をやっているんですか?」の答えに見る、アメリカと日本の仕事観の違い

——アメリカと日本の働き方の違いはどんなところでしょうか?

ジェイソン:日本では「仕事は人生」という考え方の人が多いですよね。僕が「何をやっているんですか?」と聞くと「会社員です」と答える。それは答えになってない!

アメリカだと「こういう仕事をしています」と同時に、「それ以外にもこういうことをしています。ボランティアもしています、起業も考えています」といった感じで、社会的にパラレルキャリアが当たり前なんですね。

久保田:僕はさまざまな国の働き方を調べるのが好きなのですが、アメリカの働き方は参考になります。特に企業と個人の契約形態が多様なことです。アメリカでは、個人として会社と付き合っているんですよ。「俺を見てくれ」と。

ジェイソン:日本人はアピールしないですからね。

久保田:そうなんです。あと社内の横を見ている。「俺とあいつを比較して、どちらが上にいけるか」みたいな。

一方、アメリカはオープンイノベーションです。先ほどジェイソンさんがおっしゃったように、日本人に「何しているの?」と聞いているのに「◯◯(会社名)にいる」みたいに返ってくるんです。

一方でアメリカでは「こういう目的がある。こういうミッションを担っている」という答えが返ってきます。こうしたところに働く価値観の違いがあります。
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パラレルキャリアとして成功する秘訣は「突出性」と「差別化」

——これからの時代、パラレルキャリアとして成功する秘訣はなんでしょうか?

久保田:まず何かひとつで良いので、頭ひとつ抜けること。会社や業界の中での突出することですね。20代のうちに、100人にひとりになるレベルを目指してください。「会社の中で100人に1人」というよりも「同じ市場で同じ仕事をしている人」の中で。

サラリーマンで突出性を意識している人はあまりいません。だからこそ本業はもちろん、ボランティアでもいいから、いくつか突出したものを作っていくことが大事になってきますね。

ジェイソン:まさにその考え方で、僕は日本語を勉強しはじめたんですよね。ひとつのことだけで差別化をはかるのは難しいですが、組み合わせると専門性が作りやすくなります。

僕はコンピューターサイエンスを学んでいましたが、それを活かすためのもうひとつの領域を考えたとき、技術的に日本が進んでいたこともあり、じゃあ日本語を勉強しよう、と。コンピューターサイエンスだけを勉強していたら、きっと埋もれていましたね。ところが、スキルを組み合わせることで、23歳でクラウド企業の日本法人支社長になれたんですよ。

久保田:組み合わせの重要性ですよね。要するに「倍速」なんですよ。10人にひとりのものと、10人にひとりのものをかけ合わせると、100人にひとりになれる。こういうキャリアの考え方が、今の時代には合っていますね。
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副業をする「リスク」なんて実はほとんどない

——新しいチャレンジに尻込みしてしまう、会社があることを言い訳にしてしまうビジネスマンに、一歩踏み出すためにどんなアドバイスをされますか?

ジェイソン:僕が芸人を目指したように、リスクが少ないやり方が絶対にあるはず。自分の時間を使ってやってみれば、肌感覚でわかります。「会社があるからできない」は、自分ががんばらなくていい言い訳をしたいだけですね。

久保田:ジェイソンさんと同じく「何かやってみよう」は本当に大事です。ただ、何をやったらいいかわからない人が多い。であれば、まずは見てみること。18時に仕事を終えて、友だちのベンチャー企業に行ってみればいい。もしくは、どこかのボランティアに参加してみるのもいい。結局、行動する人が勝つんです。日本は行動する人が少ないので、動くだけで一気に進みます。

リスクなんてほとんどないんですよ。そのうち就業規則の副業規定が改定されるので、今から早めに動いたほうがいいですね。5~10年後になったら、副業・兼業がマジョリティになっているかもしれない。

ジェイソン:僕の場合、芸人はまず“好き“だったからはじめましたが、意外と仕事になるということに途中で気づきました。そこから社会に必要とされだした。好きではじめたことがヒットした、これはやってみないとわからないんですよね。

日本は失敗を怖がっているビジネスパーソンが多いですよね。「失敗=死ぬ」みたいな。あれはやめたほうがいいです。とりあえず幅広く色んなことをやってみることが大事ですよ。なにができるか、社会に必要とされるかは、やるにつれて肌感覚でわかってきますから。

——久保田さんは今後、どんな挑戦をしていきたいですか?

久保田:日本で経験や知見を有している人たちに、もうひとつ違う道筋を提示して、新しい働き方や価値観を創り出せる会社にしたいですね。それから、ミッションで働くことのやりがいを伝えていきたいです。弊社に登録していただく方々を見ていると、すごく楽しそうなんですよ。それは、お客様の声がダイレクトに届くからなんですね。

「お前、部長になってよかったね」なんて褒め言葉でもなんでもないじゃないですか。「あなたが入ってくれたおかげで、会社がこんなにバリューアップした」といった声がダイレクトに聞ける喜び。このやりがいを感じて働こうよ、と伝えたいですね。

——ジェイソンさんは、日本での次のチャレンジはどう考えていますか?

ジェイソン:日本の社会や働き方で問題になっていることは文化レベルのものが多く、大手企業だとなかなか変わらないかな、と感じています。それを覆す、生き生きしているベンチャー企業が多く出てこないと、全体的に変わらないと思っているので、ベンチャー企業がたくさん成功してほしいんです。

少しずつでも支援したい、という気持ちで出資するなどファンドの活動もしています。芸人の仕事は楽しいけれど、それ以上に社会還元できることがあれば、積極的にやっていきたいですね。

【厚切りジェイソン プロフィール】
芸人/米国のTerraSky Inc.役員
1986年生まれ、アメリカ合衆国出身。ワタナベエンターテインメント所属。2015年2月、デビュー4カ月にして「R-1ぐらんぷり2015」で決勝進出を果たし、注目度が急上昇。芸人であるとともに株式会社テラスカイの米国法人であるTerraSky Inc.の役員としてパラレルに活躍している。

【久保田雅俊 プロフィール】
株式会社サーキュレーション代表取締役社長
1982年生まれ、静岡県出身。大手人材総合サービス会社に入社し、様々な人材活用を学ぶ。父親の介護の傍ら、27歳で最年少部長となる。その後、自ら会社に起案し、社内起業家への転身。シニアの経験・知見を中小企業の経営課題とマッチングするサービスを立ち上げ、創業3年で、経営プロフェッショナルのネットワークは1万人、導入企業は600社を超える。現在、同社のプロジェクトは1500件を突破しており、新しい働き方を日々生み出している。

文・編集:田中佐江子、YOSCA
カメラマン:栗原洋平

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