1. THE IMPRESSION|個人間送金サービス「Kyash」が導く“お金の民主化”が目指すもの

THE IMPRESSION|個人間送金サービス「Kyash」が導く“お金の民主化”が目指すもの

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 近年注目を集めるFinTech業界に、新たな潮流が生まれようとしている。

 「Kyash(キャッシュ)」は、SNSや電話帳経由でカジュアルに請求・送金できる個人間送金サービス。

 本人確認なし、手数料無料という手軽さで人気を集めているが、同サービスを運用する株式会社Kyashでは“その先”を見据えている。

 株式会社Kyash代表取締役 CEO 鷹取真一氏に「Kyash」が目指す未来、自身のビジネス哲学についてうかがった。

鷹取真一|SHINICHI TAKATORI
株式会社Kyash代表取締役 CEO
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早稲田大学国際教養学部卒業後、三井住友銀行に入行。法人営業を経て、経営企画の国際部門で海外拠点設立や事業企画に携わる。その後、米系戦略コンサルティングファームでBtoCの新規事業支援に携わる。2015年1月、Kyashを創業し、FinTechスタートアップとして送金・決済プラットフォーム「Kyash」の構築に従事する。

「やりたい」と「やるべき」が交差した時、起業を決意

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——鷹取さんは、メガバンクや外資系コンサルティングファームを経て2015年にKyashを創業しています。その経緯についてお聞かせください。

鷹取:世の中に必要なサービス、テクノロジーを使って生活を豊かにできるような仕組みについて構想を得たのがきっかけです。「やりたい」という気持ちと「やるべき」という使命感が交差するものが完全に新しい送金の仕組みでした。銀行や他の大企業では実現しづらい構想だったため、起業が唯一の選択肢でした。

——前職、前々職での経験は、どのように活かされているのでしょう。

鷹取:銀行に勤務していた5年間は、法人営業と経営企画で銀行がどのような意思決定をするのか見てきました。国内外の銀行モデルを研究する機会もあり、業界が抱える課題や銀行という業態の強み弱みが見えてきて。イノベーションのジレンマもあったと思います。

その後、事業を創ることに集中的に時間をかけたいと思い、コンサルに転職しました。そこで新規事業のコンサルティングをするうちに、モバイルを起点とした金融に変革をもたらせるのではないかと思うようになりました。コンサルでBtoCサービスを手がけるうちに、銀行業界で抱えていた問題意識の解決となるものが見えてきたんです。

ですから僕にとっての「Kyash」は、ファーストキャリアとセカンドキャリアでの経験が融合した事業とも言えます。

——ステージを変える際、躊躇しませんでしたか?

鷹取:新しいことを始めようとしているのは、あくまでも自分自身です。「途中でやめようかな」と思うぐらいであれば、スタートしないほうがいい。ましてやチームや投資家を巻き込むわけですから、無責任なことはできません。寝ても覚めてもやまない思いがあったので、実現しない可能性ではなく、実現できる道を創るべく歩き出したという感じですね。

利便性だけでなく、心の豊かさをももたらす「Kyash」の革新性

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——改めて「Kyash」がどんなサービスなのか、ご説明をお願いします。

鷹取:銀行口座や相手の住所を知らなくてもスマホで送金できるサービスです。とはいえ、「Kyash」が目指すのは「送金が簡単になる」という仕組みだけではありません。人と人とが時間を共にする時、グループで何かを起こす時に実はストレスになっていたお金のやり取りのハードルを下げていきたいと思い、サービスを立ち上げました。

——「Kyash」を通して届けたい体験とは?

鷹取:割り勘や送金が便利になるというのもありますが、そこを超えて新たな価値交換・流通の形を生み出したいと考えています。例えば、自分が描いた絵にKyashのQRコードを付けて展示しておくと、その絵に感動した方や応援した方が簡単にチップとして届けられる。企画を必要としないクラウドファンディングのようなものが出来上がる。そういう仕組みができると、もっとミクロな単位で感謝や共感を新しい形で伝えることができますよね。それによって、より世の中の価値流通が適切になっていくのではないかと思っています。

——個人間送金サービスにより、利便性だけでなく心の豊かさが生まれるというのは面白いですね。こうした発想はどこから生まれたのでしょう。

鷹取:もともと家庭がホストファミリーをしていたので、幼い頃から海外の留学生と生活を共にする機会がありました。文化や環境の違いを身近に感じることで、多様性が養われましたし、様々な「常識」を知って視点の振れ幅も大きくなりました。チップの文化、感謝の伝え方、人間関係のあり方など、いろいろな価値観を見ながら育ったことが影響しているのかもしれません。

感謝や共感、応援の表現としてお金という価値を届ければ、それによって新しい職業が生まれる可能性もあります。盛り上がる業界が変わってくるかもしれません。「Kyash」を通じ、お金の動き方をもっと自由にしたい、お金を民主化していきたい。あらゆる人が思い通りに価値を移動できる、そういう世界を作りたいですね。

前例を求めない「頂点思考」という考え方

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——では、鷹取さんのパーソナルな部分についておうかがいします。仕事をするうえで大切にしていることは?

鷹取:常に制約を取っ払って、理想の姿は何かを考えるようにしています。それを描いたらあとはどのように実現するかを突き詰めるのみだと思っています。

前例を求めない「頂点思考」という視点を大切にしています。好事例や競合他社を基準にしていたら、それを越えることはできないと思っています。比較論から出てくる全体最適ではなく、絶対最適を目指す。競合他社を見るのではなく、ユーザーを見つめて信頼をいかに蓄積できるかが勝負だと考えています。常に制約を取っ払って、理想をゼロベースで描く、僕はそれを「頂点思考」と呼んでます。

——企業のトップに立つと、さまざまな局面で決断を求められますよね。その際の基準は、どこに置いていますか?

鷹取:メリットとデメリットのどちらが大きいか。その点を判断基準にしています。とてもシンプルですが、双方をしっかり把握することは簡単ではありません。特に、望ましくない状況においては、課題を見つけるのは容易ですが、取り組みの成果や意義を冷静に評価しづらいことが多いためです。あとは決定のスピード感ですね。

意思決定で心がけているのは、できる/できないという軸ではなく、一番理想的な選択肢を選ぶこと。「どうせ僕たちはベンチャーだから」「まだ〇〇だから」と自分自身で制約をかけてしまうと、選択肢も「頂点思考」にはなりません。実現の為には、何をすべきか考える。意思決定とは、決断した選択肢を正解にしていくプロセスだと考えています。

——お話をうかがっていると、強い意志をもって動いていますよね。その原動力は?

鷹取:どうなんでしょう……。実現したい未来に絶対的な希望を感じているからでしょうか。これまで長い歴史の中で今が金融の産業革命だと思います。一回の人生で今までの行動様式を大きく変えるチャレンジに取り組めているのは、幸せものだと思います。テクノロジーが良い形でより豊かなライフスタイルをもたらしたいという思いもあります。

——中国ではモバイル決済が主流ですが、日本はまだ立ち遅れている感があります。その点は、どのように考えていますか?

鷹取:確かに遅れを取っている点もあると考えますが、その一方で日本では何かひとつのことに火がつくと社会現象になる場合もあります。なおかつ、金融業界は信頼が重要です。金融機関が信頼を得るためにいかに公共性と公平性を重んじてきたか、僕自身も見てきました。Kyashにおいてもあらゆるステークホルダーの信頼、安心感を得るよう、肝に銘じて事業に取り組んでいます。そのために、創業時からどれだけの事業規模が必要か考えましたし、大手機関投資家や事業会社にもご協力をいただいています。こうした協力を得て、僕らが目指そうとする世界を作っていきたいと考えています。

——現在は、まだファーストステージと考えてよいでしょうか。

鷹取:僕らが目指すのは、送金ツールの提供ではなく、新しいお金のあり方を形作ることです。「日本円や米ドルなど様々な通貨と同期する通貨」として流通させられればいいですよね。

現在、お金はアナログとデジタルが混在しています。アナログの現金が、銀行に振り込んだり預けたりしたあとはデジタルになる。しかも、デジタル化の弊害として使いにくくなっています。そこを改善し、ユーザーに寄り添って新しい価値の動き方を作っていきたいんです。精算の為のお金の存在を意識せずに人々が暮らせるようになるのが、究極の理想ですね。

——では最後に。“プロフェッショナル”とはどんな人だと思いますか?

鷹取:その領域に対し、不可能を信じない人です。「自分がやらなければ、誰がそれをやれるのか」という使命感と実行力を備えている人だと思います。実現できる道を考える。そのプロセスを経て、プロフェッショナルな振舞いが身につき、結果もついてくるのだと思っていますし、そう信じています。

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