1. アフリカ移民2世から世界的スターへ!オマール・シー主演映画「あしたは最高のはじまり」

アフリカ移民2世から世界的スターへ!オマール・シー主演映画「あしたは最高のはじまり」

 今、フランスで最も人気があるセレブは誰か? 答えは、オマール・シーだ。

 昨年、フランスの全国紙“ル・ジャーナル・デュ・ディマンシュ”が行った人気投票で、堂々1位に輝いたのだから間違いない。

 因みに、同じ映画界からオマールに次いで10位以内にランクインしたのは、5位のジャン・レノと7位のソフィ・マルソーのみだった。

「X-MEN」や「ジュラシック・ワールド」にも登場済み

 オマール・シーと聞いて、「X-MEN」シリーズの第7作、「X-MEN : フューチャー&パスト」(14)でエネルギーを吸収して反射する能力を持つミュータント、ビショップや「ジュラシック・ワールド」(15)で恐竜ヴェロキラプトルを調教するバリーを演じた、あの巨漢だと即答できる人は、かなりの映画通かも知れない。

最高のヒット作は「最強のふたり」

 でも、「最強のふたり」(12)で全身が麻痺した富豪に寄り添う常識外れの介護人を演じた俳優と言えば、思い出してくれるだろうか。

 何しろ、同作は日本で公開されたフランス映画史上最高の興収、16億5,000万円を記録し、第24回東京国際映画祭で栄えある最高賞を受賞。

 母国フランスでも映画史上2位の観客動員数を弾き出し、オマールはフランスのアカデミー賞(R)と言われる権威あるセザール賞で、アフリカ系俳優として初の主演男優賞受賞という快挙を成し遂げる。

彼はパリに住む移民たちの希望の星

 劇中でオマール扮するスラム街で暮らすアフリカ系移民のドリスは、事務的でハートのない介護に辟易していたフランソワ・クリュゼ扮する富豪を心身共に解放し、2人は固い友情で結ばれていく。

 物語の基になっている実話では介護人はアルジェリア人なのだが、脚本はオマールを念頭に置いてアフリカ系に書き換えられた。

 その結果、ドリスはユーモラスで大胆で、ダンスも踊れるイケメンキャラへと変身。同時に、オマールはパリの貧困層を覆う絶望感を全身に漂わせ、以来、彼は“バンリュー(パリ郊外の移民居住区)の希望の星”として熱視線を浴びることになる。


オマール自身もバンリュー出身

 「最強のふたり」で演じた役柄と同じく、オマール自身もバンリュー出身。掃除婦をしていたモーリタニア人の母と、工場で働いていたセネガル人の父を持つ移民2世である。

 つまり、彼の人気をある部分で支えているのは、排他的に傾きつつあるフランス及びヨーロッパで、日々恐怖に脅え、希望を失いがちな人々。支持母体の人種構成も、彼以前にフランス映画界を牽引して来たトップスターは持ち得なかったものではないだろうか。

またも各国でヒットした最新作が今秋公開される

 今秋公開される「あしたは最高のはじまり」は、オマールのダンスのセンスとアクションのスキルと、映画通ぶりが全編に散りばめられた作品だ。

 物語は、コートダジュールでヨットマンをしながら気ままに暮らしていた主人公のサミュエルが、ある日、以前交際していたと思しき女性、クリスティンから、2人の間に生まれたという娘、グロリアを託されるところから始まる。

 グロリアを伴い、クリスティンを追ってロンドンに移住したサミュエルは、彼を見出してくれたゲイのTVプロデューサー、ベルニーの計らいで人気スタントマンとして大成功。グロリアと特別な親子関係が育まれたその時、突如現れたクリスティンとの間で親権闘争が勃発する。

 娘を得たことで育まれる父親の責任、女性の自立、親権問題、性的マイノリティの許容、台詞に書かれた映画愛、コヴェントガーデンやチャリング・クロス駅など、ロンドン・ロケの楽しさetc、製作段階から積極的に関わったというオマールは、劇中に今様のテーマを可能な限り盛り込んで、新作を待ちわびる観客の期待に呼応。

 結果、映画は8週連続トップ10入りを打ち立て、ヨーロッパ各国でもトップ10入りを果たした。

さらに普遍的な人気獲得を目指す

 最新作には、過去の「最強のふたり」、「サンバ」(14、バリで国外退去を命じられるアフリカ系移民が主人公)、「ショコラ~君がいて、僕がいる~」(16、フランスで最初のアフリカ系芸人の実話)とは異なり、主人公の人種的アイデンティティに関する描写は抑制されている。

 オマール・シーという俳優の好感度を前面に押し出した演出からは、さらに、ここから普遍的な人気を獲得していこうとするスターの意気込みが伺えるのだ。


やがて全人類の希望の星に

 現在は2007年に結婚した妻、エレンと4人の子供たちと共に、ロサンゼルスに住まいを構えるオマール。

 今や彼はオスカー女優のマリコン・コティヤールと並ぶ、ハリウッドで最も成功したフランス人俳優となったわけだが、非英語圏のアフリカ系俳優という縛りを受けつつも、メジャー作品に出演し続けるそのキャリアは、映画界でも異色中の異色だと言える。

 グローバル、ボーダレスを叫びながら、実は内向きの世界に逆行する全人類の“希望の星”として、この機会にオマール・シーの名前を脳裏に刻みつけておいて欲しい。

【作品情報】
「あしたは最高のはじまり」
9月9日(土)より、角川シネマ有楽町、新宿ピカデリー、渋谷シネパレス他、全国ロードショー
配給:KADOKAWA
PHOTO : Julien PANIÉ

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