1. 西田宗千佳のトレンドノート:今年・来年は大豊作?「E3 2017」から見るゲーム市場の今

西田宗千佳のトレンドノート:今年・来年は大豊作?「E3 2017」から見るゲーム市場の今

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E3会場となったロサンゼルス・コンベンションセンター。
 6月13日(現地時間)から15日の3日間、米カリフォルニア州ロサンゼルスにて、世界最大のゲームイベント「Electronic Entertainment Expo(E3)」が開催されている。

 実際には、各ゲーム会社のプレスイベントが10日からスタートしているので、この1週間、ロサンゼルスのダウンタウンはゲーム業界に支配されている……というと言い過ぎだが、そのくらい、ゲーム業界関係者が多い。

 その規模の大きさから、ゲーム業界の大きな発表はこのE3で行われることが多く、今年は特に大型タイトルの充実ぶりが目立った。E3の状況から、今年のゲーム業界を占ってみよう。
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会場近くのビルは、年末登場予定の「STAR WARS BATTLE FRONT2」に占領されていた。街中にゲーム広告があふれるのもE3の面白さ。

SIEを追いかける任天堂とマイクロソフト

 発表、という面でもっとも大きなトピックは、マイクロソフトが新型ゲーム機「Xbox One X」を発表したことだ。

 同社は現在、「Xbox One」というプラットフォームを軸にビジネスをしている。名前でおわかりのように、Xbox One XはXbox Oneファミリーのひとつになる。
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マイクロソフトは4K対応の新型ゲーム機「Xbox One X」を発表。アメリカを中心とした各国では、11月7日より499ドルで販売を開始。ただし日本での発売時期は未定。
 Xbox One Xは、一言でいえば「今もっともパワフルなゲーム機」だ。マイクロソフトはキャッチフレーズとして「True 4K」を使う。このキーワードは、ライバルであるソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation 4(PS4)」を意識してのものだ。SIEは昨年、PS4の性能強化版である「PS4 Pro」を発売した。PS4 Proは、4Kテレビ世代を想定し、ゲームの映像を4Kで表示するために性能を強化したPS4だ。

 Xbox One Xでマイクロソフトが採ったアプローチは、SIEがPS4 Proで採ったものに似ている。ただ違うのは、発売時期が今年の11月(ただし日本での発売時期は未定)と、PS4 Proに比べ1年後であることと、Xbox OneがPS4に比べ支持を得られていないことだ。

 PS4は6月11日に、世界での累計販売販売台数を6040万台に伸ばした、と発表した。これは過去のゲーム機よりもかなり速いペースで、販売台数の面において、SIEはライバルを圧倒している。

 Xbox Oneの出遅れをカバーするには、Xbox One のファンを大事にした上で、ライバルよりもパワーがあってゲームが集まりやすいプラットフォームを作ることが重要だ。発売以来、マイクロソフトは戦略を修正してきたが、Xbox One Xもその一環といえる。

 任天堂は今年3月に「Nintendo Switch」を発売したところで、台数的にはまだまだ少ない。一方で、Switchと同時発売だった「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の評価が極めて高く、「任天堂は高いクオリティのゲームを出してくれる」という信頼感ができあがっており、会場でも任天堂の人気はこれまで以上に絶大なものと感じた。
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任天堂は10月27日に発売する「スーパーマリオ オデッセイ」を大きくフィーチャー。試遊を希望する人の列が終日途切れなかった。
 とはいえ、SIEが市場をリードしている状況に変わりはない。自社製・サードパーティ製双方のゲームが充実しており、非常に有利な状況になっている。

 今年はハードウエアについての発表を一切行わず、ソフトだけをアピールする「横綱相撲」を展開した。日本のユーザーからも興味が高そうなタイトルだけでも「MONSTER HUNTER:WORLD」や「Spider-man」、「グランツーリスモSPORT」「エースコンバット7」など、数多くの作品がある。

 E3と直接関係はないが、7月末には「ドラゴンクエストXI」も発売になり、日本でもPS4が本格的に売れていく土壌は整ったといっていい。逆にいえば、海外市場と日本を見比べて、ようやく「PS4というゲーム機の市場」をゲームメーカーが見直すタイミングに来た……ともいえるだろう。
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カプコンは人気ゲーム「モンスターハンター」シリーズの最新作「モンスターハンター:ワールド」を投入。2018年はじめに発売。アメリカなどではPS4/Xbox One/ウィンドウズで販売されるが、日本ではPS4独占。
 SIEのゲーム開発部門であるワールドワイドスタジオ・プレジデントの吉田修平氏は、「(性能向上によって)過去にはやっていない・できないプロジェクトに取り組んだ結果、想定以上に開発が長期化した。PS4も2年目・3年目にはもっとタイトルが厚くできた予定なのだが、結果的に今年以降、4・5年に渡って作り込んだタイトルが出せる」と話す。

アメリカ市場を支える「ゲーミングPC」の勃興

 一方で、アメリカ市場を見た場合、ゲーム機だけをみていては大きく見誤る。現在のゲーム市場は、ゲーム機に加え「ゲーミングPC」の市場が存在することが大きい。

 ゲーミングPCは、ゲームのために性能を強化し、デザインなどにも工夫を凝らしたWindows PCのこと。日本ではまだそこまで高い人気があるわけではないが、アメリカでは完全に定着している。
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E3のもうひとつの主役は「ゲーミングPC」。コストをかけてよりよい環境でゲームをしたい人向けに人気で、市場が拡大中。大量のゲーミングPCを並べて試遊させるブースが目立った。
 現在のゲーム作りでは開発期間・規模が大きくなりがちだ。開発は基本的にPCで行うため、ゲームをPCで発売するのは難しいことではない。PS4・Xbox One世代になって、ゲーム機のCPUはPCと同じx86系になり、開発難易度も下がった。

 そのため、PCを加えた3プラットフォームに同時にゲームを出す「マルチプラットフォーム」展開をすることが基本になっている。ゲーミングPCは高価で、時には数千ドルになることもある。ゲーム機に比べコストパフォーマンスには劣るが、その変わり、その時最高のゲーム体験ができる。対戦ゲームなどでは、よりプレイしやすい環境があれば満足度は高くなる。ゴルフやテニスで良い道具を求めるように、ゲーミングPCや高品質ゲームパッド、マウスを買い求める人々の市場が出来上がっており、それもまた盛り上がりに拍車をかける。

 人気タイトルの動向に一喜一憂するのは、今も昔も変わりない。だが、ゲームが出てくるのをただ待っているのではなく、人気ゲームを積極的に楽しむ人々がゲームを「場」として長く楽しみ、「場」となりうる良いゲームを作ることが、ゲームメーカーにとっては良いビジネスに直結する……というのが、今のゲームシーンのひとつの本質である。

「ファンイベント」が中心に。「ゲームを趣味とする大人」に向けた取り組みが重要

 一方で「場」が重要である、ということは、E3のようなイベントにも大きく影響している。

 過去には、ゲームイベントはゲームにとって最大のプロモーションの場だった。だが、現在はそうではない。ゲームの情報は日々、ネットを介し、ゲームメーカーから直接届けられるようになっている。ゲームのプロデューサーや開発者がネット配信に登場し、ゲームの見どころや開発の秘密を語るのがあたりまえになった。

 E3でも、各メーカーはプレスカンファレンスを全世界に発信し、ブースから生レポートを送っている。ユーザーが、E3会場からスマホでライブ配信している姿も多数見かけた。

 もはや、ゲームの情報は「メディアからのものをただ待つ」ものではなくなった。ファンが喜ぶ場を作り、積極的に発信と情報交換を行い、長期的な関係を築くことこそが重要になっている。多くのファンはそれを期待して、E3のような場で「並ぶ」のだ。並びながら、ゲームキャラクターと記念撮影をし、SNSに投稿する。そのことそのものが、ゲームメーカーのプロモーションにもなる。

 とはいえ、そのためには適切な「場の設定」が必要だ。

 E3会場はどこも行列だった。人気のゲームについては、10時の会場と同時に入っても4、5時間待ち……という状況。

 特に行列の長かった任天堂ブースは、周囲をぐるりと人が取り巻き、会期初日などはブース内を歩くこともままならないほどだった。任天堂だけでなく、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)やマイクロソフト、Ubi SoftやActivision、スクウェア・エニックスにカプコンといった人気メーカーのブースはどこも同様に人々が殺到していた。
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E3初日の任天堂ブース。あまりの人の多さに、移動することすら困難な状況だった。
 朝から来て5時間並んでゲーム1本を試遊して終わり……では、イベントに来る甲斐がない。並ばなくても楽しめるステージイベントなど、「その場にいることを楽しめる」作りにしなくては、今のゲームイベントは成功しない。

 E3は22年の歴史があるが、これまではあくまでゲーム業界関係者向けのイベント、という体裁を守ってきた。しかし今年からは、一般のゲームファンにも1万5000枚のチケットを販売し、門戸を開いた。E3主催者であるEntertainment Software Associationによれば、今年の来場者は約6万8000人。

 昨年が5万人だったので、一般ユーザー分+αが増えている計算になる。人が多かったのはその結果であり、ゲーム産業の勢いを示すものではあるのだが、250ドルのチケットを買ってE3に来たファンを、本当の意味で満足させられたかどうかは怪しい。

 アメリカでも日本でも、ゲームイベントはより「ファンのためのもの」になってきている。来ることが楽しい、そこに来ることに価値を見いだす人のためにホスピタリティを提供するのがゲームイベントの本質なのだ。

 それだけ、ゲームファンは「ゲームに時間とお金をかける大人」が中心になったのだ。だとするならば、それにふさわしいイベントの姿が求められる。大手ゲームメーカーは、日本でも独自イベントを多く開催するようになっている。そのことが、ゲームという市場の変化そのものなのである。

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