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【業界勢力マップ2017】市場拡大の勢い衰えず! 話題の宅配業界を分析

U-NOTE編集部

2017/05/23(最終更新日:2017/05/23)


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 ネット通販市場の拡大にともない、取扱い個数が急増している宅配便。その一方で、配送単価の下落、慢性的な人手不足といった問題も抱えている。

 従業員の働き方改革、送料値上げなど話題の尽きない宅配業界の現状を分析する。

宅配便の個数は右肩上がり:ヤマト、佐川、日本郵便がトップ3!

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※国土交通省「平成27年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」平成28年度分も国土交通省発表に基づくトラック輸送便のみ。航空便は除く
 アマゾンを筆頭とする通販サイトやフリマアプリの普及拡大により、急成長を遂げるEC業界。それにともない、宅配便の取扱い個数も年々増加している。2016年には38億6,930万個に達し、数年内には40億個に到達しようという勢いだ。
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※2015年度国土交通省調べ。宅配便(トラック便)取扱個数に基づきグラフ化
 トップ3は、ヤマト運輸の「宅急便」、佐川急便の「飛脚宅配便」、そして日本郵便の「ゆうパック」。この3便で、宅配業界全体のシェア9割を占めている。

 1位のヤマト運輸は、2013年にアマゾンと宅配契約を結んだことにより取扱い個数が急増。2016年度は18億6,700万個の宅配便を扱っており、2位以下を大きく引き離している。

 一方、佐川急便は営業所数をあえて減らし、EC事業者などBtoB中心のサプライチェーンを構築。日本郵便は、全国に張り巡らされた郵便局ネットワークを強みに、地域密着型の事業を展開している。

単価下落をストップできるか? 業界は革新まっただなか!

 こうした現況を見ると右肩上がりの成長市場のようだが、宅配業界は大きな問題を抱えているのも事実だ。第一に挙げられるのが、宅配便単価の下落。

 例えばヤマト運輸では、2012年3月期には600円だった単価が2017年3月期には556円まで引き下げられている。同期間の佐川急便は467円から511円へと改善しているが、それでも利益率が低いことに変わりはない。こうした現状を受け、ヤマト運輸は今年4月、27年ぶりの値上げを発表。他社もこの流れに追随するものと見られている。

 第二の問題は、人手不足の深刻化だ。通販業者による配達時間短縮サービスが激化しているうえ、再配達率も上昇。ヤマト運輸が宅配ロッカー事業社と提携してロッカーの設置を進めたり、日本郵便がファミリーマートにロッカーを設置したりと再配達の削減を試みているが、現時点ではまだ奏功しているとは言いがたい。

 結果としてドライバーの長時間労働が常態化し、問題視されることに。ヤマト運輸では約47,000人ものスタッフに支払う未払い残業代が190億円にのぼり、2017年3月期の業績が大きく落ち込む結果となった。

 各社デリバリー事業の2017年3月期決算を見ると、営業利益ではヤマトホールディングスが348億8,500万円、佐川急便を擁するSGホールディングスが396億円。売り上げは1位ヤマト、2位佐川だが、利益は佐川に逆転された形となった。ヤマト運輸の働き方改革、値上げ施策が今後どのような影響をもたらすか、宅配業界の動向に注目が集まっている。

 “荷物は多いのに儲けが少ない”という苦境から脱し切れない宅配業界。一方、高齢化、共働き世帯の増加にともない、EC市場はさらに拡大すると見られる。過当な価格競争、サービス競争から脱し、業界構造そのものを変革する時期に差し掛かっていると言えるだろう。

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